お察しの通り、立海対赤潟第三の試合はその後、シングルスで完封勝利を納めた立海が決勝進出となった。
今はお昼休憩。
ご飯を食べたら、決勝戦だ。
「ご飯食べよー、ご飯!ご飯ごはーん!」
「うるさい。」
「あて!」
「紫希そっち、もうちょい引っ張ってw」
「こうですか?」
こういう日は、皆それぞれお弁当を持ってきたりはしない。
各々の親が、「皆で食べなさいね」とそれぞれ手分けして、おにぎりとかおかずとかデザートとかを詰めてくれるので、隅にレジャーシート敷いてそれを全員で囲む。
「お腹空いちゃったー!やっぱり早起きするとお腹空くのも早いよねっ!」
「ふふふ。そうですね、今日は座って授業を受けてるわけでも無いですし、尚更ですね。」
「幸村は?来れんの?」
「来るって。皆で。」
じゃあ2枚目のレジャーシート広げないと、と用意の良い棗が鞄を漁った丁度その時、件の皆が来た。
「やあ、皆。」
「ゆっきー!皆ー!お疲れー!」
「ふふふ。有難う五十嵐、でも食べ物のある所で騒ぐのは止めようか。」
「う・・・はーい。」
「お疲れ様です、真田君、柳君。」
「何、疲れたという程動いてはいない。」
「ああ、試合展開も概ねデータ通りであることだし。」
「そうなんですか?」
「強いていうなら、瀬良中とのシングルス1、2は少々楽に決まり過ぎたが。」
「戦う前から敗北を認めるなどと・・・たるんどる!」
「ま、まあまあ・・・」
「丸井、桑原、お疲れ。」
「ああ。まあ俺達は出てないし、何もしてないけどな。」
「なあ、それ誰の?ちょっと貰って良い?」
「いや。」
「自分の分食べてからにしろよ・・・」
「おい大丈夫かw」
「ああ、ちいとばかし眩暈がするだけじゃ。」
「危ねえよwお前はもう少し暑さに強くなれw」
皆でわいわいしながら思い思いに弁当を広げる。
此れだけ見てたら普通に普通の可愛い中学生なのに、テニスが関わると急に威圧感が増すのが何人もいるから不思議だ。
「唐揚げ欲しい唐揚げー!」
「うるさい。」
「だって千百合っち達のお母さんの唐揚げ美味しいんだもーん!」
「マジ!?俺も欲しい!」
「自分の分を食え。」
「唐揚げー・・・」
「寄せ箸をするな!たるんどる!」
「うおうっ!?しまった、つい・・・」
「ほう、寄せ箸という言葉は知っているんだな。」
「俺達が教えたんだよ。ある程度は知っておかないと、見苦しいからね。」
「寄せ箸・・・?」
「箸のマナーじゃ。色々あるぜよ。例えば移り箸ちゅうのは皿の上で、どれを掴もうかと箸を彷徨わす動作の事で・・・」
「嘘です、嘘です!桑原君、信じないで下さい!」
「えっ!?」
「お前w知らんと思ってこんな嘘吐くなよw」
「プリッ。」
「あの、今仁王君が仰ったのは迷い箸と言います。移り箸というのは、一度取りかけた物を戻して他のを取る事で、」
「貴方達。」
涼やかな声が、一同の会話を遮った。
声をかけたのは、1人の美女だった。
眼鏡をかけて、まだ若く、いかにも大人の女性と言う雰囲気だ。
「楽しんでいる所に、ごめんなさい。其処の貴方。・・・幸村、精市君ね?」
彼女の視線は眼鏡越しに、真っ直ぐ幸村を捉えた。
「・・・はい。僕が幸村ですが。」
幸村が肯定すると、彼女はにっこりと笑った。
「少し、時間を貰えるかしら。そう長くはかからないわ。ほんの15分少々よ。」
嫌です。
と、思いはすれど言えないのが辛い所。
「・・・分かりました。」
「助かるわ。有難う、幸村君。」
幸村はあっさりと箸を置いて、美女について行ってしまった。