「マジかよ・・・!」
中庭の一角で、桑原は今狼狽えていた。
足が速く、スタミナもある桑原は、真田を助けた後一度開けた場所へ行こうと外へ出た。
其処でLINEが入り、携帯を見たのだが。
(春日が閉じ込められた・・・!)
単純に人が捕えられるのも痛いが、もう1つ。
柳生側もトラップを仕掛けている、とゲームを開始してから知った仁王チームにとっては、仲間が捉えられる側になるかもと土台思っていなかった為、ショックが大きいのだ。
(どうする・・・いや!どうするも何も無い!助けに行かねえと、)
「ジャッカル?」
食糧庫までのルートを頭で描いていると、聞き慣れたーーーとても聞き慣れた声がした。
「ブン太!」
「よっ。お前はまだ捕まってな・・・」
「お前!俺を置いて逃げたな!」
口が「あ」の字に開く丸井。
忘れてたなこの野郎。
「お前・・・!」
「まーまー!ほら、な?ちゃんとその後檻から出してやっただろい?」
「それとこれとは別だろ!ったく・・・」
たく、とか言いつつ、確かに出しても貰ったけど・・・とか考える辺り、桑原は甘い。
「まあ、取り敢えず今は良い。兎に角、春日を助けないと・・・」
「春日?を、助ける?隠れてて出られないのか?」
「いや。携帯見たら多分連絡が来てると思うけど、トラップ返しらしい。春日は閉じ込められてる。」
「はあ!?マジかよ・・・うわ、マジだ!」
てっきりさっき自分と床下に居た時みたく、隠れたは良いが出るに出られない状態かと思いきや。
「あちゃー・・・食糧庫、か。」
「どうする?一先ず向かうか?」
「おう。取り敢えず行かないと話にならないだろい。」
丸井の言う事は正論である。
助けるなら、取り敢えずその場に行かないと話にならない。
だもんで2人は警察に注意を払いつつ、食糧庫へ行ったのだが。
だが。
「これは・・・・」
「やべえ・・・・」
食糧庫のドアノブはグルグル巻きであった。
此処のトラップは至ってシンプル。
食糧庫に有ったロープを、入口近くに位置移動させておくだけ、ただそれだけ。
泥棒が逃げ込んだら、それをサッと取って外を縛って、お終い。
極めてシンプルだが、それ故に隙が無い。
「ジャッカル、鋏あるか?」
「いや、今貴重品しか持ってない。携帯、財布・・・鍵に、十徳ナイフでも付いてれば良かったんだが。」
「あー・・・」
多分、警察側は誰か持っているのだろう。
持っていなければ、大真面目にこのぐるぐるロープを解くしかなくなるのだ。
時間が如何程要るか。
「・・・どなたか、いらっしゃるんですか?」
ただでさえ小さい声が、扉に遮られて尚更小さく聞こえてきた。
「春日!」
「よ。大丈夫か?」
「桑原君に丸井君!はい大丈夫です、ごめんなさい・・・」
又謝ってる。
丸井は思わずちょっと笑ってしまった。
「怪我してねえなら良いよ。待ってろい、出してやるから。」
「有難う御座います。でも、出来ます?か・・・?」
「ああ、警察なら心配無いぜ。俺とブン太と2人居るから、最悪見つかっても1人は残って、」
「あ、そうじゃなくて、です。その・・・こちらから扉がビクともしないんですけれど、何か解除に時間がかかる、しっかりしたタイプのトラップではないかと思って・・・」
「ああ・・・」
「まあ、それは?」
その読みは当たっている。
確かに刃物の無い状況でこのトラップの解除は厳しい。
「此方からは何も分からないんですけれど・・・どうなっているんです?」
「ロープだ。かなりしっかり結ばれてる。」
「ま、鋏かなんか無いと厳しいのは厳しいな。」
「ああ・・・」
音からして紐系の何がしか、とは紫希も思っていたが、本当に紐しか使われていないらしい。
しかしそうなると。
「あの・・・」
「うん?」
「・・・時間が、かかりますよね。」
「ああ、まあな・・・」
「でも、別に結び目が見つからないとかそういうわけじゃねえから。解いてったら、その内・・・」
「私を捨てて下さい。」
ぴたり。
と、今正に結び目を解こうとしていた丸井の手が止まった。
隣の桑原は、「はあっ!?」と状況を忘れて声を上げた。
「・・・・・・・」
「おい、何を言い出すんだお前!捨てろって・・・」
「もう、ゲーム終了まで時間がありません。私にかかずらってずっと此処に居ては、桑原君も丸井君も捕まってしまいます。」
そもそも、此処で逃がしたりされない為に、わざわざ終了が見えてきたタイミングでトラップ合戦になったのだ。
一度捕まったら、基本逃げられない。逃げる時間が無い。
「でも・・・」
「本当に、申し訳なく思っています。わざわざ此処まで御足労頂いたのに、結局無駄足になってしまって・・・」
「いや、そういう事じゃないだろ!なあブン太、なんとか・・・ブン太?」
「・・・・・・」
時間が無い。
それは分かる。
ゲームに勝たないと。
それも分かる。
なら。
「・・・さっさと逃がせれば良いんだな?」
「えっ?」
「そ・・・それはまあ、」
それはそうだろう。
しかしそれが出来ないから、今どうするという話になっているのであって。
「どうする気だ?」
「まあ見てろい。」
丸井はスマホを取り出した。