「・・・よし!ねえねえ忍足~、添削して~。」
「ん。」
「どお?」
「・・・スペルミス。」
「あ!」
「あと、このthatは要らへん。いうか、入れるとミカがこの台詞言うてることになるで。」
「う!」
「それから、knowの過去形はknewやさかい、覚えとき。」
「く~・・・」
「はい。85点。」
「は~い。」
「先輩、先輩。」
「うんっ?」
「ぐっすり先輩って、あんな寝てんのに、結構成績良いんすね。」
「ああ・・・うん、そうだねっ。」
そう。
不思議なのだが、芥川はあれで、結構成績良いのだ。
というか、特別良くはないのだが、特別悪くも無い。大体平均前後くらいをいつも取っている。
どういうメカニズムなのか知らないが、テニス部では「睡眠学習の一種じゃないか」ということで話が落ち着いている。
「授業じゃ起きてるとかっすか?」
「全然・・・でも芥川君、その気になれば集中力すごいから、それもあるかもっ?」
「へー。そんなもんすかね?」
「何々~?何の話C?」
「先輩って毎日ガン寝してんのに、成績悪くないの不思議すねーって!」
「あ、だよねだよね~!俺も不思議なんだあ!」
「芥川君・・・・」
不思議がってる場合じゃないじゃん、と可憐は頭を抱えたくなった。
忍足も、顏には出ないが同じような気持ちである。
「・・・・ぐっすり先輩って。」
「ん?」
「なんで学校通ってるんすか?」
「A?」
「だって、眠いなら学校行かないで寝てた方が良くないすか?あ!家にずっと居たら怒られるとかそんな感じ?」
これは、芥川という人間を良く知らない人が抱きがちな疑問である。
芥川は、ん~・・・と言葉を選び出した。
「だって、テニスできるしさ~。友達も居るC。」
「それ理由になります?」
「っていうかさ~。俺確かによく寝ちゃうけど、寝るのが好きっていうだけで、別に学校嫌いとか行きたくないとか、そーいうことは考えたことないからな~。」
そう。
芥川は、別に学校嫌いなわけじゃないのだ。
むしろ好きな方。
もしずっと起きていられたとしたら、芥川は喜んで皆と同じように日中学校で過ごすだろう。
寝るのがそれより好きなだけ。
別に家で引きこもりたい思考があるわけじゃないのだ。
「神崎ちゃんは?何か、氷帝入ってやりたいことあるの?」
「いや?俺は別に。入るのが目的なんで!」
「そお?じゃあさ~、テニス部入らなE?今マネージャーさん足りなくってさ~。」
「えー、嫌す!人の世話とか嫌いなんで!」
「A?でもやることないんでしょ?」
「・・・・・・それは、まあ。」
「じゃあやっても良いじゃん?」
「だからーーー」
「入ってみて、やっぱ嫌だって思ったら辞めれば良いんだC!やってみないと、嫌かどうかなんてわかんないしさ!」
「う・・・・・」
(なかなかおもろいなあ。)
(芥川君と安音ちゃんだと、芥川君が口で勝てちゃうんだ・・・なんか不思議っ。)
とはいえ、大きな驚きはない。
芥川が妙な説得力を持っていることは、よく知っている。
別に声が大きいわけでもなんでもないのだが、人の核心をピンポイントで刺すようなことをしばしば言う。
「だから・・・ふあああ・・・・あ~、駄目かも。そろそろ疲れちゃったC~・・・」
「今かよ!?ちょっと先輩、話終わってないすよ!」
「まあ起きとった方ちゃう。」
「あー!でも、古典してもらうの忘れちゃったっ!苦手科目だから、今やっといてもらおうと思ったのにっ・・・!」
「・・・・・・・」
マネージャーって。
人の苦手科目とかまで暗記して、面倒みるんだな。
(やっぱだりいよなー。)
辞めるまでもなく、合わない。
安音はそう思う。