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「・・・だから、暫くは一緒にお昼食べられないのっ!ごめんねっ!」

朝一番、パン!と手を合わせて伊丹、内川、榎本に謝る可憐。

「何かと思ったらそんな事か。」
「別に気にしなくてイーのにー!」
「それに、これからずっとってわけじゃないんでしょ~?」
「それは違うけど・・・」
「なら良し!」
「頑張ってお勉強してきなよ~。」
「うん!有難う!」

嬉しそうにする可憐に、内川は思わず溜息が出る。

「しかしよくもまあ、ベンキョーするってのに喜んで居られるねー?あたしムリ!ムリムリ!」
「真美はもうちょっと勉強しろ!」
「でも、勉強って言っても好きな事だから!真美だって、やりたい勉強ならきっと楽しいよっ!」
「無いわー!あたしベンキョー楽しいと思う日なんか絶対来ない、マジで!」

「そんなんでテスト大丈夫なの~?」

榎本の言葉に、ピシリと内川が固まった。

「・・・・・・」
「真美~?どーなのよ?」
「・・・いやあ、ほら、瑠璃の姐御!お願いします!」
「ふざけんな!」
「ふぁいお~。」
「朝香ぁ!アンタもセーセキは良くないじゃん!」
「でも、悪くも無いもぉ~ん?誰かさんと違って~。」
「くう・・・!可憐は頭良いしなぁ・・・!」
「そ、そこ迄じゃないよっ?」
「そんな事無いよ~。」
「そうそう、可憐は何時も、小テストなんかでも良い感じじゃん。」

3人の言う通り、可憐は成績は優秀な方である。授業は真面目に受けるし、テストは時間がちゃんと確保されているし。

「まあ強いて言うなら、可憐はヒッカケにすぐ引っかかるよな!」
「あう!」
「あと、時事モンダイとかも弱そう!」
「お、仰る通り・・・!」
「人の欠点を論う前に自分の事を顧みなさい。」
「あだ!殴んなくても良いじゃーん!」

皆で笑い合いながら話すテストの話。
そうだ、もうすぐテストもあるのだ。

(もう中間テストかあ・・・あっという間だなあ。)

来週にはもう、テスト前として部活停止期間に突入する。
そしてテストが終われば間も無く、地区予選の始まりだ。

次から次へと生まれてくる予定。
それらは一挙に解決出来ない。
目の前の一つ一つをこなして行くしかないのだ。

その為に先ず。

(勉強しないと・・・!)

テニスの事を、もっと沢山知らないといけない。
頑張れ私!と気合を入れる可憐を、3人は微笑ましく見守るのだった。

「ところで!」
「「「?」」」
「それはそれとしてさー、可憐一昨日ショーナン行って来たんでしょ、ショーナン!その話聞かせてよー!」
「あ、それ私も聴きたかった!」
「他校のお友達なんて凄いね~。中学生~、って感じ~♪」
「うん、良いよっ!あのね、買い出しに行った時に会ったんだけど、助けてくれてね!それで・・・」




「さあ!聞かせて貰うぜ!」

授業間の10分休み。
ズイ、と何人かから詰め寄られて、忍足はほんの少したじろいだ。

「何の話?」
「とぼけんなよ!」
「網代さんだよ網代さん!映画デート行ったんだろ?」
「何見た!?」
「私服どんなだった?」
「いっぺんに言われても分からんて。」

大体私服どんなんだった、とか聞いてきてるけど、どう答えたって大概此奴らはおお!と感嘆の声を上げるのではなかろうか。

「・・・せやなあ。私服は賢い着回しコーデやったわ。」
「「「「賢い着回しコーデ?」」」」
「知らへん?雑誌に載ってててん。petit luxu*とかいうやつ。」
「知るかよちくしょーがーーー!」
「お前じゃねーーんだよ!女子向け雑誌なんか俺達が読んでみろ、キモーい!とかって引かれるだけだわ!」
「そーだそーだ、このイケメン!」
「別に俺かて読んでるわけやあらへんねんけど。」

