Daily conduct 1 - 4/5


「アイスうんま~~~!いやあ!やっぱり暑い日はこれに限りますなあ!」

良い御身分な事を言いながら明/治エ/ッセ/ルのバニラを食べる紀伊梨。
冷たい。甘い。美味い。

「部屋に居ると冷房無くても過ごせて良いねw」
「零したらどうなるか分かってるわね紀伊梨。」
「うえっ!?」
「と、取り敢えずベッドから降りましょう紀伊梨ちゃん!」

此処は黒崎家。
現在ビードロズは、アイスで一息中だ。

「千百合っちー、一口あげるから一口頂戴?」
「いや。」
「なんで!?」
「クリーム系興味無い。」

そう言う千百合が食べるのはフ/タバのサク/レ。すっぱ冷た美味い。

「じゃあ紀伊梨ちゃん、私と交換こしますか?」
「本当っ!?わーい、やったー!」
「紫希、私も。」
「あ、はい、私も千百合ちゃんの食べたいですけど・・・」
「クリーム系興味無いって言わなかったですか千百合さん!?」

紫希が食べているのは森/永のM/O/Wベリー味である。

「なんでそんな意地悪するのー!もうー!M/O/Wだけにー!」
「寒い、座布団没収。」
「まあまあ・・・」

(幸村ー、俺こういう時なんでお前居ないんだろーって心底思うよー)

棗はグ/リコのカルピスパ/ピ/コがイチオシなのだが、そのアイスの特性故に一口頂戴が出来ない。
相手は幼馴染とはいえ女子だから、どうあがいても間接キスになる。
幸村が居ればこっちはこっちで交換できたのにな・・・と棗は些か遠い目になった。

「・・・さて、じゃあそろそろ始めても良いですかね、リーダー?」
「うん!おけおけ!」
「おーし、じゃあこれより第一回、

柳生比呂士を如何にしてテニス部に入る気にさせるか会議を始めまーすw」

「「「いぇーい。」」」

ゆるゆるな空気で始まった今日の会議は、文字通り。

現状でゴルフ部に所属し生徒会を掛け持ちしている柳生を、如何にしてテニス部にぶっこ抜くか?その会議である。

「んじゃ手始めに、中身より外堀から埋めていきますかw先ずは目標タイムだな。」
「もくひょータイム?何か体育みたーい。」
「出来ればこの日までに引き入れたい、という希望ですよ。地区予選は何時からでしたっけ?」
「5月の3周目から。」

今5月の頭。
今から僅かに半月後には、もう長い闘いの幕が上がってしまう。

「えー!でもそんなの今から練習して間に合うのー?」
「いやいやいや間に合わないよw明らかに間に合わないよw」
「でも、地区予選は無理としても、大会の雰囲気とかは知っておいて欲しいかな、とは思いますね。勝ち上がったとして、地区予選が5月で県大会が6月・・・」
「関東大会が7月で、全国が8月。」

となると。
やはり暫定的なリミットとしては。

「早ければ早いほど良いのは大前提としましても・・・」
「やっぱり夏休み前ね。」

夏休み。
何故夏休みがリミットになるかというと、授業がストップするこの時期は打ち込んだ事に対する能力が飛躍的に上がる時期だからだ。
それは勉強でも部活でも何でも良いが、中学の間で3回しかないそのチャンスの1回を落とすのはキツい。

「ですけど、あんまり休みの直前になると、入った直後にハードな練習という事になりますから・・・」
「や、それは考えんで良いわ。彼奴ゴルフ部は温いとか言ってたし、ハードだからって投げる様な性格してないよ。」
「おおー!やーぎゅってば、頑張り屋さーん!」
「見習えよ。」
「あう!まーまーそー言わないで千百合っちー!」
「まあ兎に角、それは良いからw夏休み直前まで引っ張っても、まだ大丈夫って感じでw」

棗はルーズリーフにメモしていく。

「さて次だw如何にしてやーぎゅ君の興味を引くかw」
「興味を・・・」
「引く・・・」

難しい要求である。

「しかもテニスにだけ乗り気にさせても意味ないからねw」
「ええ!?なんで!?」
「・・・仁王君がダブルスをやりたがっているから、ですね?」
「御明察だwテニスと一緒に仁王を好きになって貰わんと、仁王に恩を返したとは言えんわけでw」
「おお!成程ー!」

