「お前らって、なんでタワー・ブリッジ来たの?」
「来ちゃ悪いのか。」
「言ってねえだろい、そんなこと。」
「わ、私が見たいって言ったの!あのー、ほら。やっぱ有名だしね、ロンドン橋!」
ロンドン橋はここじゃないんです。
と突っ込めるメンツは、残念ながらここに誰も居なかった。
「そうだ!ねえ、展望台行かない?」
「展望台?」
「ここには、展望台があるんだよ。展望「台」というか、遊歩道みたいな感じだが。」
「ああ、あれ?へー、中入れるんだな。」
タワー・ブリッジは、橋の中腹付近に2つの塔が縦に並んでいる。これがタワー・ブリッジのタワーに当たる部分である。
このタワーは橋部分の上に遊歩道があり、そこを歩けるようになっているのだ。
有料だけど。
「あ!でも。」
「「?」」
「中は完全に屋内だから、あの烏ちゃんはどうかなあ・・・」
「ああ、無理だろうね。多分入口で弾かれるよ。」
郁と林の懸念は、まあ妥当である。
普通はそうだろう。
普通は。
ただ、本当に無理としても、幸村達と同じことができるかもしれない。やってみる価値はある。と、丸井は思い、振り返った。
「ジャッカル!五十嵐!」
「ほい!ほいほい、なーにー?」
「展望台行かねえ、って話してんだけど。」
「あ、良いじゃーん!行こ行こ!」
「え、でもカーラはーーーーああ、そうか。そうか・・・そうだな。」
「そ。いっぺんやってみようぜい?」
「あり?でもさー、カーラちん、高い所嫌じゃにゃいの?」
「ま、嫌なら無理にとは言わねえけど。でも実際、落ちようとしても落ちられるような場所じゃねえから、大丈夫じゃーーーうおっと!」
カーラは丸井のリュックに移ってきた。
「はは。行くってさ、落とすなよブン太。」
「落とすかよい。」
「よしゃー!皆で行こー!」
「話は終わったか・・・え、待ってくれ、どうするんだその烏。」
「連れてくけど?」
「え、無理じゃない!?」
「無理かどーかはやってみないとわかりませんよっ!」
「いや、無理だろ・・・」
そう言いつつ一同は展望台へ向かった。
「えええ、本当に連れ込む気なのか・・・正気か・・・」
「まーまー、怒られたらすぐ出るって。」
「あ、エレベーター!あそこから登るのかな?」
「多分な。」
「おー!高そうですなあ!」
タワー・ブリッジは、チケットの購入もそうだが、セキュリティチェックがある。
チケットだけでなく、危ないものとかそういうのを見られるのだ。
普通はここで弾かれる。
普通は。
ただ、その普通じゃないのが大英博物館で通った、と幸村達は言っていた。
だから、ここでも通るかもしれない。
「(そこで止まってください。)」
言われて、カーラを連れた丸井はそこで止まる。
スタッフのイギリス人のおじさんは、大分がっちりとカーラを見た。
見たが。
「・・・OK.」
「よっしゃ!」
「やたー!」
「嘘だろ!?」
郁は本気で引いている。
あんなに目の前で動いているのに、見落としなんてあり得ない。
良いのか。本当に良いのか。
郁の気持ちは、桑原と林もまあわかる。
「本当に良いんだ・・・・え?ペット可、みたいなこと・・・?」
「パンフには書いてないけど・・・まあ、そういうこともあるかもしれないな。」
というか、そういうことにしておかないと、辻褄が合わないのだ。
何か異常事態が起こってるのを桑原辺りは肌で感じるが、まあ。こっちにとって、都合の良い方向には働いているので。
カア。
「よしよし、大丈夫だよ。落ちねえから。」
「・・・君、烏に話しかけるのは止したらどうだ。変人だと思われるぜ。」
「そこまで変でもなくねえ?犬に話かける人とか居るじゃん?」
「犬と烏は違うだろ?」
「そお?」
カーラは、しげしげと窓の外を見つめていた。
その気になったらこんな景色、自力で幾らでも見れるだろうに。
まるで見ておかなければならないもののように、じっと見ていた。