その日の昼食時、榎本はおもむろに言った。
「時に可憐~。」
「えっ?なあにっ?」
「今さ~、可憐のこと好きな男子から、間取り持ってくれって言われてるんだけど~。」
「んぐっ!?」
「え!?」
「ちょ、朝香!あ、可憐!チョット、水飲んで水!」
「えほっ、げほ!ふう・・・ふう・・・」
「どお~?」
「ちょっと待ったげて、朝香・・・」
可憐は本気で卵焼きで窒息するかと思った。
「え、何・・・・えっ?何・・・えっ?」
「順を追って説明するとね~、相手が男子バドミントンの子なんだけどさ~。」
「ああ、朝香がバド部だから、ってことなの?」
「そ~。でね~、私大体こーいうの断るんだよね~。前も別の男子に真美がどんな子か聞かれて、知るかよって言った記憶あるし~。」
「オイ、ちょっと待てえ!それアタシ聞いてないって!」
「言ってないも~ん?面倒だしさ~。」
「えええええ!?」
「ちょっと真美、うるさい!今は可憐の話!それで?」
「うん、まあ。いつもは断るんだけど~・・・」
いつもは断る榎本が、どうして今回迷ったのか。
それは榎本が、なんとなく今の可憐の状況を察していたからである。
はっきりいって、友人の片思いは旗色が悪い。
というか正直に言うと、大分敗色濃厚。
それなら、新しい恋に誘導してみるのも手ではないか?
という考えが、脳裏を過ったのだ。
「・・・まあ、私的に相手が結構良かった、っていうのもあるかな~。」
「へえ!珍しいジャン、朝香が人のこと褒めるなん、てええええ!?あー!アタシのウインナー!」
「でも、相手が良かったって確かに相当珍しいね。朝香その辺厳しいのに。」
「ま~、そもそも最初から印象良かったんだよね~。実を言うと、取り持ってくれとは言われてないし~。」
「え、そなの?」
「そ~。連絡先交換しませんか、って言いたいけど大丈夫かなって聞かれてさ~。あ、そこから自力でやる気があるんだな~、って思って~。割と感心したんだよね~。」
結構この手の話は、自分の代わりに好きって言っといてくれないか、までいきなり頼まれることも多い。そんな中、連絡先聞いて良いかどうかから許可を得ようとしてくる態度は、榎本的には結構誠実に映ったのだ。
「まあ、反面ちょ~っと臆病な所ある奴なのは知ってるんだけど~、それもある意味安心でしょ?あんまりぐいぐい来ないし~、滅多なことしないし~。どう?」
「ど、ど、どうって言われてもっ!言われても・・・・」
「嫌?」
「嫌とかも何も・・・そもそも、誰っ!?名前はっ!?」
「交野義郎君っていうの~。知ってる~?可憐は多分知らないでしょ~?」
「・・・・知らない。」
「あー、交野くん。」
「え、瑠璃知ってるノ?」
「委員会一緒なんだよね。交野くんかあ。」
「ど、どんな人っ?」
「いやまあ、普通に良い人?まあ確かに、基本明るいし元気なんだけど、ちょーっと臆病というか対人関係に慎重な所はあるかな?女子に対してなんかすごい気使うんだよね。」
「おー。え、イイじゃん!どう、可憐?」
「どう・・・・」
可憐は、先日斎藤と会った時のことを思い出していた。