人の事を女子中学生向け雑誌日常的に読んでる奴、みたく言うのはやめてくれないだろうか。名誉に関わる。

「じゃあ何でそんな事知ってんだよ。」
「兄弟の雑誌見かけたとかか?」
「いや、茉奈花ちゃんの見せてもろてんけど。」
「「「「自慢か!」」」」
「なんでやねんな。」

此奴らは網代を神格化し過ぎではないだろうか。コンビニで立ち読みしてた所に居合わせただけなのに。

「なんでやねんも何も、自慢だろ!」
「狡いぞ!お前ばっかり網代さんと・・・」


「あら。私の話、かな?」


噂をすればなんとやら。
忍足が後ろを振り向くと、本を胸に抱えた網代が居た。

「あ・・・」
「網代さん・・・!」
「茉奈花ちゃん。どないしたん?」
「ちょっとね?侑士君、可憐ちゃんと勉強するんでしょ?これ使えるんじゃないかと思って。」
「助かるわ。おおきに。」

流石、話が早い。
こういう所が有能と呼ばれる所以なのだろう。

「で?何の話をしてたのかしら。ま・さ・か・悪口とかじゃないとは思うけど?」
「全然!」
「そんな事絶対ないです!」
「う~ん、そんなにムキになられると却って怪しいんだけど。」
「私服の話しててん。」
「服?」
「そ。賢い着回しコーデ着てたっちゅう話・・・あた。」

網代の参考書か忍足の後頭部を軽く叩いた。

「ちょっと!なんでそーいう事喋っちゃうかなあ?」
「あかんかったん?」
「駄目に決まってるでしょ!アレは侑士君だから特別に教えてあげたの。基本的に男子には知られたくないお話なのよ?」
「そうなん。」
「そうなの!」

(なんなんだろうこの、さっきから感じるしょっぱい気持ち・・・)
(え?何?俺達はイチャついてるのを見せられてんの?)
(というか名前呼びされてんのか死ね!忍足死ね!)
(もうとっとと付き合ったら良いのに・・・)

「貴方達も、侑士君から聞いた事は忘れてね?」
「「「「はい!」」」」

(ええ返事やわあ)

そのええ返事で網代は気が済んだらしく、参考書を忍足の机に置いて身を翻した。

「じゃあ私行くから。お勉強頑張ってね?」
「おん。おおきにな。」

手をヒラヒラ振って教室を後にする網代に、忍足は手を振り返して見送った。

「・・・良いなあ網代さん。」
「やっぱ美人だよなー!」
「おまけに気が効くし!ああ完璧・・・!」
「勉強って何の勉強だ?上級者向けテニス読本・・・テニスの勉強?」
「そやで。」
「そーだ!聞いてたぞ、俺は!」
「何を。」
「網代さんにすっかり気を取られて居たが?網代さんは確かに、「可憐ちゃんと」勉強するんでしょ、と言った!」

(げ)

其処あんまり着目して欲しくないポイントなのだが、他人と言うのは余計な所にばかり気がつくものだ。
別に知られたからどうとかいう事は無いけど、鬱陶しい。

「貴様まさか!網代さんだけじゃ飽き足らず、他の女子にも手を出すつもりか!」
「別に手なんか誰にも出してへんやん。」
「ゆくゆくは出すだろー。」
「とんだ偏見やわ。」
「で?で?可憐ちゃんって誰?どのクラス?マネジ?」
「はあ・・・」

ああ煩い。
網代の話から離れても尚煩い。

「なー忍足ー。」
「教えへんで。」
「なんでだよ、良いじゃーん!」
「キリあらへんやん。」
「ケチ!」
「関西人やから。」

ケチは大阪人の気質やろこの京都人め!
従兄弟の鋭いツッコミが欲しいなあと思いつつ、心を閉ざして忍足は読書モードに戻るのだった。