Queen’s country:Haunted castel 2 - 2/6


「こんなことってある?」
「あははっ!まあでも、実際に状況が物語ってるから、認めざるを得ないよね。」
「そうだけどさ。」

幸村と千百合は、2人で城内を歩いていた。
幸村の手には、あの冊子がある。
足取りに迷いはない。

「さて。」
「どっち?」
「ええと・・・ここを真っすぐ行くとホールだから、ここで右折かな。」
「ふうん。」
「で、扉を開けた先に渡り廊下的な所が・・・千百合?」
「・・・・・・・・」
「うん?・・・ああ。ふふ、良いよ。俺がやるよ。」
「・・・ごめん。」

扉の取っ手には、まあまあ大きい蜘蛛が巣を張っていた。
これはリアルな方の奴だ。

「えー、気にしてなかったけどもしかして、中にも虫居たのかな。」
「どうかな?ここはこの扉の先が屋外で、外に近いからっていうのも大きいと思うよ・・・ああほら、外に出た。」

幸村が扉を開けると、冷たい夜風が2人に吹き付けた。

「行こうか。千百合、これを着てね。風邪をひくから。」
「いや良いよ。」
「気持ちは分かるけれど、体調を崩したら元も子もないよ。」
「・・・・・・」
「どうぞ。」

幸村は苦笑しか出ない。

大体、千百合が今考えていることはわかる。
でもまあしょうがない。恥より健康の方が大事だ。

「それから、足下に気を付けてね。多分これから先、暗くなることはあっても明るくなることはないから。」
「げ。」
「あはは。まあ、ゴールは多少明るいと思うけど・・・あれっ?」
「何?」
「・・・開かない。」
「じゃあ決まりじゃん。」
「そうだね。」

行く先はある。
だが、扉はぴったりと閉じられていた。

ここで2人は、確信に至った。
誰か。
誰かわからないが、誰かがこの城にあるギミックを動かしている。
それも、こっちを見ながらリアルタイムでだ。

「ただ、これはこれで困るなあ。どうやって進もうか。」
「・・・力技とか?」
「あはは!できなくはないけど、やっぱり壊すのは最終手段にしたいね。」
「ふうん。」

まあ幸村なら、そう言うと思った。
ただ、じゃあどうするという話になるが。

「・・・ねえ。」
「うん?」
「あれは?」

千百合が指差したのは、2階にある窓だった。
ガラスが無い。
多分、ここは居住スペースではないので、壁があれば十分と思われたのだろう。だから、明り取り用の窓にガラスがはまって無いのだ。

今居る場所の屋根をつたえれば、行けそうではある。
あるけど。

「俺は行けるけど、千百合は危ないんじゃないかな?」
「落ちても芝生だし。2階だし。」
「だけどーーー」
「じゃあ精市がサポートしてよ。」
「・・・・・・」
「どう。」

幸村は笑っちゃいけないと思いつつ、笑顔を抑えきれなかった。
これは千百合なりに甘えているのだ。形がどうあれ、恋人に頼られたら嬉しいのは当然。

「その言い方はずるいんじゃないかな?」
「嫌?」
「まさか、大好きだから困ってるんだよ。さて、そうと決まったら行こうか。」

幸村は渡り廊下の柵部分に足をかけ、実に身軽に屋根へ乗った。
もし体重に耐えきれなさそうなくらい劣化していたら諦めよう、と考えていたが、この分なら大丈夫。

「大丈夫そうだよ、おいで。」
「ん。」

普段やらないだけで、千百合は別に、運動が特別苦手とかそういうことはない。
紫希は多分その気になっても相当難しいだろうが、千百合なら頑張ればできる。
サポートがあればなおさら問題なくできる。

「よい・・・しょ。」
「大丈夫かい?」
「ん。」
「わかった、じゃあ行こう。」

今が雪の時期でなくて良かった、と2人は思った。
流石に、積雪していたら危な過ぎて諦める。

先導していた幸村は、先に窓に辿り着き、内部を伺った。
とりあえず暗いけど、変わった所はない。

「うん、降りられそうだ。来て良いよ。」
「ん。」
「気を付けてね。」
「え?」
「多分、着地したら何かあるから。」
「・・・・・」

千百合は舌打ちしたくなったが、目の前の幸村に悪態を吐いたところで解決はしない。
本当は、差し出されてる幸村の手を取るのも憚られるのだ。
それそのものは嫌じゃないけど、多分仕掛け人はこっちを見ているから。

まあ言うなれば見ているだけで、物理的に邪魔できることはないけど。

「大丈夫、千百合にケガさせたりはしないよ。」
「心配してんのそこじゃなくてさ・・・まあ良いや、下りないわけにいかないし。」

千百合が降りると、その瞬間付近一帯に子供の笑い声が聞こえてきた。

「・・・馬鹿にしてない。」
「あははっ。多分、他にできることが無いんだと思うよ?ここはあんまり使われてなかったみたいだしね。」

2人はさらに進んでいく。
ここから先は、扉が無い。もう進行の邪魔はできないはずだ。

2階から1階に降り、そこからさらに幸村と千百合は下っていった。

地下へ。
地下へ。