「紀伊梨、ごめん!」
パン!と手を叩いて、紀伊梨のクラスメイトは勢いよく頭を下げた。
「にゃにがー?」
「今日私ら日直じゃん?5限の日本史の資料、私持ってくるって言ってたけど、放課後のミーティング昼になっちゃって・・・!」
「あ!じゃあじゃあ、私が持ってくるでござるよー!」
「ありがと!ごめん!代わりに放課後の日誌と花瓶の水やりは、交代で私が引き受けるし!」
「おっしゃ!任されよ!」
「ほんとありがとー!」
こうして紀伊梨は、昼一杯教室で遊ぶ予定だったところを変更し、あの歓迎会の時に拠点として使った社会科資料室へと行く事になったのだった。
それより僅かに遅いタイミングで、D組の幸村は柳と和やかに昼食を摂って居たのだが。
「幸村!」
「ああ弦一・・・弦一郎、後ろの彼は誰だい?」
明らかに真田が連れてきた風である、知らない男子。
「お前に用があるらしい。幸村はどいつだと、其処で俺に尋ねてきたのだ。」
「俺に?用事?」
幸村が目をパチクリさせて自分を指差すと、後ろの男子は頷いた。
「ごめん、忙しいのは知ってるんだけど・・・」
「ふふ、構わないよ。今日は取り立てて用事もないし。場所を変えようか?」
「ああ、頼む。」
「分かった。じゃあ弦一郎に柳、俺は少し席を外すから。」
「ああ。」
去って行く2人を見送って、柳と真田は席に座った。
「・・・それで、用とはなんだったんだ?」
「俺も聞いとらん。もしやすると、他部からの引き抜きの類かも知らんが。」
「いや・・・それは無いな。彼は帰宅部だ。」
以前話に出たが、柳は男子のデータはおおよそ一通り網羅している。それによると、さっきの男子はそもそも部活に入っていない。
「そうなのか?」
「ああ。他に取り立てて変わったデータも無い。クラスは・・・B組か。」
紀伊梨と丸井と、同じ。