Cheering song 2 - 2/6


人の口に戸は立てられぬとはよく言ったもので。
あくまで「プライベートな」「ミニ」ライブだったはずなのに、当日になる頃には、もう結構いろんな人が知っていた。

その結果あまりにもいろんな人が、「自分達も見に行って良いもの」という体で行動を起こした。結局生徒会は、止む無く「演者と正式な観客を囲む形なら良い」という、アリーナ型観覧を許可するという方針を取った。

「屋上の方が良かったかも知らんねえw」
「ああ・・・見下ろす人が居ませんものね・・・」
「すごいすごーい!ほら千百合っち、皆こっち見てるよ!ほら!」
「別に見たくもないわ。」

「やばい、あのアングルで見られるのに慣れてない・・・」
「ちょっとしっかりしてよー!」
「美樹は元気だね・・・」
「そりゃもう、私が言い出しっぺだからね!私が元気じゃなくちゃ、テニス部にもビードロズにも顔向けできないわよ!」

中庭でやろう。
ということになったせいで、今一同は、隣接している建物の窓から、いろんな生徒に見下ろされている。
紫希なんかは身を乗り出している人を見るのが怖くて、努めて下を向く始末。

環境の違いに戸惑いがちなビードロズ+チア部と異なり、完全に見るだけなのがテニス部と片倉。

「あの・・・ええと・・・」
「仁王君あたりは知らないでしょうから、改めて紹介いたします。こちらは片倉中君と言いまして、生徒会の1年生代表です。」
「どうも、よろしくお願いします・・・」
「どうした片倉。お前らしくもない、いつももっと堂々としているだろう。」
「そうなんだけどさ、そこはかとなく歓迎されてない感みたいなものがさ・・・」
「??何を言う。あるわけがないだろう、そんなもの。」
「まあまあ、真田君。片倉君も、そう縮こまらないで。誰も片倉君が悪いなどと思っていませんよ。」
「だってさあ・・・・」

ちろ、と片倉が視線を上げると、苦笑した幸村と目が合った。

「参ったなあ。俺、そんなに不機嫌に見えるかい?」
「いやこう、空気的に・・・ほら、生徒会でも愛妻家で有名だし・・・」
「あれ?そうなの?それは知らなかったな。」
「文化祭の1件だ。あの日からお前の黒崎に対する態度のありようは、一気に広まったぞ。」
「へえ。あんまり周りに見られてる感じはしなかったけど、柳が言うならそうなんだろうね。」

見られてる感じがしなかったのは、その辺の余計な情報を無意識下でシャットアウトしていたからである。
あの時はとにかく千百合の元へ行くので必死で、人に見られてるとか本当にどうでも良かった。どうでも良かったし、多分いちいち気にしてたら、ゲームオーバーになっていたと思う。

「なあ、俺は?」
「はい?」
「そいつ、俺のことも何か怖がってねえ?」

図星でそっと目を逸らす片倉に、柳生は小さく笑った。
丸井はむしろ、怖い度で言うと幸村よりも大分落ちる手合いなのだが。

「片倉君は、丸井君が自分を怒っているとお思いなんですよ。」
「マジで?なんで?どの辺が?」
「ほらブン太、あの・・・ちょっと前にファイルの受け渡しで、昼食断られた時に。」
「あれは別に、此奴が悪いわけじゃねえじゃん?別に他の誰かが悪いわけでもねえけど。」
「え、じゃあ・・・お、怒ってない?」
「怒ってねえよ?」
「はああ、良かったー!肩の荷が下りたあ!」

一気に晴れやかな顔になる片倉少年は、人によってはやや考えすぎのきらいがある人間に映るのかもしれない。
でも、こうやって目配りできる点が彼の優れた長所なので、柳生は同じ生徒会の仲間として、直せとかそういうことは言わない。

「果たして本当に許されたんかのう?」
「え?」
「結局何が起こってたのか、っちゅう真相如何によっては、お前さんは怒られ直す危険性もあるぜよ。」
「いや、それは無い。」

とてもきっぱり言った片倉に、仁王はちょっと目を丸くした。

「絶対無いよ。あれは絶対、全員嬉しいもん。ネタ晴らしされた上でなお俺の方を怒るんだったら、俺は逆に怒り返すよ。ちゃんとライブ見てなかったろ、って。」

片倉は、ある意味誰よりも知っている。
ビードロズが生徒会室から連日テニス部を見下ろして、ずっと頑張ってきたのは、ぜーーんぶテニス部のためなのだ。
あれが嬉しくないわけがない。

片倉は生徒会として、そう信じていた。

「おーーーい!始めるよーー!皆ちゃんと並んで、こっち向いてよーーー!」

紀伊梨が声をかけると自分達を囲むようにわっと沸いた声に、紫希がまた縮こまったのが見えて、何人かが笑った。