榎本朝香は、基本迷わない性格をしている。
微妙。と思う状況があっても、基本判断に時間をかけない。
時間をかけて悩んだって無駄だと思っているからだ。
彼女が時間をかけて悩む価値があると思っているのは、基本定期考査の時だけ。数式は時間をかけたら答えが出るようになっているが、人生の悩みはそうじゃない。
だから、悩むだけ無駄なのだ。
と。
基本思っているのだが。
「・・・どうかな?」
「・・・・・ん~・・・」
榎本は悩んでいた。
すごく悩んでいた。
とても珍しいことだった。
人生で最後にこんなに悩んだのはいつぶりだろうと思うくらいだった。
「あ、いや、良いんだ!俺のわがままだし、迷惑だったら・・・」
「いや、迷惑って言うんじゃないんだけど~。」
「あ、そお・・・?」
微妙なのだ。
全部が微妙。
どうしよう。
「・・・・これ言うの悪いと思って言うんだけど~、それって急ぐ~?」
「へ?」
「今日中じゃないと、明日にはもう転校しちゃうから~、みたいなのあったり~?」
「ないないない!なんで!?明日転校するのにこんなこと頼まないじゃん、普通!」
「え~?結構ありそうな発想だよ~?」
「どこが!?」
ほら。
ここで、どこが?と聞いてくる。
だから迷うのだ。
榎本は、指で何かつまむような仕草をした。
「え、何・・・・?」
「ちょおーーーーっと、待ってくれる~?」
「待つ・・・」
「明日返事するから~、今日いっぱい時間ちょうだ~い。」