Reason 2 - 4/6



何故に蕎麦屋の丼は上手いのか?
それは出汁に力を入れているからである。
良い出汁で作った丼が不味いはずがあろうか。いや、ない。

「ふおおおおお・・・!いっただきまーす!」
「・・・・・」

大盛りのカツ丼をほくほく食べる紀伊梨。
丸井もそうだが、あの細身の体のどこにこの量が入っているのか、仁王は不思議で仕方がない。

「あり?ニオニオ食べないの?」
「いや、食う。」

何かもう、見ているだけで腹いっぱいになりそうだが。

「いやー、でもそれにしても、ニオニオに会えて良かったよー!ご飯は一人だと、美味しさが半減しますからなあ!」
「ああ、そう言えば今日は黒崎も春日も連れて行かれとるんじゃの。」
「そーそー!久しぶりに1人になったよー!」

ある意味では面白い話だ、と仁王は思う。
外見だけなら抜きんでて美少女な紀伊梨が取り残される側になっているとは。

性格も明るいし人懐っこいし、真っ先に売れてもおかしくなさそうなのだが。

(如何せん頭がな・・・)

「?にゃーに?」
「いや、何でもないナリ。」
「そお?」

今失礼な事を考えられた事になどちっとも気づかず、紀伊梨はカツ丼をご機嫌で食べ進める。

「・・・気に障ったら無視して欲しいんじゃが。」
「ん?」
「お前さん、嫌な気分にはならんのか?」

紀伊梨は箸を止めた。
キョトン、な顔で仁王を見つめ返すが、何の話だかさっぱり分からない。

「嫌な気分?何が?どれが?」
「面倒じゃきこの際はっきり言うが、自分1人放っておかれて友達はデートって、何か思う所あるんじゃないかと思うただけじゃ。」

女子の友情というやつは、男子のそれとは質が違う。
恋か友達か選べと言われた時に、男子はなんとなく「友情に拘る自分かっこ悪い」的な思考が働く。
妙な話だが、男より女を多少優先させた方が、男子間でも物事がスムーズなのだ。

でも女子は違う。
「男なんて」の思考が顔を覗かせるのが女子の友情だ。
だから友達にだけ恋人が出来たりすると、自分の友達を取られたという寂しさとか、私の友達を悲しませたりするんじゃないわよ、とかいう正義感とか。
後まあ、稀にではあるが、何で私には彼氏が出来ないのよ的なやっかみが見受けられる事もある。

そういう考えは紀伊梨には生まれないのだろうか。

「んー・・・寂しいとは思うかな!こーやって1人になっちゃうしー。」
「それだけか?」
「うん!だって、皆友達だもん!友達と友達が仲良くしてるんだから、それで良くなーい?」

(ああ、そっちもあるか。)

紀伊梨からしてみると、千百合も幸村も紫希も丸井も、皆皆友達なのである。

もし知らない男がポッと出てきて、友達の彼氏の座に居座ったら又違う感想・・・あんた何処の誰なのよ的な感覚が生まれるのかもしれないが、今の所完全に身内の中で話が完結している。だから紀伊梨は平気の平左なのである。

「っていうか、千百合っちとゆっきーは兎も角紫希ぴょんとブンブンは違うっしょー?今回偶々一緒になっただけでー。」
「いや、何を言うちょる。どう考えても偶々じゃないじゃろ。」
「なんでよー。」
「よう考えてみんしゃい。気心しれた女子の友達と、会ってから2ヶ月も経ってない男子を天秤にかけて、後者を選ぶような性格じゃないじゃろ、春日は。例え券を持って来たのが丸井の側だったから、気を使ったとしてもじゃ。」
「だから土曜日・・・・はっ!?」

そうだ。
これは仁王に言ってはいけない。

「な!な、な、な、なんでもないっすよ!うん!なんでもない!」
「お前さんはつくづく嘘が下手じゃのう。」
「う、う、う、嘘とは何のことですかね仁王君!?私は決して嘘など吐いておりませんでございませんのことよ!」
「そうか。」

そもそも、丸井が選ばれたあの時からおかしいなとは思っていた。
丸井が指名を受けてそれはショックを受けていたのに、紫希が「土曜日に」と言いだした途端、紀伊梨は急に訳知り顔になって文句を言うのを止めた。

誰に何を隠しているのか知らないが、少なくとも自分は隠される側の人間らしい。

「さーて、今日何をしちょるんかのう、春日と丸井は。」
「さ、さーあ!?全然知らないなー、紀伊梨ちゃんは!何をしてるのかなー!?」
「ほう、春日の言うてた用事とやらまで見当がついちょるんか。」
「ついてないよ!ついてないよ、ついてないよ!紀伊梨ちゃんは何にも!知りません!」
「くくく・・・」

叩いたら叩いただけきっちり埃の出て来る紀伊梨を、このまま叩き続けても構わないが。

(今度は何をする気なんかの)

紀伊梨も紫希も共通して考えている「何か」。この2人が考えているという事は、高い確率で2人が、ではなくビードロズが何かを始める気なのだろう。
突き止める事もしようと思えば出来るけれど。

「・・・ま、ええじゃろ。」
「うん?何が?」
「何でもない。」

どうせ後後分かる事。
楽しみにしてろというなら、遠慮なく楽しみにしておくのもいいかもしれない。

「ほれ、早よ食わんと冷めるぜよ。」
「そうだった!あ!ニオニオ、お醤油取ってー!」
「ほれ。」
「ありが・・・ちょっとー!?ソースですけどこれー!あああ、紀伊梨ちゃんの冷奴がウスターソース味にいいい!」
「プリッ。」