赤潟第三中学校。
此処はかなりクセの強い学校であった。
具体的に言うと、他に類を見ないダブルス特化型学校なのだ。
全国に通用する「ダブルスの」選手を育てる。
大会でも、団体や個人戦はそこそこにダブルスでの優勝を狙う。
とはいえ、ダブルスは団体戦でも5試合ある内の2試合を占めている。なのでダブルスで2つ勝ってしまえば、後はシングルスで1勝出来れば勝ち上がれるので、地区予選では上位に名を連ねる事も珍しくなかった。
そして今年の立海は、3強の存在でレギュラーのメンバーが大きく変わった。
レギュラー決めの過程で、ダブルス選手としての能力は然程拾われない為に、今年ダブルスとして出場予定だった3年生は落ちてしまったのだ。
結果として、個人としては強いが、ダブルスと言う意味ではコンビネーションにいまひとつ欠ける。というメンバーが出揃ってしまった。
勿論そうは言っても個々の能力は高いので、急造コンビであっても滅多な事で負けはしない。
だが、赤潟第三中学校だけは別だ。
此処は負けても可笑しくは無い。ステータスをダブルスに全振りする事に一かけらの躊躇いもない、ダブルスに心血を注いだ学校である。
幾ら立海の3年生といえど、ダブルス専門ではないコンビでどこまでやれるか。
皆が固唾を飲みながら見守った、ダブルスの結果は。
「ゲームセットアンドマッチ、赤潟第三!7-5!よってこの試合、赤潟第三中学校の勝利とします!」
「ゲームセットアンドマッチ、赤潟第三!7-6!よってこの試合、赤潟第三中学校の勝利とします!」
「うおおお・・・」
「うわうわー!負けちゃったよー!」
「大丈夫でしょうか・・・」
「大丈夫。次からシングルスだから。」
「そ、そーだよね!ゆっきー達が負ける筈ないよ!頑張れー!」
そうは言うが、観客席にはもしかしたらもしかするかも、という空気が蔓延していた。
それを振り払うように、ビードロズ達は一生懸命声援を送るのだった。
「すまない・・・」
部長の佐川が頭を下げた。
「悪くはありませんでした。良く食らいついていましたよ。」
これは幸村の本心だった。
あの、ダブルスでのみ話をするなら無敵と言ってもいいかもしれない、と囁かれる赤潟第三に、急造コンビでタイブレークまで持ち込んで見せたのだ。
だが佐川は自嘲気味に、ふっと笑った。
「・・・負けは負けだ。惜しかろうが惜しくなかろうが、1敗には違いない。」
「・・・ええ。そうですね。」
「幸村。」
柳が幸村に声をかけた。
その隣には真田も居る。
「相手のオーダーを見たが、此方の予想通りだ。」
「そうかい。という事は・・・」
「ああ。シングルスの試合2つは、試合にもならんだろう。」
ダブルス2つは絶対取る。
後はシングルスのどこかで勝ちを取るだけ。
これが団体戦における赤潟第三の勝ちパターンである。
しかしダブルス特化型であるが故にシングルスは慣れない選手が多く、ウィークポイントにもなっていた。
が、今年は違う。
シングルス専門の優秀な選手を、スカウトで引っ張ってきたというのがもっぱらの噂だった。
その選手と、ダブルス2つで勝ちあがる。
今年の赤潟第三は、どうやら本気だとまことしやかに囁かれていた。
「シングルス1、2は捨ててくる。間違いない。」
「シングルス3で、その選手を使って最短で3勝を決める、か・・・」
「柳の計算通りだな。」
「ああ。シングルス3・・・頼んだぞ、幸村。」
「勿論だ。」