「なんだと!!」
真田の声は、相手のベンチどころか観客席まで響いた。
「お、落ち着け真田!な?怒ったところでどうしようもないって!」
「しかし!」
「気持ちは分かる。幸村・・・本当なのか?」
佐川が真田を手で制しながら尋ねると、幸村は笑みの消えた顔で頷いた。
「勿論、本当かどうかはまだ分かりません。こちらを油断させる為のそういう嘘、という場合も考えられますが、少なくとも僕がそう言われた事は事実です。」
「ふむ、通過は出来るから元より勝つ気がない、か・・・」
柳は思案を巡らせる。
優勝しなくても次の大会に勝ち進めることは可能である。
だから元々勝つ気は無い、負けるつもりだから優勝の座は譲るという華村の言葉は、立海の部員達をどよめかせた。
とりわけ憤っているのは、真っ向勝負を好む真田である。
「たるんどる!勝ちを譲るだと、無礼者めが!」
「落ち着けって!無意味にそういう事してるんじゃなくて、レギュラーを見せないっていうあっちの作戦なんだから、」
「よしんば、その点は作戦であるとしてもです!例えレギュラーは出さないとしても、負けるつもりで向かってくるとはどういう了見ですか!」
「弦一郎。東雲副部長に怒鳴っても何にもならないよ。」
「む!・・・すみませんでした。つい頭に血が上って。」
「いや、良いさ。」
「俺達だって、腹は立ってるしな。」
わあい、これで楽して優勝出来るう、なんて喜ぶような者は此処には居ない。
こっちは勝ちにきてるのだ。勝たせて貰いにきてるわけじゃない。
「・・・佐川部長、頼みたい事があります。」
「なんだ?」
「俺をシングルス3に入れて下さい。」
腹が立って腹が立って仕方がない。
いい加減にしろよどいつもこいつも。
1試合目も2試合目も、決勝戦でもやる気のない奴ばっかり出てきやがって。
戦って勝ちたいのに、勝負を放棄した奴ばかり。
もううんざりだ。引導を渡してやる。
「・・・分かった、そうしよう。柳とお前を入れ替えるから、シングルス3で出ろ。柳はシングルス2だ。皆もそれで良いな?」
「「「「「「「はい。」」」」」」」
真田は頭を深々と下げた。