Queen’s country: London Eye - 2/6


ロンドン・アイは空いていた。

リラ曰く、「ちょっとおかしいくらい」の空き方だった。
ロンドンに位置するこの観覧車は、ロンドンの夜景が楽しめる大型観覧車として、大体いつも観光客が居るのだが。

でも今夜は空いていた。
だから、最大で25人入れる1つのカプセルに、無理して全員で乗り込まなくても良い。ということになったのだ。

「ねーねー、リラちーん!」
「(なあに?)」
「あのね・・・え、っていうかこれ何ー!?すごいすごい、何これー!?」
「(ふふふっ!紀伊梨に会えたことだし、手配しておいたの。)」

リラは、ポケット翻訳機を持参していた。
これがあれば、英語が通じない紀伊梨とも会話できる。8割くらいは。(紀伊梨は日本語がそもそもきちんとしてないため、一部訳せていないが)

「やったー!これでリラちんと、たっくさんお喋りできるじゃーん!」
「(ふふっ、そうね。私も、たくさんお喋りしたかったの、紀伊梨と。)」
「そーそー、リラちん、今日はどったの?何か、お話したいことあるの?」

今、このカプセルには、紀伊梨とリラしか居ない。

大体こういう時、誰よりも「皆で行きたい」と主張するのは紀伊梨だ。
だが今回はその紀伊梨に対し、リラが「紀伊梨と2人で話したい」と言い出したことで、少なくとも紀伊梨とリラは2人で乗ることになった。

他のメンバーも、絶対に紀伊梨と乗らないといけない事情があるわけでもなく、あっさりOKを出して、今に至るのだが。

「(ええ・・・あのね、紀伊梨。)」
「んー?」

「(ずっと言いたかったの・・・改めて、本当にありがとう。)」

「へ?」
「(夏、セーシェルで会ったでしょ?あの時、紀伊梨が私を歌の道に戻してくれたけど・・・私、あの日以来、本当に歌うのが楽しい。)」

リラは穏やかな顔で笑った。

「(こんな気持ちになれるなんて、思ってもなかった。生まれ変わった気分。貴方と貞治にセーシェルで会えたこと、私本当に幸運だったと思う。)」
「えー、そんなことあるかなー?リラちんがちゃんとできるよーになったのは、リラちんが頑張ったからだよ!そーだよ!」
「(あはは!それもそうだけど、でもやっぱり、一人じゃどうにもならないこともあるよ。そこを、紀伊梨たちが助けてくれたの。ありがとう。)」
「そお?」
「(うん・・・だからね、紀伊梨。聞かせて。)」
「へ?何が?」

「(紀伊梨、何か悩んでいるでしょ。)」

正確に言うと、紀伊梨はセーシェルで会ったあの時から、既に悩んでは居た。
ただ、あの時のリラは紀伊梨より遥かに自分に余裕がなく、紀伊梨が何かを悩んでいるかもなんて慮れる余裕はとてもなかった。

今、リラはやっとフラットな状態で紀伊梨を見られるようになったのだ。

「・・・・・・・」
「(何でも言って。今度は、私が紀伊梨の力になるから。)」
「・・・・じゃあじゃあ、聞いても良ーい?」
「(もちろん。何でもどうぞ。)」

「リラちんって、誰か好きな人居る?」