昨年地区予選で1位通過を果たした立海は、所謂シード校である。
だから通常は4回勝てば地区予選優勝であるが、3回で良い。2回戦から試合に参加する。
だから立海勢が会場に向かうのは始まってから1時間程度遅め。
ノーシードの学校が1回戦を行い終えるか、後ろにずれ込んでまだ何校か行っているかという所で、
もうすっかり場が暖まっている頃に合流する事になる。
「おおおー!なんかすごーい!」
「何その頭の悪い感想。」
「にゃんだとう!?」
「でも分かる気もするw」
「雰囲気が独特ですよね・・・」
幸村は何度も試合してきた。
その全てとは言わないにしても、特に千百合はそうだが、ある程度はビードロズだって応援しに行った。
だが、それらのいずれとも全く別の熱気が今此処にはある。
皆此処を、ウイニングロードにしたがっているのだ。
この大会で勝っても、其処で終わりじゃない。
その先へ。そしてその先で勝ったら、更に又その先へ。
この国で1番の栄冠を頂く、その為に。
「ドキドキしてきました・・・」
「ねー!私達何にもしないのにねー!」
「何もしないからこそじゃない。」
「ああそれもあるかもw」
大舞台と言うのは緊張する。
立つ人間は勿論緊張するけれど、見てるだけというのも別種のしんどさがある。
どんなに勝ってほしい、頑張ってほしいと思っていても、自分は一切手出しできないというのも辛いものだ。
「あ!ねーねー、あっち!ほら、あれあるよ!あのー、えー、」
「トーナメント表でしょ。」
「どこと当たんだろーね。」
「もう結果の方出ているでしょうか?」
4人が近づいて行くと、丁度タイミングよく1回戦の結果が書き込まれたところであった。
「おお!ねー紫希ぴょん、あれなんて読むのー?せりょう?」
「瀬良(せら)中学校、と思います。おそらく。」
「聞いても俺達何も知らないけどねw妹、聞いた事ある?」
「全然。というか、そもそも話に出て来る学校とかほとんどないし。」
この中でどこか、ちらとでも耳にした事のある学校あるかな・・・などと千百合が目で学校の名前を追っていると、俄かに辺りがざわつき出した。
「え?何何ー?」
「どうかしたんでしょうか・・・」
「何か空気変わったな。」
「・・・来たかも。」
「「「え?」」」
千百合が言うが早いか、誰かが叫ぶ声が聞こえた。
「王者立海だ!」
その言葉に、ああ、到着したのかと思うより。
後で様子を見ようとか、何か一声とかそういう事より何より先に、ビードロズは圧倒された。
おそらく他の者も、一目見た時に同じ事を感じた。
ただ歩いている、それだけなのに、言い知れぬ何かがピリピリと肌を刺激してくるようなこの雰囲気。
イエローのジャージに身を包んで、何物にも臆せず振舞うその姿。
正しく、王者。
「幸村、オーダーの話がしたい。意見を聞かせてくれるか?」
「はい。それは全く構いませんが、真田と柳の意見も個人的には聞きたいです。構わないでしょうか?」
「ああ。では、30分後にオーダーの発表を行う!此処で一度解散とするが、レギュラーは時間には戻ってくる事!
それ以外の者は自由に観戦して構わないが、他校とのトラブルには十分注意し、不用意な行動、言動は慎んで行動する事!」
「「「「「はい!」」」」」
至って普通の事を行って言ってるだけなのに、其処彼処から「オーラある」「強そう」「流石」とか囁かれているのが聞こえる。
流石ってなんだ流石って。流石という程の事はまだしてないぞ。
「・・・かっこいー。」
「何か、思わず黙ってしまいますね。息を呑んでしまうというか。」
「すげえなー。」
(・・・・あんな精市初めて見る。)
幸村に限らない。
真田も、皆も、学校で話す時とは違う。
部活を見学する事もあったけど、それとも違う。
勝つしかない道を歩み始めた者達としての顔つきを、4人は初めて目の当たりにするのだった。