兄弟という奴は嫌な所にばかり気付く、と思った事は無いだろうか。
どうでも良い事や、寧ろ気づいて欲しい事に関してはスルーも良い所なのに、今突っ込まれると面倒だな・・・と心にふと過ぎった瞬間、急に目を向けてくる。
忍足に取って、姉、恵里奈は正にそんな存在であった。
「もう。侑ちゃんはこういう肝心な事に限って、お姉ちゃんに一言も言わへんねんから。」
(言わんでええからやん・・・)
あれでもないこれも違う、と呟きながら忍足のタンスを引っ掻き回す恵里奈。
何をしてると言って、勿論恵里奈はデートに赴く可愛い弟の為に、(勝手に)服を見立てているのである。
なあ、それ、誰が片付けんのん?と忍足は聞かない。あんたが帰ってから片付けるんやん、と返ってくるのが分かりきっているからだ。
唯一の救いは、センスという点に於いては恵里奈は良いものを持っているので、悪い結果にはならないだろうと思える事か。
「ちょっと、こっち来(き)い。んー・・・あかんな、差し色が足らんわ。」
「なあ、 別にそんなんして貰わんで・・・」
「何言うてんのん、侑ちゃん。デートに気合入れた格好して行かへん男が弟やなんて、お姉ちゃん情けないわ。」
言っておくが、忍足は一言も恵里奈に今日がデートだなどと言っていない。
何時も履いてるものとは違う靴を出しておいただけ、只それだけ。
只それだけなのにこの恐るべき姉は、今日弟が女の子とお出かけすると見抜いたのである。コナ/ン君も真っ青の推理力。
「んー・・・あ!あったあった、これでどないや。ん?」
「・・・もうそれでええわ。」
「なんやの、その投げやりな返事。」
誰の所為や思てんねん、と口に出して言う程忍足は馬鹿ではない。
「はあ・・・ええか侑ちゃん、よう聞きや? 」
「はあ。」
「女の子いうのはな?男の手抜きにそらもう敏感で、直ぐ気付くんや。なんぼ、男の側がバレてない、思うててもやで。」
「そんなん、自分が引っかかった男がそうやったから言うて、俺迄同列視されても。」
「なんか言うた?」
「なんも。」
触らぬ姉に祟り無し。
「良し。分かったらこれ着て行き。」
「はいはい。おおきにな。」
力無く服を受け取る忍足。
「・・・因みにやねんけど。」
「うん?」
「男の手抜きてバレるんやろ?」
「そらもう。」
「じゃあ女の子の手抜きてどうなん?」
ふいと思っただけだった。
思ったから聞いてみただけだったのだが。
「男はアホやから、そんなんバレへん♡ 」
部屋を出て行きかけた恵里奈は、にーっこり笑って言った。
「こわ・・・」
忍足の呟きは、恵里奈が扉を閉めた音にかき消された。