「ん?」
「どうしました?」
「いや、仁王からメール・・・は!?」
「ど、どうしたんですか!?」
「罠だから逃げるなって・・・」
「え・・・」
でももう逃げ始める所まで来てしまったんですが。
扉は開けてしまったし、ロープは切られているし。
「ど、どうしましょう、」
「つったってなあ。もう遅いだろい、解除しちまったし。」
「ですよね・・・って、丸井君!」
「え?」
「後ろ!危ないです!」
「え!?」
「さて、作戦その2だ。」
ひらりと隣のバルコニーに移った幸村は、備品のラケットを手に紫希と丸井を窓越しで見ていた。
さっき下りたバルコニーは窓の正面だった。
此方は少し左にずれるので、若干角度が付いて見やすいとは言い難い。
おまけにラケットは備品なので、移動できないようにバルコニーの柵に紐で括られていて、その範囲でしか動かせない。
まあ、でも。
問題はなかろう。
幸村はトスを上げた。
「・・・はっ!」
幸村が打って来たボールは、本来当たっても痛く無いようテニスボールですら無いというのに、恐るべきスピードとパワーで、廊下に出ていた紫希と丸井の直近の窓にぶつかってきた。
割れると危ないと判断したのだろう、正確無比に幸村のボールは窓枠の掛金部分を直撃し、閉じていた筈の窓は2人の目の前で綺麗に開いた。
「・・・・・!?」
「うっそだろい・・・!」
なんでそんな事出来るんだよ。
なんて問うだけ無駄だろう、God’s child相手に。
それでも今見た光景が離れ業過ぎて、ポカンとしてしまう2人に向かって、既に第二の矢は番えられている。
「いっけー!千百合っちー!」
「は!?」
「千百合ちゃん・・・!?」
開いた窓から、中庭に居る紀伊梨の声が聞こえる。
その声援が、完全に右前方に居る幸村に集中していた2人の意識を、正面の千百合へと移動させた。
向こう側のバルコニーで、振りかぶっている千百合。
標的は勿論、此方。
「危ねえ、春日!」
「きゃ、」
(大丈夫、いける!)
千百合は紀伊梨程とは言わないが運動神経は良い。決して悪くは無い。
だがテニス部でも無いのに、此処までボールを飛ばすどころか窓を正確に通してこっちに当てろなんて、そんな事がいきなり出来るとは流石に思わない。
もし、ボールが来たとしてだ。
こっちだってラケットがあるのだ、打ち返せば良い。
「来い、返してやーーーー」
「よう、お疲れさんじゃのう。」
声がかけられると同時に、紫希と丸井、2人の肩にポン、ポン、と手が置かれた。
「え?」
「仁王君・・・?」
振り返ると、仁王が其処に居た。
この状況が見えていないのか。お疲れ様とか今そういう事言ってられる場合じゃないんだけど。
何から突っ込もうか、と2人が逡巡している間に、仁王はにーっこり笑って言った。
「捕まえたぜよ。俺達警察の勝ちじゃき。」
「「え?」」
ピイイイイイイイイ!
「しゅーりょーーー!第3ゲーム、これにてタイムアーーーーーップ!」
棗の声が拡声メガホン越しに聞こえる。
第3ゲーム、終了。