『本当は、怖がっている、僕も♪居るけれど♪』
「・・・!」
左助は足を止めた。
今結局左助は何処に居るのかというと、公園に幾つかある入口の内、大通りに面している所のであった。
もうほんの十数メートル先は通りの向こう側になってしまい、完全にスピーカーの射程圏内から外れる。
その僅かに手前で、左助は聞き覚えのあるメロディに立ち止まったのだった。
『逃げ出したら君を♪守ーれーないならー・・・♪』
(お星さマン・マーチ・・・)
何処から聞こえてくるのだろう。
左助は呼ばれているかのように、公園の中心に向かって引き返した。
この音楽の音源は分からない。
分からないけれど、この歌を辿って行ったら、その向こうにはお星さマンが居てくれたりしないだろうか。
(・・・お星さマンが居たら、助けてくれるかな。)
両親の元に戻りたい。
叶うなら戻して欲しい。
でも、自分は悪い子だからもしかしたらお星さマンでも助けてくれないかも、という不安は左助の中から消えなかった。
『俺とてお前に好かれたくなどないわ!』
「・・・・・」
左助は真田が好きだった。
一言も言った事は無いし、最終的に今朝のような言い合いに縺れ込む場合が大半でも、それでも好きだった。
自分が不満を言うと良し良しとあやす祖父母曾祖父とも違えば、はいはいと流す両親とも違う。
真田は自分に取り合ってくれた。
いつ如何なる場合でも、例えば練習帰りで疲れていたり、ご飯の時風呂の時、なんなら就寝した後でもわざわざ起き出して、ちょっかいをかけたら必ず大真面目に自分の相手をしてくれた。
それが一人っ子である左助にとって、どんなに嬉しくてどんなに得難いものか、真田は知らない。
そしてそれと同時に、左助自身は意識下では絶対に認めないだろうが、無意識下では左助は真田に甘えていた。
どんなに怒ったって自分が酷い事言ったって、たるんどるとかたわけとか言われるけれど、絶対最後には許してくれる、又構ってくれると思っていた。
だから今朝怒りっぱなしで出て行かれてしまって、そしてその後フェスに真田も友達と来ると聞いた時、左助は怯えていた。
まだ怒ってたらどうしよう。許してくれなかったらどうしよう。
そんな事を考えていたら、母がああいう怒り方をするから。
だから気にしていた所を突かれた形になった左助は、悔しくなって悲しくなって、衝動的に母から遠ざかりたくて結果迷子になったのだけど。
「・・・・」
真田はもう自分を許してくれないだろうか。
もう遊んでくれないだろうか。
結局真田にごめんなさいと言えない自分だが、お星さマンは手を貸してくれるだろうか。
『RA・RA・RA泣きたくなっても♪涙は堪えたままで♪』
(いーつーでもー、つーよきでー、)
言葉の意味は全然分かっていないけど、大好きな曲だから歌詞は丸暗記している。
『いーつーでも、強気でー♪1人でだって♪戦うんだ♪』
(そーれが、ヒーローさー・・・)
綺麗な声。
左助は漸く、来た道を戻り始めた。