「すっごーい!見て見て、お姫様のベッドー!」
リーダーの散会の指令を受けて、紀伊梨は真っ先にベッドに駆け出して行った。
「・・・柳。念のために聞くが、あれは本当に「お姫様のベッド」という名称なのか?」
「正しくは、天蓋付ベッドだ。」
「うふふ。でも、イメージしやすいですよね。お姫様のベッドと言う言い方は。」
「そう・・・」
「そうか?」
「しやすくはありませんか?なんだか、童話のお姫様が眠っているようなベッドで・・・」
「「・・・そうか?」」
「そ、そうでもない、ですか・・・」
真田と柳にはどうもそういうメルヘンな感覚がピンと来ない。
「それー!ドー、ン!?ゲホ!ゴホ、ゴホ、ゴホン!」
「紀伊梨ちゃん!大丈夫ですか!?」
「たわけ!布団の上で暴れるから、そうやって埃を吸い込むのだ!」
紀伊梨がベッドにダイブすると、途端にモウと立ち上る埃。
柳はサッと傍らにあった窓を開けて換気してやった。
「整えられているとはいえ、古い事には変わりない。あまり暴れると、気管支に悪影響だぞ。」
「あ”い”・・・ごべんなざい・・・ゴホ!」
「ゆっくり息しましょう、紀伊梨ちゃん・・・」
そう。
柳の言う通り、ここは整理されているだけであって掃除されているわけではない。
このベッド全体をすっぽりと覆っている天蓋の薄い布だって、丸洗いしたら汚水が出るに違いなかった。
「ゲホ、はあ・・・あーあー。折角お姫様のベッドに寝られるかと思ったのにー!」
「あ、あはは・・・。でも確かに、日常では見ませんからね。」
「天蓋が付いていて尚且つこの大きさとなると、高級ホテルの最上グレードの部屋にでも行くしかないな。」
「気が知れんな。高い金をわざわざ払って、こんな寝た気もせんような所で眠るとは。」
真田の目にはこのベッドは寝にくくて仕方がない代物にしか映らない。
不意と天蓋の中を覗くと、見ろ。
「小型のシャンデリア・・・あんな物まで内蔵されているのか。益々眠れん。」
「えー!どーしてー!?」
「お前は眠れるのか此処で。」
「眠れるよー!紀伊梨ちゃんは何処でだって眠れます!」
「お前に聞いた俺が馬鹿だった。」
「なんでさー!」
「ロマンチックですけれど・・・ちょっと、地震なんかが怖いですね?」
「そうだな。もしそうなれば落ちてくる可能性はこの古さだと20%、いや23%か。まあ、劣化すれば頭上から落ちて来るのは、通常のシャンデリアでも同じだが。」
「あ、危ない・・・オペラ座の怪人を思い出します・・・」
「ああ、良くあるな。シャンデリアが落ちてきて登場人物が死亡と言うのは、西洋系ミステリーでまま見る展開だ。」
「あれは実際、可能なんでしょうか?」
「意図的に起こせるかという事か?それならばそうだな、特定の誰かを狙うなら兎も角、無差別で殺せれば誰でも良いと言う条件なら、それ程難しくな「ねー!怖い話止めよーよー!!」
「あ、ご、ごめんなさい!」