Local 3 - 1/7



海で砂の城を完成させ、思い切り写真を撮りまくった可憐は、今言ってみたい事があった。

「やー、今日は本当に暑いですなあ!」
「もうピークは過ぎたけどねw」
「16時だしね。」
「何処かへ行くなら後一箇所くらいでしょうか・・・可憐ちゃん、何処か行きたい所はありますか?」

ある。
凄く行きたい所があるが、言うのは憚られる。

(どうしよう・・・!気を悪くするかな!?でも、言うだけなら大丈夫かな・・・!)

おろおろする可憐は、自分が「言いたい事あります!あるんです!」オーラがダダ漏れな事に気がついていない。

「・・・可憐ちゃん、ご希望がお有りならなんでも言って下さい。折角ですし。」
「えええっ!?いや、あの、私別にっ!」
「無理有り過ぎ。」
「う!あうう・・・」
「なんだなんだー?別に何処をリクエストして貰ったって、構いませんぞっ!」
「きゃ!紀伊梨ちゃん・・・」

背中に飛びつく紀伊梨。

良いんだろうか。言っても。

(・・・良し。)

もし怒られたら、全力で謝ろう。
そう心に決めて、可憐は気合を入れた。

「・・・あのね。」
「うんうん!」

「・・・立海の、練習を見てみたいの・・・!」

言った。
言ってしまった。

顔が上げられない。

(・・・うーんw)
(こ、これはどうなんでしょう・・・)
(え?なんでそんな言いにくそうにしてるの、可憐たん?)

抱く感想は三者三様。

だが、千百合はあっさり言った。

「良いよ、行こ。」

(え?)

「良いのっ!?」
「良いんですか!?」
「マジかw」

目を剥くのは可憐と紫希である。
紀伊梨は1人キョトン顔だ。

「別に良いんじゃないのー?なんでそんな吃驚すんのー?」
「吃驚するよっ!私、氷帝のマネージャーだよっ!?立海じゃないんだよっ!?」

早い話が、折角敵校の近く迄来たんだから偵察したい、という事である。
紫希達は友達だが、それはそれとして氷帝マネージャーとして見たいという気持ちがある。
そしてそれは、立海テニス部に取っては損にしかならない筈の事だ。

「お前wそんな勝手に返事しちゃって良いわけw」
「勝手に返事って言うか、私達レギュラー決めの時しかまともに見てないけどさ。ぶっちゃけ、精市からは良く聞くわよ、他校の偵察が何時もウロウロしてるって。」
「「「ええええ!?」」」

これは紀伊梨も吃驚した。

「あ!そっか!可憐たん、うちの偵察したかったんだね!」
「馬鹿w」
「何おう!」
「い、良いのっ?本当にっ?」
「昨日も一昨日も何人も居たみたいだしね。流石に氷帝生は居なかったし、今時分辺り休憩中だろうし、一応聞いてみてるけど、多分大丈夫なんじゃない。」
「全然知らなかったです・・・」

ごくごく軽い感じで答える千百合は、幸村からの返事待ちで携帯を覗きながら引き上げ支度をしている。

思いの外あっさり話が進んで、可憐は戸惑いつつも一先ず安堵した。

(・・・でも、なんかこんなにあっさりOKされると、それはそれで複雑だよね・・・!)

なんというか、見られても全然困らないと思われているというか。そのくらいの事で遅れは取らないから、というような強者の余裕を感じる。

しかし、勝負の世界とはそういうものである。力こそパワー。言いたい事があるのなら、勝ってからにしろ。

(いやいや!落ち込んでる場合じゃないよねっ!堂々と見学出来る機会が手に入ったんだから、拗ねてないで1つでも多く持って帰らないと!)

「・・・返ってきた。良いって。今日も他校が何人も居るらしいし。」
「あ、有難うっ!じゃあ、お言葉に甘えてっ!」

両拳をギュッと握って、気合を入れ直す可憐。

「いやはや、可憐たんは熱心ですなー!じゃあじゃあ!今から、立海に行くって事で、良いんだよね!」
「そうですね。一度制服に着替えなくては。」
「えー?このままじゃ駄目ー?」
「流石に此処まで私服丸出しは駄目でしょw」
「あ!わ、私他の服・・・!」
「サイズ近い誰かの貸すから、今日だけ立海の服来たら。」
「えええ!?」
「えええとか言うけど、実際どうしようもないでしょ。」
「あう・・・・!く、クリーニング代出すから!」
「転ばなかったら汚さないよw転ばなかったらw」

その転ばない、が出来るか分からないから言ってるのに。
色んな不安とドキドキを抱えながら、一同は一旦家へと引き上げるのだった。