「はあ・・・・」
檻の中で真田は溜息を吐いた。
「どーしたの、真田っち?お顔が暗いですぞっ?」
「当たり前だろう!捕まっておいて、明るい顔をしろというつもりか!」
真田は捕まって、紀伊梨に連れられて檻に来たわけだが、内心自分に対して憤懣遣る方ない。
なんという不覚。祖父に張り倒されても文句は言えないと言うか、寧ろ張り倒して欲しい。己への戒めの為に。
「・・・・・・」
「・・・どうした。腹でも痛いのか。」
「ちーがーうー!そうじゃなくて・・・」
「何だ、言いたい事があるのなら言わんか。」
「・・・ごめんね。」
「?何の話だ?」
「だって、助けて貰ったのに真田っちは捕まっちゃったから・・・」
そもそも、真田が何故捕まったのかと言って、自分が助けを求めたからだ。
普通にしていれば真田が逃げ遂せた可能性も低くはなかったが、自分がお化けだ助けてと騒いだから、真田は逃げるのを止めて寝室までついてきてくれたのである。
柳に連れていけと言われた時、見逃してあげてと紀伊梨は一応食い下がったのだが、やっぱりと言うか敢え無く却下された。
「何かと思えば、そんな事か。下らん。」
「下らん!?」
「ああ、下らん!良いか、俺が捕まったのは俺自身が未熟だったからだ!柳はあの時、ずっと俺を捕まえていたわけではない。騒ぎの真相が分かったら直ぐに逃げる事。それを心がけてさえいれば、あの状況からでも十分逃げられて居た筈だ。つまり、俺がこうして捕まっているのは全て俺の自業自得。俺自身の未熟に由来する事だ。お前が「自分の所為で」などと思う必要は無いし、そうして欲しくも無い。」
此処で紀伊梨の所為で、なんて欠片でも思って見ろ。
真田家次男、真田弦一郎の生きざまとして、恥である。
自分のスペックなら、そんなに絶望的とかどうしようもないとかいう状況じゃなかった。
逃げられなかったのは、自分が気を抜いていたから。それ以外の理由なんてありはしない。
「・・・そっかー。」
「そうだ。」
「分かった!じゃあじゃあ、今度真田っちが怖いものに会ったら、その時は紀伊梨ちゃんが絶対一緒に居てあげるかんね!安心して良いよ!」
「せんで良いわ、たわけが!」
「えー!?なんで怒るのー!?」
今のセリフの中には、「怖い」とか「一緒に居てあげる」とか「安心して良い」とか、真田的地雷ワードが3つも含まれている。
怖いものなんてあってはいけないし、だから心強さを求めて一緒に居て欲しいなんて一切思わないのに、この情けをかけられている感。
極めつけに安心して良いとか、それは男子が女子や子供に言うべき事なのであって、間違っても女子側からそんな事言われるような事があってはならない。
紀伊梨としては、混じり気の無い感謝の気持ちから言ってるのだが。
「んお?」
「・・・今度はなんだ?」
「何か千百合っちの声が聞こえたー!」
「それは妙だな・・・黒崎千百合は閉じ込めたと、丸井から連絡が入ったが。」
もう逃げていたのだろうか。
いやしかし、逃げたのなら味方側である紀伊梨の携帯に連絡が来るはずだが、手の中のスマホにそんな通知は無い。
だが声は聞こえたから、絶対に何処か近くに居るのは間違いない、と紀伊梨が周囲を見回した。
時。
「・・・あー!真田っち、あれ!」
「・・・何をする気だ彼奴らは。」