Queen’s country: London Eye - 3/6


再度言うが、ロンドン・アイは最大で25人入れる。

現在立海勢は紀伊梨も入れて全部で11人。
リラを入れても12人。

だから、紀伊梨とリラを引いた10人は、余裕で1つのカプセルに入ることができた。

本当に良いのか。
2人とかで乗った方が良いんじゃないのか。
誰とは言わないけど。

と、多分皆多かれ少なかれ思ったが、千百合はこういう時特別扱いされるのをすごく嫌がる性格をしていた。
幸村は、千百合が嫌がるのを押してまで2人きりになりたいとも思っていないし。

何より、カプセルは結構大きいので、10人でも余裕があった。
疑似的に2人になるのも簡単なので、一同はもう10人まとめて乗ることにした。

「へえ・・・中って、こうなってるんだな。」
「うむ。日本の観覧車とは、随分違うようだな。」
「・・・・・・・」
「何だ、仁王。」
「お前さん、観覧車に乗ったことがあったんじゃな。」
「どういう意味だ!確かに随分前のことではあるが、俺とてその程度の経験はあるわ!」

後ろの会話を聞いて、仁王とまったく同じことを言いかけた千百合は、言わなくて正解だったと思った。

「千百合、座らないのかい?」
「ああ、私良いや。紫希に譲るよ。」

隣に立つ幸村の顔は、夜景の明かりでほんのり照らされていた。

そう。
ロンドン・アイのカプセルは広いため、カプセル内を立って歩けるのだ。
日本だと観覧車は原則座りっぱなしだが、ロンドン・アイは立ち歩きが当たり前。

とはいえ、座るベンチもカプセル中心部にある。
窓が一番遠くなるのは中心部なので、多分あの高所恐怖癖の友人は、真ん中に居たがるだろう。

「・・・そうでもないみたいだけど。」
「え?」
「ほら。」

幸村に促されて後ろを見やると、紫希は窓際に居た。
暗くて良く見えないけど、多分死ぬ思いで手摺を掴んでいる。
それから多分、小刻みに震えてる。

そこまでして見なくても良いじゃん、とも千百合は思うのだが、今しか経験できないことはしておくべき、とか思っているのだろう。

「まあ頑張ってる甲斐あって、今日は晴れてるよね。」
「あーそっか。そういえば、昨日も一昨日も夜は霧が出てたっけ。」

幸村の言う通り、今日はよく晴れている。
夜景がきれいで、遠くまで見える。

「日本なら「あれはスカイツリーだ」みたいな会話ができるけど、ロンドンは流石にわからない所も多いね。」
「私日本でもそういうのよくわかんない。」
「あははっ!でも、千百合にはもしかしたら、ロンドンの方がわかりやすいかもしれないね。奇抜な建物も多いし。」
「ああ、橋とかもあるしね。そういう意味ではそうかも・・・あれとか何?」
「ああ、あれはほら、明日全員で、行く・・・・・」
「・・・精市?」

幸村は、言いかけて頭の中で、いろんなことが繋がった気がした。

もしかして。
いやそんな。

でも。

「・・・・・・いや、良いや。」
「何?」
「ううん、何でもないよ。ちょっと思い出しかけたことがあったんだけど、帰りの飛行機で良いと思って。」

幸村は、ポケットの中のスマホを出しかけて、辞めた。

良い。
別に、知らなくても。
世の中には、知ったらそれで終わってしまうことも多分あるから。

「え、調べたら良いじゃん。」
「ふふっ。ありがとう、でも本当に良いんだよ。大したことじゃないし。それにほら、夜景がきれいだから。」
「だから?」
「修学旅行を特別に抜け出して、幸運で乗れてる観覧車で、好きな女の子と夜景が見られるんだよ?後回しでも良いことを考えるのに時間を使うなんて、もったいないじゃないか。」

感情的になりたいときは、思考の種は追い出した方が良い。
よく芸術鑑賞する幸村は、それをよーく知っていた。

「・・・・30分もあるんだから良いじゃん。」
「1秒でも多く貰えるなら、そっちの方が良いさ。あ、ほら千百合。ビッグ・ベンだよ。」

暗いと手を繋ぎやすい。
昼に乗るより良かったな、と2人は内心で思った。