「さて、次はこの部屋ですね。」
「も~・・・どこ行ったのー?さっきから全然居ないじゃんかー・・・!」
「ああ。物音もせん。くそ、この広さが仇になっているな。」
「あだ?になる?」
「ええい、話の腰を折るな!」
紀伊梨・真田・柳生組は、ある意味誰より順調に進んでいた。
幼い子供が迷い込んでいる、と思っている紀伊梨と真田は、結果として「隅々まで見る」
「見終わったらさっさと移動」を心がける行動となっていた。
柳生としては、きっちり見られてまあまあ良いことと思っている。
「さて、次は・・・おや。これは。」
「む?」
「何ー?」
次に見た部屋は、食料貯蔵庫だった。
今までに見た部屋の中では、比較的普通である。
古いけど、怖いようなものは何もない。
ただ。
「これは、床下収納か?」
部屋の一角で棚が倒れており、その下敷きになる形で、扉がある。
そう。
普通は床下収納なのだが。
「こういう場合、大体ただの収納ではないんですよ。」
「え、お化け入ってるの!?」
「床下収納に物の怪などいるか!」
「いえ、居るかもしれません。」
「「え?」」
「流石に少々勇気が要りますが・・・まあ、調査隊が入った後であれば、特に問題はないでしょう。」
柳生が棚をどけると、収納庫の扉は重しがなくなった状態になり、開けられるようになった。
ぶっちゃけ。
もし仮に、マジのガチでリアルの子供が居たとしても、ここにはほぼ確実に居ない。誰が後から蓋をしたんだ、ということになるからだ。
だから、行かなくても良いと言えば良いのだが。
「・・・行ってもよろしいですか?」
「行かなくては、話が進まんだろう。」
「そーだよ!こんなとこ、絶対暗いし狭いよ!怖がってるかもしれないよ!」
「ですか。では、参りましょう。」
「待て、俺が開けよう。2人とも下がっていろ。」
真田がゆっくりと扉を開けると、下には柳生が思った通りのものが広がっていた。
「・・・これは、地下通路か?」
「え、何々?行けるの?え、めっちゃ怖いんだけどー!電気とかないじゃーん!」
「さあ、行きましょうか。見た所、足場は割合頑丈そうですし、崩れそうな様子もありません。問題ないでしょう。」
ぐいぐい行く柳生に対し、真田は流石気概のある友人だな、とか考えているが、実際は全然違う。
今までいろいろ見て回って分かってきたが、この城にあるいろんなギミックには、テンプレめいたものが多いのだ。
何があるか想像がつけば、恐怖が薄れるのも道理というもの。
ただ。
柳生にしては本当に珍しいことだがーーーそれゆえに油断した、とも言い換えられる。
最後尾の真田が入り、20段ほど降りた時だった。
バタン!
「!?」
「え!?」
「ーーー!くそ!」
いち早く真田が階段を駆け上がり、戻ったがもう遅かった。
扉は、完全に閉じていた。
「くっ!この!」
力づくで開けようとする真田だが、人間、上方向に力を入れるのは難しい。
しかも、なぜか強い力がかかっているのを、真田は感じた。
鍵ではなさそうだが、何かが扉を閉じている。
重みとか、そういうものじゃない力で。
「どうですか、真田君?」
「・・・だめだ。足場が悪いせいもあるが。」
「そうですね、ここで足を踏ん張るのは骨が折れます。」
「骨が折れる!?真田っちどこ!?どこ折ったの!?」
「たわけが!苦労する、という意味だ!」
「そなの?良かったー!」
「何が良いものか!」
この程度の日本語が通じない友人に、真田は本気で頭痛がしてきた。
次のテスト大丈夫だろうか。
「まあ幸い、崩れそうという感じはありません。異臭もしませんし、隙間はあるので酸素不足にもなりません。」
「うむ。長時間留まっていても、命の危険はなさそうだな。」
「???え、危なくないってこと?」
「ええ。心配があるとすれば、野生動物ですが・・・まあ生き物の気配はしませんし、その線も薄いでしょう。」
「えー、でもお化けは居るかもしれないじゃーん!早く出よー!」
「ああ。長居しても問題ないとはいえ、留まる理由もあるまい。」
「だよねだよね!よしゃ!じゃあちょっと向こう探してみてー、良い感じの棒とか探してー、」
「「棒?」」
「えー、だってほら!バンバンしても開かないんだったらさ、こう、棒とかでドーン!って!」
「なるほど、武器を使うわけだな。確かに俺が素手で開けられなかった以上、物に頼るのは良い手かもしれん。」
「ええ・・・・まあ、それはそうなのですが。私としては、それより前に、少し探りたいことがありますね。」
「なんだ?」
「もしかしたら、他に出口があるかもしれません。」
そもそもここは、階段の途中なのである。
どっちにしろ進むしかなくなったわけだが、一同はこの奥に何があるのかーーー何も無いのかもしれないが、それすらもよくわからない。
もちろんこれもホラーのテンプレから出てくる発想だが、ここまで結構テンプレ通りなら、ここもテンプレ通りになっている可能性は高い。
ただ、危惧があるとすれば。
(それこそテンプレを元に考えるなら、地下は危ない物がある可能性が高い。調査隊がここを見逃しているとは思えないので、おそらく何もないとは思いますが、用心は必要ですね。)
「なるほど。確かに、このような空間で出口が一つしかない、というのも考えづらいな。」
「え、なんで?」
「何かの事故で一か所が塞がれたら、出られなくなるだろう。そうなると死活問題だ。」
「ええ。普通は何か所かあるものです。」
「しかつ問題・・・?とんかつとかチキンかつの仲間?」
「お前・・・!」
「まあまあ、真田君。とにかく、後にしましょう。出口に関しても、あると限ったわけではありませんから。探索が先です。」
「む・・・まあ、お前がそう言うのなら、そうしよう。では早速進むか。五十嵐、先に行け。俺は最後尾だ。」
「ほいふ!・・・あれ?」
「どうかしましたか?」
「んーん、今何か踏んで・・・・」
次の瞬間、紀伊梨は全力で叫んだ。
紀伊梨が踏んだのは、割れた人の頭蓋にしか見えなかった。