ビードロズの最終目標は、仁王の望むポストに柳生を据える事。
仁王の望むポストーーーそれは、自分とダブルスを組んでくれるパートナーの立ち位置。
だから入った後で「貴方とダブルスなんて組みたくありません」などと言われると、目的の半分しか達成出来ていない事になるのだ。テニス部的には+でも、仁王にとっての+になりきれていない。

しかしそう考えると。

「テニスを好きにさせるより、仁王を気に入らせる方がハードル高くない?」
「ですよね・・・」
「ほんまそれよw」
「えー!?なんでー、ニオニオは良い奴だよー!?」
「あんた仁王と2ピースバンド組んでご覧って言われて、さくっとOKするの。」
「・・・それは嫌かな!」
「ほら見なさい。」
「正直かよw」
「ううん・・・」

千百合の言う事はズバリである。

仁王雅治。彼は紀伊梨の言う通り、根は悪い人間ではない。
が、それはそれとして彼にとっては、自分以外の人間は皆等しく引っかける対象。
隙あらば騙して、惑わせて、驚かせて面白がる。

そんな仁王とコンビを組んで?相棒になって友情を深めて?
お互いの事を知って信頼し合って剰え息の合ったチームワークを披露して見せろと言われたって、二の足を踏まない人間の方が少なかろう。出来ない気しかしない。

「ニオニオ何考えてるのかイマイチ分かんないもんねー!聞いても教えてくんないしー!」
「徹底して秘密主義だしね。」
「優しい人ではありますけれど・・・」
「優しいか?いや、優しいけど優しいだけか?」

ガムを出したと思ったら指を挟む悪戯グッズで、珍しく掃除に参加してると思ったらそっと床の隅にGの人形を置いて、男子トイレの個室に誰か居たら女声を出して花子さんの噂を立てる。
優しい一面もあるが、そうじゃない一面の枚挙に暇が無さすぎて笑えるレベル。

そんな仁王君を、あの柳生に気に入って貰うにはどうしたら良いのか。

「そもそも、柳生みたいな奴は仁王みたいなタイプが一番嫌いなんじゃないの。」
「そーでもねーっすよw彼奴は彼奴で堅物そうに見えてなかなかお茶目なとこあるからw」
「それに今回は、ほら。仁王君の方が追いかけている側ですから、多少は歩み寄ってくれますよ。」
「んじゃ、はいはいはーい!」

紀伊梨がバッと手を上げた。

「却下。」
「まだ何も言ってませんが!?」
「はい紀伊梨ちゃんw」
「一緒に遊ぼうよー!仲良くなるには、やっぱりいっぱい遊ぶ事からだよねっ!」

一緒に居るのが楽しくなるには、楽しい事を一緒にしよう。
シンプル且つダイレクトだが、効果の程は絶大だ。

「うふふ。良いですね。」
「でしょでしょー!」
「単純か。」
「まあまあ有効なのは絶対確実だからw他は?」
「ん。」
「はい妹w」
「競争させる。」
「えええー!?それ喧嘩にならないー?」
「・・・いや、良い案だわ。」
「そうなの!?」

これは仁王とか柳生とかに限った話ではないが、男子という生き物は多かれ少なかれプライドを持って生きている生き物なのだ。
だから勝負事になれば多くは負けたくないと思うものだし、勝てば嬉しいし負かされたら悔しい。

そしてそういう時にはどんな人間でも、むき身の感情が出て来る。
もしかしたら、自分達も良く分からない仁王という人間を知って貰えるかもしれない。

「競争かー!でもどーやって?駆けっことか?」
「男子なら、腕相撲とかも定番でしょうか?」
「あ!はいはい、マリカーは?マリパでも良いよ!」
「だからそれは遊んでるだけだろw紫希はどう?」
「うーん・・・やっぱり、共同作業でしょうか。」

ある意味では部活そのものがそうなのだが、一緒に目標に向かって協力し合う事で、友情も仲間意識も育まれるもの。嬉しい事ばかりでなく、苦労や障害を皆で乗り越える事で、信頼関係はより深まる。

「それも王道ね。」
「でもでも!皆で何かするのって、楽しい事じゃなくても楽しいよねー!」
「これも有効なのは歴史が証明しているからなwさて、こんなもんか。」
「ちょっと、あんたは。」
「えー、お前らが皆言っちゃったから俺は良いよw」
「役立たずが。」
「しどいよシスター・・・うん、まあこんなもんかな。で、次だ。これらをどう組み合わせていくかだけど、」

会議は続く。
暑い暑い日差しをばっちり遮られた部屋の中で。