「うえええええん・・・・・うえええええええん!」
「わかった、わかったから泣き止め!」
紀伊梨は心理的な限界に達して、真田にしがみついて一切の遠慮なく泣いていた。
むしろ、よくもった方と思う。
柳生的には。
「五十嵐さん、大丈夫ですよ。骨ではありませんでしたから。」
「ふえ・・・?」
「そっくりでしたが、蠟燭でできていましたから。本物ではありませんよ、大丈夫です。」
「ほんど・・・?」
「ええ。」
(おい、そうなのか?)
(嘘も方便です。どの道ここでは精査できませんから。実際に偽物である確率も、そこそこ高いですが。)
本物だったら流石に近づきたくないので、柳生は近づかないが。
でも、調査隊が入ったのだったら、人骨とかその辺のものは、多分研究のために引き上げられていると思うのだ。
ただ、その後に他の誰かがあれこれ持ち込んだ可能性も否定できないから、絶対偽物とも言い切れない。
「さあ、いずれにしろ、ずっとここに居ても良いことはありません。進みましょう。目を瞑ってても構いませんから。」
「あ”い・・・」
「真田君、引き続き殿をお願いできますか。」
「ああ。」
3人が階段をゆるゆると降りていくと、先に扉があった。
これも閉じてるんじゃあるまいな、と一瞬思ったが、柳生が手をかけると、あっさり開いた。
が。
「五十嵐さん、見てはいけませんよ。」
「え?何?何?」
「目を瞑っていてください。夢に見るかもしれません。」
「ええええ!?何何居るの!?何!?」
「いえ、別に誰か居るわけではありませんが。」
「悪趣味な・・・本当にこれが、流行だったのか?」
比較的理解の疎い真田の発言だが、そうでない柳生でさえも「確かに悪趣味」と頷ける悪趣味さだった。床には血のようなものが広がった跡があり、そのさらに下に何かーーー多分魔法陣的なものが描かれている。
その真ん中に、何があったのかわからないような怪しげな祭壇と、白骨が横たえられていて、天井や壁には絵にかいたような拷問道具がひしめいていた。
普通の感性でもまあまあ気分が悪い。紀伊梨なんて、数ヶ月単位で眠れなくなるかもしれない。柳生は正しい判断をしたのだった。
「これを自宅に作るとは、神経を疑う。」
「ですね。」
「ひいいい!なんか踏んだ!ねえ何!?紀伊梨ちゃん何踏んだの!?」
「気にせずとも構いませんよ。」
「ああ、そこら中ゴミだらけだ。いちいち何を踏んだなどと、気にしている暇もない。俺達も何がしか踏んでいる。」
「そなの?」
紀伊梨はすっかり柳生の腰にしがみついているが、柳生は好きにさせた。
ここまで足下がごちゃついてると、手を引いている方がかえって転びやすい。
「・・・む。待て、2人とも。」
「およ?」
「どうしました。」
「何かの気配がする。じっとしろ、固まってーーーー」
がチャン!
真田が言い終わるが早いか、祭壇にあった聖杯のようなものが、急に横倒しになった。
そして、周りのいろんな物が、一斉にガチャガチャと動き出した。
特に拷問危惧が、けたたましい音を立てている。
「何何何!?何何何ーーへぶっ!」
「五十嵐さん、とりあえず私の上着を被っておいてください。見ないように。」
「なんだこれは!?」
「ポルターガイストでしょうか?そういえば、今まで出ませんでしたね。」
「ぽるたー・・・何だと?ええい、うるさくて聞こえん!」
パン!パン!
(ここでラップ音とは、からかわれているようですね。)
真田もそう思った。
自分達はおちょくられているのだ。
「ねー、何ー!?何も見えないしさー!うるさいしーー「五十嵐。」え?何?真田っち?」
「真田君?」
「柳生も、そこで待っていろ。」
「・・・何をなさるおつもりで?」
「もうたくさんだ!誰が何をしているのか知らんが、こんなものがあるからいかんのだ!片っ端から壊してくれる!」
「え、壊す!?何を!?」
「む、ええ・・・ああ。」
無茶を。
と言おうとしたが、柳生は辞めた。
多分無茶じゃない。
真田ならやる。
そう思っている間に、真田はずかずかと斧がかかっている方に近づいて行き、手に取った。
多分多少錆とかがあって、取りにくくなっているはずだが、そんなの真田の知ったことではない。バキ!という音と共に、もぎとってしまった。
「死者に鞭を打つのは躊躇われるが、祭壇ならば良かろう。行くぞーーーー」
真田が斧を振り上げたのと、音が止んだのはほぼ同時だった。
だが、一同は音が止んだ、と思うより先に、目を細めた。
まぶしい。
目を細めた先に開いている扉があって、そこから幸村と千百合が顔を覗かせていた。
「あんた達大丈夫?・・・真田は何やってんの?」
「あははははは!あはははははっ!」
一人何があったか想像が付いている幸村は、遠慮なく笑った。