Local 1 - 6/6


昼過ぎの駅前。
庇の陰で忍足は、姉、恵里奈チョイスの服を着て、行き交う人をぼうっと眺めていた。

今日も暑い。
全国的に雲一つない快晴で、これは帽子を被らないと日射病になるやつですね、なんて。

(・・・アカン。これはちょっと本腰入れな)

忍足はちょっと意識的に上を向いた。

冷静になれ。
しっかりしろ。
何事も最初と詰めが肝心だ。
気を抜いたりしてみろ、碌な事になりゃあしない。


深呼吸を一つして。


「・・・よし。」

呟いた時、女の子の声がした。

「ね~え?其処の人、良かったら私と遊びに行かない?」

聞いた事のない声。
ふわっと香る、嗅ぎ慣れない香水の香り。

帽子のつばで目元が見えないけれど、翻る薄い緑色のミニスカートは。

「・・・俺、これからデートやねん。」
「そ~んな固い事言わないで。ね?私、結構可愛いよ?」
「おもろい冗談やな。」
「きゃ!」

サッと被っていた帽子を取り上げると、薄化粧した網代の顔が忍足を見上げる。

「・・・な~んだ、バレてたってわけね?」
「他のスカートにしとくべきやったな。」
「スカート?」
「賢い着回しコーデに載ってた奴やろ。」
「・・・わあ。」

網代はちょっと悔しい思いをした。

これは自分が相手を侮っていたと言わざるを得ない。
まさか雑誌を見せたあの一瞬で其処まで見て、覚えていたとは。

「それにしたって、おもろい冗談、なんて言い草は無いんじゃないかしら?」
「そんなん言われても、こんなとびきりの可愛い子捕まえといて「結構可愛い」て。鏡見た事無いんちゃうか、て思うやん。」
「・・・ふ~ん?」

そう言って網代は、下から忍足を覗き込む。

そっか。
そっか。
そういう手で来ますか。

そう書いてあるような、如何にも本気にしてない悪戯っぽい笑顔。
これは手強い。

でも、簡単に負ける気は無い。

「・・・取り敢えず行こか、お嬢さん?」
「ふふふっ。じゃあ、エスコートを頼んじゃおう、かな?」
「承りや。」

そう言って、忍足は右手を差し出した。

「なあに?」
「エスコート言うたらこれかなあ、思て。」
「・・・・・」
「嫌ならええよ。」
「あ!」

サッと手を引っ込められて、思わず声が出る。

(・・・あ。)

しまった。
と思いながら顔を上げると、忍足は網代を見て微笑んでいる。

「・・・ずる~い!」
「何が?」
「何でもありません!もう、やり口がいちいち意地悪ね!」
「堪忍な。でも、知ってたやろ?」

網代の右手を取ると、やっぱり自分のそれに比べて格段に小さい。女の子の手なんだなとつくづく感じる。

「ほなら、改めまして。行こか。」
「ふふふ。はい、よろしくね?」

何処からどう見てもデートの風体で、忍足と網代はシネマに足を向けるのだった。