「ええと・・・あった。これがサルデニアの地図だよ。」
「おお!」
「地図を取ってこいと言われたなら、せめて地形位は確認してからおいでね。」
「うぐ・・・はーい。」
かくて紀伊梨は、次の時間にアフリカの地図を間違えて持って行かなくて済んだ。
「・・・ねー、ゆっきー?」
「さっきの事かい?」
「うん。」
と言いつつ、切り出した紀伊梨も何を話せばいいのか良くは分かって居なかった。
「ちょっと、悪い事をしたかな。」
「んお?何が?」
「五十嵐に確認を取ってないのは俺も同じだからね。五十嵐が本当はどう思ってるかなんて誰にも分からないのに、如何にも脈が無い風に言ってしまったから。俺が諦めさせたみたいになってしまったかなって。」
とは言うが、実際好きな子の友人に協力を仰いでそれが駄目だったからじゃあもう諦めるよなんて、幾らなんでももうちょっと頑張れよと、いかな幸村でも思わざるを得ないのだが。
「・・・んー、でも良いよ。」
「良いのかい?」
「うん。私柊君の事は多分好きとかじゃないんだろうなーって思うし。」
扉越しで偶然とはいえ、聞いてしまった自分に寄せられる好意。
でも、紀伊梨の心は動かなかった。
ちょっとドキッと、した事はした。
そういう意味で好かれているのだとはっきり分かって、一瞬だけ胸が高鳴った。
でもそれだけ。
じゃあどうする?もし本当に告白されていたとしたら、なんて返事する?と言われると、私も好きとは絶対に言えない。
幸村とのやり取りを聞いていても、なんだかどこか他人事のようだった。
そうなんだ、そうなんだ、と、納得したようにそればかり内心で呟いていた。
「ゆっきーは、ああいうのが良いなーって思うの?」
「ああいうの?」
「私の彼氏に!あのー、えー、たんたん、たんか?切れる?人?啖呵ってなーに?」
「ああ、その話か。啖呵って言うのは、鋭くて強い調子の言葉の事だよ。」
「へー!そう言える人が似あう?」
「いや、別に啖呵じゃなくても良いんだ。要は、俺の言いたかったのは、怯まないで欲しいんだよ。誰からなんと言われようと・・・それこそ、俺や皆が猛反対しようと、五十嵐が自分を好きでいてくれるなら、自分も五十嵐を愛し抜きますって。そう言えるくらい、強い気持ちと度胸と根性があれば良いなっていう話さ。」
これは紀伊梨に限った事でもない。
いつか紫希に彼氏が出来ても、棗に彼女が出来ても、幸村はその誰かさんに同じ要求をする。
勿論最終的には幸村に口出しする権利などないが、あくまで幸村の希望としては?と言われたら迷うことなくそう答える。
譲る気は無い。例え相手は女子であってもだ。
「・・・それってけっこー難しくねえですか?」
「そうだね、そうかもしれない。でも俺はそう思う。」
大事な大事な親友達だから。
だからその恋人になるのなら、自分よりももっとずっと大事にしてくれないと困るじゃないか。
だって何時かは、ずっと一緒に居られなくなる日々がやってくるのだから。