Queen’s country:Haunted castel 1 - 9/9


幸村と千百合は、進んだ先である部屋に辿り着いた。
特に当てはない。
ただ、気が向いた部屋に入ってみただけだ。

だったのだが。

「わ。」
「わあ。これは、えらく様子が違うね。」

その部屋は、かなりごちゃっとしていた。
今まで見たような気味の悪い飾りの他に、明らかに19世紀のものでないロープや筆記用具、鞄やゴミなどがある。

「これって、現代人がここに入った跡でしょ?」
「うん。調査隊やオカルトマニアの人が来た、ってことだったから、ここをベースにしてたんじゃないかな。」
「にしても片づけろよ。」
「あはは。そうだね、結構ルーズだったみたいだ。まあ、散らかってるだけでそれほど汚くはなさそうだけど。」

生ごみ系の物が無いのは、千百合にとって特に幸いだった。
間違いなく虫が湧くだろう。
それでも、あまり触ったりする気になれないのだが。

パキ

「ん?」
「うん?」
「ごめん、今何か踏ん、だ・・・・・」

千百合はそろりと足を退けて。
反射的に跳び退った。

「!」
「千百合?どうしたんだい、大丈夫?」
「いや、ごめんちょっと、血が、」
「血?怪我をしたの?」
「いや、私のじゃない。私のじゃないけど、なんか、あそこから・・・」

千百合が踏んでしまったのは、持ち主不明のポーチであった。
そこから、赤い液体がじわじわと流れ出ている。

もしかして間違って鼠とか踏んだんじゃないだろうか、と思うと、流石に千百合でも気分が悪い。

「どうしよ・・・」
「・・・ちょっと待ってて。」
「え、危なくない、」
「大丈夫、気を付けるから。」

幸村は、ちょっとした考えがあった。
この微かな匂い。
これは。

「・・・うん。千百合、大丈夫だよ。」
「何が?」
「血じゃないから。」
「えっ。じゃあ何それ。」
「絵具だと思う。絵具の匂いがするしね。」

幸村は美術が好きで嗜んでいるので、絵の具の匂いとかそういうのにも慣れていて、すぐにわかる。
鞄を慎重に見てみると、案の定割れた絵具瓶が中の方にあった。

「ほら。大丈夫だろう?」
「はーあ、びびった。」
「あははっ。びっくりする千百合なんて久しぶりに見たな。」
「忘れて。なんか、タネがわかったら結構ダサい反応した自覚あるし。」
「そんなことないよ、可愛いよ。」
「・・・・・」
「ふふふっ。ごめんね、忘れてあげられそうになくて。」

千百合は赤い顔になるけれど、もう何も言わない。
こうなると、幸村は千百合の一挙一動を可愛がる一方で、他のことをほぼ喋らなくなってしまうのだ。

他のことに集中していよう、と考えて、千百合が何気なく机の上にライトを当てると。

「わあ。」
「うん?」
「何が積んであんのかと思ったら。」

机の上が、何か紙っぽいものでごちゃついてるな、とは思っていたのだ。
そして照らしたら、まあびっくり。紙どころか、漫画本が無造作に散らかりまくっている。漫画と言うか、いわゆるアメコミ本だが。

千百合はさして興味も無いが、幸村は逆に興味深そうに近づいて行った。

「え、何。どうしたの。」
「いや。量が多いなと思って。」
「・・・だから?」
「結構、人数が居たみたいだね。もしくは、長期滞在をしていたか。」
「柄の悪いのが遊び場にしてたとかじゃなくて?」
「それなら、もっとそれらしいものが落ちてても良いと思うよ。爆竹とか、スプレー缶とか、お菓子の生ごみとかね。」
「ふーん・・・」

言われてみればそうかもしれない。

「でも、結局オカルトマニアか、調査隊でしょ?それらは暇した時用っていうか。」
「それも考えたんだけれど、それなら絵具は持って来ないかと思って。まあでも、マーキング用と考えたら、あり得ない話じゃ・・・・・」

ふと、幸村の目が止まった。
この本。いや、正確には、この本の下にある冊子。

「・・・え、何?」
「・・・これは。」

それは、明らかにアメコミではなかった。
暗くて良く見えないが、レポートのような、冊子のような。

「何?調査結果的な?」
「いや・・・・・・これは・・・・」

調査結果じゃない。

千百合がちらりと見た表紙には、たった一言だけ書いてあった。

英語で”ジョゼフィーヌ”と。