同時刻。
生徒会室で、跡部は書類を片づけていた。
そこに、ノックの音。
「入れ。」
「や、景吾くん。」
「萩之介?」
やや意外な顔が覗いて、跡部は完全に顔を上げた。
「珍しいな。まだ残ってたのか。」
「うん。ちょっと、書類を渡しにね。明日俺、家の用事で早引けしちゃうからさ。」
滝は、跡部のデスクの端の方に、書類を置いた。
跡部は目だけでそれを追って、すぐに戻した。
「そうそう。」
「なんだ?」
「この間、相談されちゃったんだけど。」
「アーン?」
「景吾くん、交野くんのこと嫌いなの?」
ぴた。
と跡部の挙動が止まった。
跡部にしては珍しいことだった。
「聞いたよ?交野君から。桐生さんのこと紹介してもらおうか迷ってたけど、すげなく断られたって。」
「はっ!そもそも、そういうことを俺様に頼む時点で、お門違いなんだよ。」
「どうかな?」
「何が言いたい?」
「交野くんの件は、俺が気を回しておいたよ。バドミントン部の榎本さんは、桐生さんの友達だよ、ってね。」
「俺様とどう関係があるんだよ。」
滝はそれに返事をせず、含んだような笑みを浮かべて、跡部に手を振って退室した。
バタン。
という音が落ちた室内で、跡部はふー・・・と長い息を吐いた。
「・・・勝手しやがって。」
それは景吾君が先でしょ?
滝が居れば、そう言ったに違いなかった。
そう言われたら、跡部は返す言葉が見つからなかった。