Outing 5 - 2/7



「はふう・・・」

ヘリの中、可憐は溜息を吐いた。

やっとテンションが落ち着いてきたが、胸の中の嬉しさはまだまだ可憐の中でポカポカしている。

新しい友達。
素敵な友達が、一度に4人も。

しかも住まいが県外な上、マネージャーなどでも無い。友人になれたのは本当に偶然の事であり、それが余計に可憐を嬉しくさせるのだった。

「素敵な子達だった、ね?」
「そうでしょっ?そうなの、皆良い人なんだよっ!」
「ま、彼処まで面倒見てくれる時点でなー。」
「ああ、悪い奴等じゃねえんだろうな、ってのは直ぐ分かったな。」

何せ、ドジっ子とねぼすけの2人をわざわざ送ってくれてるのである。寝てるからと背負って、荷物まで手分けして持ってくれて。
おまけに旅行者だというのに、スケジュールに融通を利かせてそれを成してくれたのだ。

「私も友達になれて嬉しいわ。特に、今回はあんまり話せなかったけど、千百合ちゃん。あの子、お話出来たら楽しそう!」
「楽しいよ!千百合ちゃんはね、大人っぽいし落ち着いてるし、クールでかっこいいの!」
「亮、話してたよな?どんなだった?」

それである。

「彼奴、好きな人が居るとか言うから「上手く行くと良いな」とかって思ってたのに!後から春日、だっけ?春日に聞いたら「お付き合いしてるんです」とか言うんだぜ!それならそうと言えよっての!」
「まあまあ。お付き合い、いう響きが恥ずかしい事もあんねん。」
「でも、素敵だよねっ!彼氏さんも優しそうな人だったし!」
「ふふっ。それに、情熱的だったし、ね?」

その点に関して異議を唱える者はこの場に居なかった。
まあヘリで帰ってなんかきたら、何があったのかと思うよね、とは思うがだ。それを差し引いても、一も二もなく駆け寄って抱き締めていたあの光景は、色々と衝撃的だった。

「あーあ、良いなあ!私もあんな恋がしたいわ。女の子として憧れちゃうわよ、ね?」

網代の発言は、忍足の後頭部にトス、と凭れかかった。

もしや、求めて居るのだろうか。
自分に、それを。

「・・・・・・」
「跡部君は、紫希ちゃんとお話してたわよね?なんだか難し~い、お話だったみたいですけど?」
「そーそー!聞こえてきたけど、何話してんだかさっぱりだったぜ!」
「アーン?それはお前らの知能レベルが低いだけの話だろ。」
「あ!そうなんだよ、紫希ちゃんは優しいけどそれだけじゃなくて、すごく頭良いんだって!テストで95点より下は取った事無いって言ってたよ!」
「「マジ!?」」

向日や宍戸辺りに取っては、雲の上の話である。一度で良いからそんな事言ってみたい。

「でもよ。跡部がああいう奴と話してるのは、正直意外だったぜ。」
「せやな。ああいうおどおどしたタイプは嫌いちゃうかったん?」
「言っておくが、彼奴は見た目より臆病な奴でもねえぞ。」

確かに最初は、顔に「初めての人怖いです」と書いてあって、態度が鼻についた。
だが、本の話をした時に顔つきが変わった。

恐怖が失せたのでは無い。
恐怖を押さえ込んで、好きな物の為に必死に勇気を出している顔になったのだ。それが出来る奴は、嫌いでは無い。

「知識も広くて話がし易いしな。俺様からしたら、岳人が相手してた五十嵐の方がよっぽど疲れるぜ。」
「そんな事ねーよ?彼奴話のわかる奴だし、面白いし!」
「紀伊梨ちゃんは楽しいよね!お話してたら元気になるし、明るいし、可愛いし!」
「「「「可愛い・・・?」」」」
「え?可愛いよねっ?」
「あら貴方達、可愛く無いとでも言うつもりなの?」

そう言われて、各々改めて紀伊梨のビジュアルを思い出す。

「確、かに・・・」
「黙っていれば、そこそこではあるが・・・」
「正直彼奴、ぎょえー!とかうおー!とか言って変な顔もしょっちゅうするから、可愛い顔って言うより良く変わる顔って感じなんだよなー。」
「それやわ。」

笑顔の華やかさは確かにアイドルレベルだが、可愛いと言うより表情豊かという印象が強い。
だからこそ話していて楽しいし、気分が明るくなるのだが。

「そういや侑士、あの男子の方ってどうだった?どんな奴?」
「ん?彼奴なあ。彼奴は・・・」
「あら駄目よ。侑士君は棗君の事が気に入らないらしいから。」
「えええっ!?」

可笑しそうな網代とは正反対に、可憐は大層驚いている。

「あんなあ、」
「アーン?本当の事だろうが。」
「跡部まで・・・」
「どうしてっ!?棗君は良い人だよっ!?」
「おお!お前初対面に向かって、あんまり気に入らないとか言わねーじゃん!」
「何かされたのか?言われたのか?」
「いや、ちゃうねんけど。」

どうしたどうしたと聞いてくる可憐に向日、宍戸の、純粋そのものの心配の視線が痛い。

「ふふふっ。お父さんは心配性、ってやつよ。ね?」
「ん?・・・ああ、そういう事かよ。」

宍戸は網代がちらと見た先、可憐の事に気がついた。

「でも、それは彼奴そのものに関係ないだろ?そんな理由で気に入らないだとかなんだとか、激ダサだぜ忍足!」
「キッツいとこ突いてくんな自分・・・」
「そうよ宍戸君、もっと言ってやって頂戴♪」
「えっ!?今ので宍戸君は分かったのっ!?」
「ああ。分かったけどこれはまあ、ほら。あれだよ。お前はその・・・気にしなくて良いからよ。」
「えええっ!?」


「・・・・・」

騒ぐ一同を、向日はなんとも言えない思いで眺めた。
お父さんは心配性。とか言うけれど。

「お父さんは心配性」状態で都合が良いのは忍足だけではないか?
可憐の方がどう感じるかとか分かってるのだろうか。

「・・・ゆ、」

パシ。
と跡部は向日の口を塞いだ。

「む・・・!?」
「言わなくて良い。」

向日が目で跡部を見上げると、跡部のアイスブルーの瞳が向日を見返してきた。

その中に、冷たさではなくて暖かさでもない、寂しそうな何か。それを感じた気がして。

「・・・・・」
「・・・良し。」

向日が大人しくなったのを感じて、跡部は口から手を離した。

可憐達はいっかな気づかず、棗と忍足の話に夢中になっている。

「・・・跡部。」
「やりたいようにさせてやりゃあ良いんだ。やりたくない事はしなくて良い。」

忍足は自分のやりたい事を分かってる。
そしてその通りにしているから、責任を取る気も無いのに、みだりに止めるような真似は慎むべきなのだ。

例えその「やりたい」の源が。
何であったとしても。