Solicitation:3rd game 1 - 3/5


『ピーンポーンパーンポーン♪泥棒の真田君が捕まったよーw』

「マジか?早くねえ?」
「ああ。まだ始まってから10分位なのに・・・」

丸井と桑原は中庭に居た。
ここなら背の高い雑草が身を隠してくれるし、逃げる時も袋小路になりにくくて良いなーという考えからである。

「幸村君辺りに見つかったのか?」
「かもな。まあ、挟み撃ちされたとか、運悪く逃げた先行き止まりだったとか、色々パターンがあるけどな。」

敢えて言うならトラップに引っかかったのである。
そのトラップが至る所に隠されている事を2人はまだ知らない。


ガサリ。


「ん?」
「お?」

葉の音がした。
近い。しかし隣などではない。

そう、方向としては、上ーーー

「へっへー♪」

2人が見上げた木の上には。紀伊梨がにこにこ顔で笑っていた。
そしてそのまますう、と。

息を吸う。

「おい・・・」
「まさか・・・」


「見いいいいいつけたぞーーーーーー!」


「やべえ!」
「逃げろ!」

誰にも負けない声量を持つ紀伊梨は、鬼であると同時にレーダーでもある。
視認出来る範囲に泥棒が居ればサイレンを鳴らし、他の仲間に現在位置を伝える。

「待てー!逃がさないかんねー!」

「おい!彼奴足早いぞ!」
「だから言ってんだろい!あいつ体育は得意なんだって!」

運動部でも無い女子なのに、丸井と桑原を相手に追いつきこそしないが離されもしない。

「どっちに逃げる?」
「そうだなー、こうなっちまうと開けた所に居ても、他の警察が集まって取り囲まれたりするかもーーーうおおっ!」
「ブン太!?」

「あーーーん、おっしーい!」

丸井の頬の横をさっと掠めたのはボールだった。

(そうか、彼奴ラケット無しで手で投げてやがるんだ!)

手となるボールはこの庭の至る所にゴロゴロ転がっている。
紀伊梨は走っても差が縮まらないと思うや、走りながら「手」を拾って投げる事にしたのだ。

「マジかよ・・・」
「切り替え早いからなー、彼奴。」
「そうなのか?」
「おう。頭柔らかいっていうか、なんていうか。あ、融通って意味じゃなくてな?」

例えば今の場面、紫希なら例え紀伊梨と同等の足の速さがあったとしても、紀伊梨と同じ事はしないだろう。下手にボールを拾おうとして転んだら見失いかねないから、そうなるくらいなら・・・という発想がどうしても出て来る。
それにさっきスピーカーをした時もそう。
千百合ならそれほど効果的とは思えない、とかなんとか言って恐らくやらない。

紀伊梨は「これが出来れば良いのに」と思ったらそれを躊躇いなくやる。
そして出来てしまう。

「一応ラケットは持ってるが・・・跳ね返した所で、防御にしかならないしな。」
「鬼ごっこじゃねえからな。彼奴に当てた所で、警察だから痛くも痒くもないだろい。」

そう。
鬼ごっこだったら、タッチされた瞬間追う側と追われる側が反転するので、わざと当たって反撃出来る。
だが、ケイドロは鬼が変わらない。
一方的に捕まるか、逃げ遂せるかどちらかしかない。

などと考え事なんかして走るから。

「嘘だろ・・・」
「マジかよ!」

逃げる2人の眼前に現れたのは、外壁。
無慈悲にも「ここから先へは進めません」と宣告するL字の石造りの壁であった。

「おお、ラッキー♪」

当然、立ち止まる2人を紀伊梨が見逃してくれる筈もない。