「まあ種明かしをすると、ここは映画のセットだったんだ。」
「えーが?」
「そう。ホラー映画の舞台になる予定だったんだよ。怪しげで新しいものとか、凝ったギミックがあるのは、そのためだね。」
紀伊梨のグループと千百合のグループは合流し、別室に移動していた。
さっきの儀式みたいな跡があった部屋のすぐ隣である。
ここはがっちり電気が点いていて、薄気味悪さなどかけらもなかった。
「??え、じゃーこのお城は映画作るから作ったの?」
「いや、この城が18世紀にできたのは本当だよ。」
「そうなのですか?」
「ああ。それに、初代当主がホラー好きだったのも本当だ。まあもっとも、本当なのはそこまでなんだけどね。」
「?????」
「・・・本当の初代当主は、誰なのですか?」
「ジェイコブ・エバンスだって。そこに書いてあった。」
千百合が目をやると、幸村は手に持った冊子を振って微笑んだ。
「それなーにー?」
「映画スタッフの資料だよ。ここに、本当の城の曰くと、映画の設定が書いてあったんだ。初代当主のジェイコブは、城を建ててからすぐに流行病で城に居られなくなって、スイスに移って生涯を過ごしたらしいね。」
「では、ヴィンセント家の系譜は、すべて映画の設定だと。」
「そう。」
「なるほど。合点がいきました。」
「がてん・・・?」
「納得しました、ということです。」
柳生は、花瓶を見た時から気になっていたのだ。
19世紀からほっとかれてるはずなのに、枯れた花なんて残ってるわけがない。
まさか調査隊が生花なんて持ってくるわけもないし。
「でも、仕掛けはいろいろ凝っていたみたいだよ。あるものをないように見せかけたり、物をそれらしく動かしたり、いろいろね。それに、舞台は19世紀だから、文化の水準としては合わせてあったし。」
「ほう。」
「???つまりどゆこと?」
「おばけ博物館としてはよくできてる、ってこと。」
「ほー!じゃあじゃあ、やっぱり本物のお化けは居ないんですな!うん!」
そう。本物のお化けなど居ないのだ。
「あり?じゃあじゃあ、紀伊梨ちゃん達が階段降りた時、扉バタン!ってなって、開かなくなっちゃったのはなんで?」
「それはあの馬鹿たちのせい。」
千百合が遠慮なく指差す先には、怒り心頭の真田と、正座させられている棗が居る。
仁王はどこかへ逃げたらしい。
棗・仁王グループは、なんというか持っているというか、1部屋回った次の部屋で、ギミックを動かす部屋を見つけてしまったのだ。
カメラも起動したら生きていたので、これ幸いとお化け屋敷の脅かし役のようなことを、楽しんでずっとやっていた。
タイミングよく物が動いたり、扉がしまったりしたのは、全部そのせいだった。
「お前達と来たら毎度毎度・・・・!いい加減に懲りんか!」
「なあんで俺だけ怒られんのよー!仁王だって同罪じゃんか・・・ちょっと脅かしただけじゃんか・・・」
「まあ、実際ちょっとで済まない事態もあるみたいだけどね。」
「何かトラブルでも?」
「紫希と丸井がまあまあ危ない目に遭ったぽいよ。柳と桑原見に行ってくれてるけど。」
「え、嘘!?怪我しちゃったの!?本物にばあっ!ってされちゃったの!?」
「違うわ。」
「脅かした時に、たまたま窓の多い部屋に居たらしくてね。二人とも、飛び降りて逃げてしまったらしいんだ。」
「なんと。転落ですか?お2人は無事で?」
「落ちたっていっても1m程度だし、多分平気じゃない。」
「えー、でも可哀想だよー!やっぱりお化け屋敷なんて、行かない方が良いですな!うんっ!」
実は、見て回った部屋は紀伊梨のグループが一番多い。そういう意味では一番楽しんだのだが、紀伊梨だけがそれを知らないのだった。