Solicitation:3rd game 2 - 5/5


その足の真下で、紫希は誰かに口を押さえられている。

(・・・何、何が、何がどう、何、)

部屋に隠れようとして。
入ったら、そこは荒れ放題の倉庫で。
そしてどこに隠れようかと思った時、紫希が見つけた物。

それは床下の収納庫への扉だった。

ここに隠れて、扉を閉める時にカーペットで入口を覆えば良い。
そう思って開けたら、勢いよく中に引きずり込まれた。

収納庫内は真っ暗。
状況把握が出来ない。

混乱と恐怖で身動き出来ない紫希の耳元に、囁きが落ちた。

(しー・・・大丈夫大丈夫。静かにしろい。)

ああ、聞き知った声。
紫希の体から力が抜けたのを感じたのか、背後の人間も口から手を離した。

(丸井、君・・・!)

紫希を引っ張り込んだのは丸井だった。

後ろを振り向くと、相変わらず暗いけどちょっと目が慣れてきて、丸井が笑ったのが分かった。

(どうしてこんな所に・・・)
(え?お前も探しにきたんだろい?)
(え?)
(え?)

何か変だ。
話がずれてる気配。

(・・・あの、私仁王君から指示を。)
(おう、俺も。)
(・・・梯子を探す様にと。)
(そう。あれ?こういう所にあるもんじゃねえの?)

ない。
勘違いする気が分からないでもないが。

(廊下のもっと向こうの方にあるのではと・・・)
(マジ?)
(おそらく)
(そっか。じゃあ、此処から出ねえとな。)

しかし出ると言ったって一筋縄ではいかない。

「あれ?おかしいな、何処に居るんだろう。」

((・・・!))

心臓が飛び上がる2人。

そう。
出ようと思ったら、先ず部屋で目下捜索中の神の子様が、何も気づかないで出て行ってくれないと話にならない。

(マジで怖え・・・)
(見つかりませんように・・・!)

そうは願うが、何せ相手はあの幸村である。
もう、次の瞬間にも此処に気づいて扉を開けないとも限らない。

(ああ、心臓が煩い・・・!どうしましょう、幸村君に聞こえてたら・・・!)

そんな事あるわけないだろ、と冷静に考えれば思えても、人間こういう時は自分の鼓動とか、呼吸とか、そういう音が煩すぎる位耳に付く。

(・・・・・・・)

丸井はちょっとだけ床に着いていた手を浮かせた。
浮かせて。

隣に有った紫希の手に重ねた。

「・・・!」

今声が出なかったのは奇跡だと紫希は思った。

暖かい左手。
丸井の手だ。

(丸井君・・・)

真意が分からなくて、そうっと隣を見やる。

閉ざされている収納庫の入口。
カムフラージュのカーペットの所為で、隙間からの光さえ入らない其処を、丸井は真顔でじっと見つめている。

別に余裕があって笑っているわけではない。
でも、紫希みたいに怯えても居ない。

丸井はもう腹を括って居るのだ。

見つかったら、見つかった時。
見つからなかったら、見つからなかった時。

どっちに転ぶかは分からないから、注意は払っておかないといけないけれど。

でも。

(・・・気の所為なんでしょうか。いえ、きっと気の所為なんです、私がそう思いたがってるだけの話なんですけれど・・・)

重ねた手が言ってくれてる気がする。

もし、見つかっても。
見つからなくても。

傍に居るからと。