14:30。
練習もまだまだ終わらないなあ、と何時もなら思うこの時間に、立海テニス部はもう片付けに入っていた。
「んでも、いざ早上がりって言われっと、これはこれで物足りねえだろい。」
「ふふふ。そうだね、俺ももうちょっとやりたいな。」
「俺は助かるぜよ。」
「お前は、今からそんなんで夏大丈夫かよ・・・」
暑いって言ったって、所詮5月の暑さである。これから夏になっていこうというのに、この男は。
「真田!」
「む・・・柳?」
かけられた声に振り向くと、珍しく柳が僅かに慌てたように駆け寄ってきた。
「どうした?」
「今、ロッカーに行ったのだが、真田。お前の携帯が、鳴り通しだ。」
「・・・何?」
「もしかしたら誰かから何か、火急の用なのかもしれない。確認した方が良い。」
「分かった。すまない、見てみよう。」
とは言え、自分の電話番号を知っている者で今この場にいる者以外となると、家族かビードロズのどちらかしか、ほぼほぼあり得ない。
「携帯・・・む。確かに。」
鳴っている。
もう、ロッカー部屋の前迄来た時点で、微かに聞こえてきている。
まだ皆が片付けに忙しくしている中、手早くロッカーを開けて、鳴り続ける携帯を真田は手に取った。
「・・・兄さん!?」
着信者は兄。
予想外である。何用だ。
「もしもし!」
『弦一郎!すまない、お前は今何処に居るんだ!?』
焦った様子。
どうした事だ。
「今はまだ学校です!」
『ああ・・・!』
「どうなさいました、兄さん!」
『今日家を出る前父さんと母さんから聞いたんだ。部活の後、友達と臨海公園のガーデンフェスティバルに遊びに行くんだろう?』
「そうですが・・・」
く、と兄が歯噛みするような音が聞こえた。
『頼む!フェスに来たら、手伝ってくれ!』
「何をです!」
『左助が迷子になった!一緒に探してくれ!』
ガシ、と音が鳴った。
携帯が力の抜けた手から、床に滑り落ちた音が。