Queen’s country:Haunted castel 1 - 8/9


「で?」
「・・・・・・」
「なんであんなに、止めることにこだわってたんだよ?」

丸井は紫希を部屋から引きずりだし、たまたま手近にあった廊下から出られるバルコニーで話をしていた。
ちょっと寒いが、この城は多分気味の悪い部屋しかない。ゆっくり話もできない。

紫希は重い口を開いた。

「・・・・・私。」
「うん。」
「さっき、あれが動く直前に・・・」
「うん。」
「・・・・丸井君の好きだった人が、気になって・・・」
「・・・・へ?」

聞きようによってはロマンが始まりそうな流れなのだが、紫希はそれどころではない。
今紫希の心理内には、罪悪感と、早く戻って止めないとという焦りしかない。

「あの、初恋の話をしたので・・・」
「ああ・・・いや、それは良いけど。」
「それで、その後すぐ動いたので、もしかしたらあれは私に反応してる可能性が、」
「まあまあ待てって。ってことは、あれはお前が知りたいって思ったことを教えてるかも、ってこと?」
「はい。」

知りたいこと。
この場合は、丸井の初恋の人のことだが。

「ですから止めませんと、他に誰か入ってきたら知られるかもしれないですし、」
「まあ、それはそうだけど。」
「そうですよね?」

いや。
いや。
でも。

「・・・・・うーん。」
「丸井君は待っててください、私見ないようにして、あれだけ取って来ますからーーー」
「だーから待てってば。」

丸井は紫希の手を掴んで止めた。
紫希は走るのが遅いわりに、やるとなるとためらいがない。

「まずさ。」
「・・・はい。」
「なんで俺に聞かねえの?」
「え?」
「目の前に居るだろい?別にウィジャボードになんか、頼まなくて良いじゃん?」

それは。
それはある意味真理なのだが。

「・・・いえ、いえでも、流石に、」
「何が流石に?」
「だって繊細な話題ですし、こうずけずけ聞くのが躊躇われると言うか、」

本人が居るから聞いたらいいじゃん。
なんてノリで聞けるもんなら、世の中の少年少女は、こっくりさんなんかに人のことを聞いたりしないのだ。

「嫌じゃないですか、そういうの・・・?人に知られるのとか、言うのとか・・・」
「まあ、知られたくない奴も居るのはそうだな。仁王とか、兄貴の黒崎とか、五十嵐とか?」
「ですよね?」
「でも春日は良いよ。」
「え?」
「ぷはっ!」

紫希が聞き返すと、丸井は思わず笑ってしまった。
聞き返してくると思った。紫希は自分に都合の良いことが起こると、いつも驚いて確認を連ねる。

「いーいよ。春日だったら。」
「・・・・そう、なんですか・・・?」
「うん。でも。それはそれとして、俺も見てえんだよな。」
「え?」
「俺も、自分の初恋っていつの誰なのかよくわかんねえし?」
「・・・・え、ええ?え?え・・・?」
「だから、ウィジャボードが誰を俺の初恋認定してんのか、ちょっと気になる。」
「そ・・・・」

そんなことってあるんだろうか。

「そういうのって、本人が初恋と思ったら初恋なのでは・・・?」
「そうなんだけどさ。でもなー、実際中学行ってから幸村君と黒崎見てると、初恋って何?みたいなこと考えちまうんだよな。」
「ああ、それもわかります。」

幸村は。
千百合が初恋だと言う。

言うし、それを誰に対しても気負いなく言う。
べらべら喋ったりはしないけど、思春期の少年たちの世間話でそういう流れになった時、実にさらっと言ってのける。

そういう時、丸井はふと思うのだ。

これが恋なら。
自分のあれは、果たして本当に恋だったんだろうか。

そんな風に、自分で考えるとなんだかわからなくなってきてしまうから、他人がジャッジしてくれるというのは、それはそれで良いかもしれない。そう思うのだ。

「ってわけで、行くか!」
「え?」
「戻るんだろい?」
「あの、」
「危ないから俺は残れとか言いっこなしな?」
「だって、」
「もう良いよ、そういうの。」
「もう良いってーーー」

丸井は紫希の手を取った。

「・・・丸井君?」
「俺は残れとか、俺だけ行くとか。そういうことすっから余計妙なことになんの、俺達。」

先日のトンネルの件で、丸井はよくよく思い知った。

自分は紫希を捨て置けないし、紫希も自分を捨て置けない。
だから、どっちかがどっちかを遠ざけて自分だけ突っ込んでしまうと、結局いたずらに別行動になってしまうだけ。最終的には後を追ってしまうから、結局同じことなのに。

なら最初から、一緒に居た方が早い。

「一緒に居ようぜい。」
「・・・・・・」
「だめ?」

紫希は迷った。

「・・・い、」
「い?」
「・・・一緒で良い、って丸井君が言ってくださるんだったら・・・・私も、そうしたいです。」
「OK!決まりな!」

2人はバルコニーから、戻る方に足を向けた。
足取りに迷いはなかった。