Why is that 1 - 6/7


「有難うございましたー。」

宍戸のコンビニ弁当に箸を2膳付けて貰い、事無きを得た可憐と昼食をゲットした宍戸は、今から集合場所に戻る。

「有難う、宍戸君っ!私、おにぎりか何か買うしか無いかなーって思ってたよっ!」
「別に良いって!俺は自分の分買っただけだし。会場も近いし、彼処のコンビニ覚えておくか。」
「だねっ!」

そう、宍戸の言う通り、コンビニは幸いにも本当に近くにあった。
こうして軽く会話しながら少し歩くだけで、ほら。もう会場の入り口に・・・


「良いから来なさいよ!」


「うんっ?」
「お?」

可憐と宍戸は足を止めた。
目の前には、案内板の前で言い争っている少年と少女。

「なんでだよ!俺関係ねえだろ!」
「ないけどあるの!」
「ねえよ!離せよ!」
「此処まで来たんだから良いじゃない!」
「此処までって約束だったから来たんだよ!」

「なんだあれ?」
「トラブルかなっ?」

所謂喧嘩とは違うようだが。
そう思いながら見ていると、少女の方が此方に気付いた。

「あ!」

「えっ!?」
「ん?」

「なあ、お前ら氷帝テニス部だろ?」
「ちょっと!」
「良いから黙っとけ!」

何なんだ、という思いで顔を見合わせる可憐と宍戸に、少年は少女を捕まえながら言う。

「なあ、此奴試合見たがってんだけど、来た事無いから分かんねえんだ。案内してやってくれねえ?」
「嫌よ私!」
「俺だって嫌なんだよ!お前と違って興味もねえのに、こんなスマホの見にくい屋外に長時間居られるか!」
「居なさい!」
「御免だ!」

こっちに話しかけるかそっちで話するかどっちかにしてくれないだろうか。
全然話が見えない。

「あ、あのー・・・2人は、氷帝の試合を見に来たの?」
「放っといて!」
「ええっ!?」
「おい、そっちから言って来たんだろ!なんだよその言い草は!」
「千歳!いや違うんだよ、此奴が見に来たんだ。俺は興味ないから、入り口迄付き添うって約束だったのに・・・」
「此処まで来たら一緒でしょ!中まで行くの!」
「知るかよ!」
「あ、あう・・・」

事情は朧げに掴めたが、さっきから話が全然進まない。

「と、兎に角!ええと、千歳、さんっ?千歳さんは、私達に案内されるの、嫌・・・?」
「嫌!」
「あ、そう・・・」

にべもない。

「おい!お前もうちょっと可愛げのある人見知りの仕方出来ねえのかよ!」
「知らない人怖いもん!嫌だもん!だから嫌!」
「あのなあ・・・」
「まあまあ、宍戸君っ!ええとあのう、案内はするから、千歳さんだけじゃなくてそっちの子も一緒に来ないっ?」
「嫌。外怠いし。」

その発言に宍戸はぷっつんした。

「お前らいい加減にしろよ!」
「し、宍戸君っ!抑えて、」
「抑えてられるか!さっきから黙って聞いてりゃ、あれが嫌だのこれは怠いだの文句ばっかり言いやがって!お前ら2人揃って激ダサだぜ!」
「う・・・」

宍戸の正論に、少年ーー沖野は怯むが、木崎は怯まない。

「私文句なんか言ってない!」
「言ってんだろうが!」
「私最初から、あんた達と行きたくなんかないもん!案内なんか頼んでない!拓未が勝手に言っただけなんだから!」
「あのなあ・・・!」

宍戸はあまり気が長い方では無い。
相手の言い分に納得出来ない時は尚更である。
しかし、対する木崎も気は短い。

今回この場で、先に我慢の限界を超えたのは木崎の方であった。

「ーーーもう良い!」

木崎は、ダン!とその場で片足を踏み鳴らした。

「えええっ!?もう良いって、」
「あんた達の案内も要らないし、拓未もついて来なくて良い!1人で行けば良いんでしょ、1人で行けば!」
「ええええええっ!?」

狼狽える可憐。
根が真面目で優しい宍戸は、おう行け行け!清々するぜ!という気持ちと、マジか迷うくらいなら連れて行くべきかな・・・という気持ちとでせめぎあい。

沖野はというと。

「だから最初からそうしろっつってんじゃん。」
「そんな!?」
「おい、それは流石に、」
「っ・・・あーあー、そうするわよ!悪かったわね、付き合わせて!」
「マジでそれ。」

