今日の昼休みは、結局忍足は来なかった。
どうやら話の長い先生に捕まったらしい。
だもんで可憐は忍足に会わぬまま、部活・・・前の掃除にもつれ込んだ。
「はあ・・・」
「ぶつくさ言わずにやれ。」
「はーい・・・」
6限終了と、部活開始までにはそれなりの時間がある。
無論、その間は移動、準備、余ったら休憩に使うのが定石だ。
その時間を今、可憐は部室の掃除に当てている。
これは地区予選の時、勝手な行動を取った挙句収穫0で怪我だけ持って帰ってきた可憐への罰則であった。
宍戸も今頃、別の部屋の掃除をしているだろう。
「・・・ねえ、跡部君っ?」
「あーん?掃除ならきっちり後一週間して貰うぜ?」
「縮めて欲しいわけじゃないよっ!そうじゃなくて、ちょっと聞きたい事があるのっ!」
「なんだよ。」
「恋って、何かな?」
意見は多い方が良い。
そう思い今日可憐は方々にこの質問をして回ってるわけだが、跡部のそれは正直凄く興味がある。
この俺様何様帝王様は、恋というものをどう捉えているのだろうか。
「・・・なんだ、いきなり。」
「ほら、千歳ちゃんって、片思いしてたでしょっ?私、あそこまで人を好きになった事ないから・・・参考にと思って。」
「くだらねえ、そんな事考えてる暇があるんなら手を動かせ。」
そう言いつつ、目線が左斜め下を向く跡部。
考えてくれているらしい。
「・・・恋っつうのは。」
「うん。」
「思った通りにするのが1番良い。」
思った通りに。
自分の心の喚くままに。
「誰かに強制されるもんじゃねえ。したいようにしろ。」
そう。誰にも強制されるものじゃない。
友達にも。家族にも。
例えそれが、自分であってもだ。
「しろって、別に私自分の事として聞きたかったわけじゃ、」
「なら、いつかする時の為に聞いとけ。俺様からの有難い助言だ。」
「うううん、そうなのっ?」
でも跡部も恋愛に関しては経験豊富そうだし、その跡部が言う事だから心には留めておこう。
「・・・そういえば、跡部君は好きな人居るのっ?」
「居ねえ。」
一刀両断である。
「そうなんだっ?」
「居るように見えんのか?アーン?」
「だって跡部君って引く手数多だし、絶対女の子に不自由しないと思ってっ。」
「まあな。」
そこは肯定する王様。
でも、何故か納得しか出てこないのが凄い所。
「だが、確かに良い女も周りにはいるが、好きかと聞かれると違うと言わざるを得ないな。」
「ふうん・・・跡部君の好きな人かあ・・・」
「気になるか?」
「うん、凄くっ!どんな人なら、お眼鏡に敵うのかなあ、って。」
「ハッ。俺様が好きになるような女だぜ?世界一の女に決まってんだろうが。」
「あははっ!うん、そうだねっ!」
いかにも跡部らしい。
なんでも自分の思った通りに。
手に入れるなら、1番が良い。
笑って掃除に本格的に戻る可憐は気づかない。
背を向けた跡部が、苦しそうに目を伏せている事に。