「ん?」
「今何か聞こえませんでした?」
「いや、別に?」
「気の所為じゃないw」
千百合は紫希と丸井の居る檻の所で、我が世の春を謳歌していた。
見張り。
なんて素晴らしい響きだろう、ここに居るだけで良いなんて。
「あれかな。紀伊梨辺りが何か叫んでんのかな。」
「ええっ!?と、という事は又誰か、捕まってしまうんでしょうか・・・」
「彼奴の大声、敵に回すとすげえ面倒くさいんだよなー。場所は知られるわ、仲間呼ばれるわで。」
「そういう作戦だからね。」
実際は今は、助けて!ヘルプ!SOS!の信号しか送って居ないのだが、流石に其処まで聞こえる様な距離ではない。
~~~~♪
「あーあ。」
「なんだよそのげんなりした顔は。」
「いや、次の指示来たなあと思って。動かないといけないじゃん。」
「怠いってかw」
「あ、あはは・・・」
ずっとこのままここで見張りしてたい・・・とか思いながら、千百合は携帯を開いた。
(・・・・ふうん。)
「なあなあ。」
「何よ。」
「何て書いてあるんだ?」
「言うわけないだろ。」
「ちぇ、引っかからなかったか。」
「紀伊梨と一緒にすんな。」
舌を出す丸井に、なんて失礼な奴だとか思う千百合だが、それとこれと果たしてどちらが本当に失礼なのかは微妙である。
「ああ、居るな。」
「ん?あ、柳。」
足音がした。
振り向くと、先に散会させた柳が立っていた。
「2人共連れて来られたか。」
「・・・まあね。」
「見張りに甘んじていた所悪いが、交代だ。俺が見張ろう、散会してくれ。」
「えー。」
「仕方がない。リーダー命令だからな。」
嫌である、と露骨に態度に出す千百合だが、仕方がない。
先も柳生から指示があったばかりだし。
「あーあ。」
「まあ、頑張ってくれ。」
「へいへい。」
「・・・それから黒崎。」
「うん?」
「場合によってはプランBを頼む事になるかもしれない、との事だ。出来るか?」
出来るか?
出来ないか?
と言われると。
「嫌。」
「ふっ・・・まあそう言うな。柳生が不憫だ。」
「嫌なもんは嫌なの。じゃ。」
千百合は手を振って散策に出かけた。
「プランB・・・?」
「なんかちょいちょい言ってるねwプランなんたらってw」
「なあ、なんだよそのプランBって?」
「さあのう。」
「「え?」」
紫希と丸井の見ている前で、茶髪の鬘がサッと取られて、銀髪が翻る。
「仁王君・・・!」
「マジかよ!」
「プリッ。危ない橋じゃったが、まあなんとか渡れたようじゃのう。」
現状、この2人を逃がすにはこの手しか無いと思われた。
あの「合言葉」とやらだけネックだったが、度重なる観察と今のやりとりで大凡答えが出た。
恐らく、「プラン○」。
AでもBでもなんでも良いが、プランの話題に触れてから別れる事、が合言葉なのだ。
「さあ、あんまりぐずぐずもしとれん。散会じゃ。」
「おう!」
「は、はい!」
「それはそれとして。お前さん、高所が苦手なんだそうじゃな。無理なもんは無理と言いんしゃい、怒らんから。」
「う、は、はい・・・」
「後、捕まったからっちゅうて大罪を犯したような気分にもならんで良い。」
「で、でも・・・」
「お前そんな事にもなってたのかよ。」
「目に浮かぶわw」
あくまで真面目な紫希は、ゲームでも負けると「チームに迷惑をかけた」の概念が先行してしまうのである。
「ま、取り敢えず逃げようぜ。」
「は、はい・・・」
「ああ、待った。1つ言い忘れじゃ。」
「「?」」
「もう時間じゃ。戦法を変えるき、逃げる時はそのつもりでな。」
(・・・はーんw)
棗はニッと笑った。
「オッケー!」
「分かりました。」
「よし。頼んだぜよ。」
「行ってらっしゃいw頑張ってw」
そう言ってひらんと手を振り逃げる3人を棗は見送った。
「・・・戦法ね。」
棗は審判である。
どちらにも肩入れしないし、何を知っていても何も言わないから、皆棗には聞かれても良いとして平気で作戦を口にする。
さっき仁王は戦法を変えると言っていた。
が。
その戦法次第によっては相手の術中にまんまとはまる事になる。
この化かし合いはどっちが勝つかな、と思うと棗はどうしてもにやけるのだった。