「リラちーーーん!」
「紀伊梨!」
トラファルガー広場で待ち合わせして、合流するや否や2人は抱き合って再会を喜んだ。
「リラちん久しぶりー!なんか元気になったねー!」
「???」
「(お久しぶり、元気になったねだってさw)」
「(ああ・・・そうね、そうだと思うわ。あなたのおかげよ、って通訳してくれる?)」
「お前のおかげで元気になったってw」
「え、そなの?よくわかんないけどやったー!サンキュー!」
「結局、何者なのだ?」
「今調べたが、彼女はリラ・ターナー。イギリス人のシンガーだ。こちらでは良く売れているらしいから、帽子とサングラスは顔を隠すためだろう。」
「ほう。有名人ということか。」
「どういう経緯で、五十嵐さんと友達になったんです?」
「紀伊梨ちゃん、今年もセーシェルに旅行に行ったんですけど、その時に知り合ったらしいです。何でも、スランプ脱出を助けたとかで。」
「へえ・・・じゃあ、結構しっかり恩人なんだな。彼女にとったら。」
「五十嵐が恩人ねえ。」
「俺達のことも知ってるんだね、彼女は。」
「なんか紀伊梨が教えたんだって。写真で見て覚えたって。」
「ああ、だから仁王のことだけ知らなかったんだね。」
「あんた、基本写真に写らないもんね。」
「プリッ。」
ビードロズは一応、紀伊梨から夏休みにリラと友達になった、ということはざっくり聞いていた。
ただ、まさか本当に本人に、こんなタイミングで会えるとは思いもよらず。
「でもリラちん、なんでこんなとこ居るのー?お仕事で撮影じゃなかったにょ?」
「(仕事って聞いてたのにどうしてだってw)」
「(ああ、それが・・・ちょっと手違いでね。マネージャーの・・・)」
じろ、とリラは、背後に立つ男性をジト目で見た。
少女から睨まれて、いい歳した男性が縮こまるのを見ていると、なんだかおかしいような気もするが。
「(紹介するわね。マネージャー代理のマックスよ。)」
「マネージャー代理のマックスだってさw」
「(代理?)」
「(ということは、本当のマネージャーではないのか?)」
「(ええ。私の本来のマネージャーは、ケイトっていう婦人なの。正直若くは無いんだけど、そこらの若い人より、よっぽどアクティブでタフなのよ。今はちょっと、親戚の事情で数ヶ月アメリカに行ってるんだけどね。)」
「なんてー?」
「ええと、本当はケイトさんという女性の方がマネージャーだそうです。ただ、その方がご用事で数ヶ月アメリカに行かれてるそうで、代理の方がマックスさんだ、っておっしゃってます。」
「なんていうか、あまり仕事にまだ慣れていないのかな?」
「そうなんじゃない。なんか、気張り過ぎて空回り感すごいし。」
「もうちょい肩の力抜いた方が良いんじゃねえ?」
「そうは言っても・・・実際難しいだろ?」
「まあ失敗を重ねると、人間余計肩に力が入るものですからね。」
何かしないと、役に立たないと。
マックスが、そういう気持ちが前に出過ぎていることは、ちょっと見ただけでもわかる。
「(まあ、それは良いわ!とにかく、会えて嬉しい!他の皆にも会えて・・・あら?)」
「どったの?」
「(・・・その烏は、何?わざと止まらせているの?)」
「え?何々?」
「カーラのことだよw」
「あー、カーラちんね!友達なんだよ!フレンド!フレンド!」
「友・・・・達・・・?」
「人のペットに向かって、友達呼ばわりは良いんかの。」
「良いんじゃねえ?人間だって仮定したら、もう友達みたいなもんだろい。こんだけ一緒に居るんだし。」
「しかし、人間ではないだろう。
「でも、そこらの人間より賢いよ。」
幸村のコメントに、一同は一気に納得した。
というか、せざるを得なかったというか。
「(友達・・・まあ、紀伊梨が言うなら、そうなのかしらね。ああ、烏と言えば。ねえ、紀伊梨たちは修学旅行なのよね。遊びに来たんじゃなくて。)」
「(まあ名目上はそうじゃの。)」
「(半分は観光のようなものだが。)」
「(そうよね。貴方達、もうロンドンーーー)」
カアア!
カーラが一声泣いたと同時に、マックスが「(あっ!)」と声を上げた。
「(リラ、そろそろ時間だよ。移動しなくちゃ、ええとタクシー、タクシーと・・・)」
「(ああ、もうそんな時間なのね。)」
「え?何?」
「お仕事だそうです。」
「えー!」
「仕方がないですよ、五十嵐さん。」
「暇じゃないんだから、こっちと違ってさ。」
「だってー!」
「(ごめんね、慌ただしくて。別に、そんな大した仕事でもないーーーー)」
リラは、ふいと言葉を切った。
「(・・・ねえ、貴方達、この後どうするの?)」
「(飯食ったら、まあ自由に見て回るつもりだけど。つっても、場所は限られてんだけどさ。)」
「(一応、修学旅行だからな・・・)」
「(なるほど・・・行ける場所のリストを見せてもらえる?)」
「(どうぞw)」
リラは、学校側がピックアップしたスポットのリストをじっと見た。
「(・・・ああ、あった!やっぱり!ねえ、皆!)」
「ほえ?」
「(一緒に、ロンドン自然史博物館に行かない?私、口利きできるわよ!)」
カア、とカーラが小さく鳴いた。