沖野は今、木崎が何を考えてるのか手に取るように分かる。

迷子は嫌だ。
でも人見知りと意地っ張りを併発して居る身としては、沖野無しで知らない人+後自分1人という図の方がもっと嫌なのだ。
それだったら1人で彷徨った方がまだ幾らかマシーーーとか、そんな所だろう。

人見知りなのは分かって居るから、案内を誰かに頼むところまではやってやるかと思ったらご覧の有様である。

「拓未なんかもう知らない!」
「ああっ!?ちょ、ちょっとっ!?」
「・・・くそっ!」

木崎は走って行ってしまった。

「おい!桐生!」
「は、はいっ!」
「彼奴を連れ戻してくるからな!其処に居ろよ!動くなよ!」
「ええっ!?」
「良いか、絶対だぞ!」
「そんな・・・!」

此処に不案内な沖野しか居ない状況で、可憐が2人で思った通りの所へ行けると思うかと言われたら全然駄目な気しかしない。

面倒見の良い宍戸は、可憐の事も木崎の事も放っておけなかった。

「宍戸くっ・・・ああ、行っちゃった。」
「・・・・・」
「ううんと、ううんと、まあ宍戸君の方が足が速いから、すぐ追いつくかなっ?ええと、どうする?折角だし、見ていかない?」
「嫌。」
「えええー・・・」
「千歳は多分捕まらないし。」
「えっ!?」

なんでだ。
とか思ってる間に、沖野はもう帰ろうとしていた。

「千歳の事放っておかないでいてくれるのは有難いけどさ、彼奴基本我儘で子供だから。」
「ちょっ、」
「構うのもほどほどにしとかないと、おたくらが面倒な事になるぜ。」
「そんな、そんなの冷たくないかなっ?友達なんでしょっ?」
「従兄弟だよ。身内だからそこそこは仲良いけど、そうじゃなかったらそもそもあんな女子に寄り付かないって。」

親戚で小さい頃から知って居るから、沖野は木崎の良い所も悪い所も知っているが、もし赤の他人だったら早々に面倒な女子認定して、良い所をわざわざ探そうなどとは思わなかっただろう。

(ま、だからこそ、その良い所をわざわざ探してくれるクラスメイトとやらに、ご執心なんだろうけどさ)

ただそれなら、そのクラスメイトとやらをピンポイント狙撃してアプローチするより、自分がもう少し素直になる方が早い気がするのだけど。
まあ性格的に、それも出来ないんだろうなと知っているけど。

「取り敢えず俺帰るわ。用事済んだし。」
「えええっ!?ま、待ってよ、」
「巻き込んで悪かったけど、もう放っといて良いよ。千歳は千歳でなんとかするだろ。じゃあな。」
「待って!待っ・・・」

「桐生!」

沖野を追いかけたいけど、宍戸から動くなと言われたのを思い出して可憐は足が止まった。
その間に沖野は行ってしまい、代わりに宍戸が戻ってきた。

「あっ、宍戸く・・・あ、あれっ?千歳さんは?」
「駄目だった。彼奴、女子トイレに逃げ込みやがって・・・!」
「あ!ああ・・・」

如何に足が速くても関係ない。
男である以上、原則其処には入れないのだ。

「前で待ち伏せするわけにもいかねえし、っつうか俺がいる限り出て来ねえだろうし。一先ず戻って来たんだけどよ。」
「そっか・・・私が行けば良かったね。」
「いや、それは良い。」
「どうしてっ!?」

そんな事をさせて見ろ、二次災害は避けられまい。
あくまで何故かと大真面目に聞いてくる可憐に、宍戸はちょっと可笑しくなって吹き出した。

「ところで、もう1人は何処行ったんだ?」
「あ、帰っちゃった・・・」
「はあ!?」
「1人で行くって言ってたからそれで良いって・・・私達も、巻き込んで悪かったけどああ言ってるから放っといて良いって。」
「なんだそりゃ・・・」

とは言っても、現実問題もうどうしようもない。
沖野は去ってしまったし、木崎も多分、今から可憐を伴って件の手洗い迄行ってももう居るまい。

「はあ・・・しょうがねえな、取り敢えず戻ろうぜ。」
「うん。」
「あーあ!無駄に腹減っちまったぜ。」
「そうだね、お腹空いたねっ!」

改めて集合場所に戻る可憐と宍戸だが、2人内心思って居ることは同じ。

木崎は大丈夫だろうか?