Solicitation:1st game 2 - 1/6



何だか一部に遺恨が残った気もするが、どうにか柳生はクリアした。
次。Aチーム3人目である。

「向こうで残っとるのは、真田に丸井に春日だな。」
「そうじゃの・・・桑原、ここいらで出るか。」
「俺か。分かった、良いぜ。」

桑原は真面目な性格である。
反面こういうゲームになると、精神攻撃の煽りをまともに食らう危険がある。
桑原を知りつくしている丸井や、ジョーカーの紫希が出る前に、柳生の直後に置いた方が良い。

「行くぞーw」
「来い!」

パシュ。

(こういうのはあんまり自信はないが・・・)

三強’Sと違って、桑原にはピンポイントでマスの真ん中を狙うようなコントロールはまだ無い。
だが、真ん中のパネルを含めて右上、右下、左上、左下と範囲を絞る事は出来る。
真ん中の5番パネルは紀伊梨が抜いてしまっているが、それでもまだ3/4は残っているから何処かには当たるだろう。

「・・・そこだ!」

桑原が狙ったのは、大凡右上方面。
返した打球は、2番のパネルをパン!と音を立てて落とした。

「おおお!やったー!」
「問題なく抜けたのう。」
「・・・・」
「柳、何書いてんの?」
「フォームからして、3番パネルを狙った可能性が高い。コントロール練習を考えるべきだと思ったから、メモをな。」
「・・・あんたも厳しいわよね。」

「お疲れちゃんw」
「疲れるのはここからだろ・・・」
「まあねwさてお題・・・あ。」
「え。」
「ごめん。」
「おい、ごめんって何ーーー」

パーラパッパッパー。
と、聞いた事の無い音がした。

「おいなんだその音・・・」
「アタックチャーンスw」
「は?」
「これはちょっと難しいお題が出るよwでもクリアできれば任意のパネルをもう1枚落とせるよw」

なんだそれは。
確かにチャンスと言えばチャンスだが、怖いからやりたくないぞ。

「へえ、そういうのもあるんだね。」
「ええ、これはゲーム性が高まりますね。」
「春日。お前達はどういうものが出るか知っているのだろう?」
「それが、ゲームの中身は棗君が決めたので・・・」
「マジかよ、怖えな。」

一番怖いのは桑原であろう。
自分がやらねばならないのだから。

「さあ行くぜw」
「なるべくライトなので頼む・・・」

【任意の人を1人選び】

もうこの時点で嫌な予感しかしない。

「なあ仁王・・・・・・」
「却下じゃ。丸井以外から選びんしゃい。」
「だよな・・・」

ゲームの特性上、相手チームからなるべく選ぶのが定石。
とはいうが。

(ブン太は俺からどういう巻き込まれ方させられても、良く知ってる分攻撃にならないからな・・・しかしかといってブン太以外となると・・・)

丸井以外。
というと、幸村。
真田。
柳生。
紫希。

(詰んでる・・・・!)

誰を選んでも穏便には済まない予感しかしない。

「気の毒じゃのう。」
「そう思うならあんたが選ばれてやったら。」
「プリッ。」

しかし、本当に誰かは選ばなくてはならない。
無論、仁王の言う事を無視する事もしようと思えばできるが、生真面目な桑原は「リーダーの為に尽力すべし」の言いつけを守っているのだ。

(取り敢えず、何が出るか分からない以上女子は怖いから春日は駄目だ。男子でも・・・幸村は駄目だな。となると、柳生か真田・・・ああ、ブン太を指名してしまいたい。)

「・・・じゃあ、真田。」
「俺か、良いだろう。」

「おお!真田っち良く当たるねー!」
「まあ、どんな目に遭っても大丈夫そうっちゅう意味で選ばれとるんじゃろうな。」
「そうだろうな。逆に、そういう意味では春日や幸村辺りは選ばれにくい。」
「そうね。選ぶ側に良心があればの話だけど。」
「ケロ。」

「決まったかw行くぞw」

【ビンタをする】

「・・・・・」
「・・・・・」

「おう!?え、待って待って!これは?桑ちゃんが真田っちに?するんだよね?」
「そうだ。桑原がする側だ。」
「ほう。これは面白いぜよ。」
「桑原やれ。遠慮は要らないから叩き込んでやれ。」
「黒崎、お前さんも容赦ないナリ。」

「女性に当たらなくて不幸中の幸い、というところでしょうか?」
「女子だった場合には、また別のお題があるんじゃないかな。違うかい、春日?」
「いえ、幸村君の言う通りです。男子女子で分けるお題もあると言うような事を、ちらっと言ってましたから・・・」
「まあ、流石に女子に向かってビンタは辛いだろい。」

かといって男子だから辛くないかと言われると辛いのだが。
というかこの場合相手が真田というのが辛い。

「構わん、やれ。」
「い、良いのか・・・?」
「無論だ。そういうルールである事は分かっているし、お前に非は無い。打たれたからと言って、恨んだりする気もない。」
「・・・・・」
「俺はそれほど軟弱ではない。来い!」
「・・・じゃあ。」

桑原は振りかぶって、腕をスイングした。

パン!と乾いた音が辺りに響き、綺麗に入った、と思われた。
これは桑原の優しさであろう。
下手に躊躇されるより、いっそ振りぬいて貰った方がきっと楽だ。

と。
思われたのだが。

「・・・桑原。」

低ーい声が真田の喉から零れた。

「お、おい、悪いとは思うけどしょうがなかーーー」
「なんだ今の温いビンタはあああ!」
「え?」

待って、何かおかしくないか、と桑原が思うより早く真田が桑原の胸倉を掴んだ。

「おい待てーーー」
「やるならもっと徹底的にやらんか!大体お前は部活でもそうなのだ!身体能力には光る物を持っておきながら、攻撃に転じず相手の様子を見てばかりで、そんな事で天下が取れると思ってるのか!」
「いやそのーーー」
「良いか!戦の基本は己の肉体と、矛と盾だ!左手に盾を持っておきながら、右手にも盾を持っているような戦い方でどうするつもりだ!」
「あのーーー」
「日本男児になったのなら、もっと攻める事を覚えろ!そもそも、」

「あいつのああいう所本当怠い。」
「まあまあ千百合ちゃん・・・真田君らしいじゃないですか。」
「ふふっ。弦一郎は、生真面目だからね。」
「あれって、生真面目って言わないんじゃない?」

「確かに、打たれた事は気にしていないようですが・・・」
「代わりに、別の事が気にかかるようだな。」
「あの厳しさを人にも押し付けて来る所が怠いのは、黒崎に同意見じゃ。」
「仁王君はもう少し、自分に厳しくなっても良いのでは?」
「俺は十分「先月部活中に、テニス部の敷地から姿を消した回数のデータがあるが。見るか?」・・・プリッ。」

「・・・・・・・」

左手に盾を持って。
それなのに、右手にも盾を持ってどうする。

それ、分かる。
凄く良く分かる。
そんな事してたって何にもならないだろうという意見は、すんごくすんごく妥当だと思う。

でも、桑原の気持ちも分かる。
右手に矛を持ったって、振るのが下手くそすぎてどうにもならなくて。それならもういっそ両手に盾持ってた方が良いんじゃないかなっていう、その気持ち。

分かる。
自分は両手に矛しか持てないから。

「ブンブン?」
「ん?」
「どしたのー?ぼーっとしちゃってさー?」
「いや、別に。それより、お前指名されなくて良かったな。」
「んお?何が?」
「春日が、女子なら女子用のお題があるんだろうみたいな事言ってたけど。でももしそうじゃなかったら、女子ならビンタとかは避けてえだろい。お前みたいなのは特に。」
「あー!確かにビンタはやだなー!痛いの嫌ーい・・・って、私?なんで?」
「あのな。ステージに立つんだったら、顔は普通以上に気をつけろい。」

今はバンドの活動が楽しくてそればかりやっているが、ゆくゆくはテレビに出るんだお!と紀伊梨が夢を語って居るのも知っている。
大体女子と言う時点で顔に傷がつくのは避けるべきだけれど、テレビに出たいとか言ってるなら尚更だ。

ただでさえ跳ね回ってはずみで転んだりしてるんだから、もっとその辺落ち着いて生活しろよ、の意を込めて丸井はちょっと紀伊梨の頬を指で突いた。