ROOM:先のヒントによる
PLACE:
存在しない数に埋もれ
知らせの先頭のその又先頭で
藍色の双子のその中にて
道標は眠りにけり
HINT: GRNHOUS
※ROOMは両チーム共通とする
「・・・・・」
さっきの部屋でちらりと聞いた、柳生の言うコツ。
こういうのは、順を追って行く方が分かりやすい。
あれは正論である。
こういうのは途中から解こうとすると分かりにくく、ちゃんと最初からやればすぐ分かるのにショートカットしようと思うから分からなくなる、という事が多々ある。
(しかしのう・・・その最初の行からしてもう既に意味が)
ーーーァァァ・・・
「ん?」
今何か。
ターザンか何かみたいな、書斎に似つかわしくない声がした気が。
辺りを見回すと、紀伊梨が突っ込んでくる。
何かにしがみつきながら。
あれはなんだ。
あれは。
・・・ァァァアアアアア!!!」
「プリッ。」
「うお!?あだあ!」
紀伊梨は高い所の本を取る用の梯子で滑っていたのだった。
この梯子は手摺に固定してスライドするようになっているので、梯子に登りながら本を探せる優れものというわけだ。
本来は。
こうやって滑って遊ぶ為にそうなってるわけではない。
「あでででで・・・あー、でも良かったー!止まれなくってどーしよーかと思ったよー!」
「お前さんは何をしとるんじゃ?」
「いやー、上の方見ようと思って登ったら動いちゃってですね?そしたらシューってなって、面白くってさーあ?」
「そういうのはもっとバレんようにしれっと遊びんしゃい。」
止めない男、仁王。
勿論責任など取る気はない。
「はーい!あ、でもでも、もーちょっと優しく止めてくれても良いんだよ?急に止めるからガクッと来て落ちちゃったよー!」
「ん?」
「え?」
「俺は別に何もしとらんぜよ。」
「えー?そんな事ないよー!急ブレーキがかかったから、紀伊梨ちゃん落ちちゃったんだよっ!」
しかしそう言われても、仁王は本当に何もしていない。
「手摺にでも引っかかったか?」
「えー、それも無いっすよー!だってグン!って引っ張られる感じしたよ?」
「尚更解せん話じゃのう。引っ張るっちゅうて、何がっちゅう話に・・・」
そう言いながらふい、と仁王が視線を上げた時だった。
梯子と手摺の接合部の所。
何か紐のような物がピンと張っている。
「あれは・・・」
「リボンだー!可愛いー!あり?でもなんであんなとこにあるんだろー?何か書いてあるし?」
「お前さん見えるんか。」
「うん!紀伊梨ちゃんの視力は2.0ですよっ!えへん!」
(此奴耳だけじゃなく目も良いんか)
つくづく頭が悪いのが悔やまれるスペックだと仁王は思う。
フィジカル、メンタル、何処をとっても一級品なのに。
「まあ、天は二物を与えんと言うしの。」
「うにゅ?なんて?天ぷらは煮干しが美味しい?」
「そういう所が残念じゃと言うたんじゃ。」
「なんですとー!もー!どういうとこかは知らないけど、失礼しちゃうんだからー!」
「プリッ。」
紀伊梨を軽くいなしながら、件のリボンを取ろうと仁王は梯子に足をかけた。
「あー!駄目ー!」
「は?」
「紀伊梨ちゃんが先に取るのー!ニオニオは駄目!」
「なんじゃ急に。」
「やーぎゅがねー、ニオニオはこっちチームのヒント見つけても多分くれないで隠しちゃうから、絶対取られちゃ駄目だって!」
(読まれとるか)
ハイパー図星君である。
流石柳生、仁王のやりそうな事などお見通し。
「だからニオニオは駄目っ!紀伊梨ちゃんが取ってくるんだかんね!」
「そこまで言うんなら譲るが、気をつけろ。結構高いきに。」
「あい、さー!」
まあ紀伊梨の性格上、こっちチームのヒントなら違ったと言って素直に渡してくれるだろうから、此処は譲ってやっても良いだろう。
それより。
(運動神経が良いのは分かるが、いかんせん注意力に欠けるダニ、見てて怖いもんがあるな。)
梯子を上っていく紀伊梨だが、大丈夫だろうか。落ちたりしないだろうか。
「よい、よい、よいっと!お!これですな!」
言われるまで全然気づかなかったが、たしかにある。
梯子の一番てっぺんに、白いリボンが。
「お!やっぱり何か書いてあるよー!えーと?さいどA?・・・うにゅー、読みにくいー!」
「おい、無理して其処で読まん方がええぜよ。取り敢えず外して・・・」
リボン外してからゆっくり読め。
そう促す仁王だったが、時既に遅し。
「うにゅおっ!?お、お、お、おわあっ!」
「五十嵐、」
ドサッ!
「あててて・・・って、あり?痛くない?」
「そうか。それは良かったの。」
自分は痛いんですが。
と思いながら力なくそういう仁王は今、紀伊梨の下敷きになっている。
「おお!ニオニオありがとー!」
「おう。取り敢えず退いて欲しいんじゃが。」
「うん!今退く・・・」
ぶち。
「おい。今何か嫌な音がせんかったか。」
「・・・・・」
「五十嵐?」
「・・・あっははー。いやー・・・」
「おい、まさか、」
「ごみんに!」
紀伊梨の手には、ぶっちぎれたリボンが。
千切れたもう片方は、足の下で無残に踏まれてまだ先の方が梯子の上に繋がったままだ。
仁王の言う通り、ちゃんと外して降りないからこういう事になる。
人間落ち着いて行動しないと良い事は無いと言う良い例。
「・・・・・」
「だ、大丈夫だお!ほら、繋いだらちゃんと読めるし、切れたのは一箇所だけ・・・」
「・・・・・」
「・・・ごめんなさい!」
「・・・はあ。」
こんな事なら最初から自分が行けば良かった気もするが、まあ仕方ない。
死んだ子の年数えたって始まらないのだ。
「ま、しょうがないき。」
「およ?許してくれるの?」
「わざとじゃないんじゃろ?」
「はい、それはもう!」
「ならええよ。お前さんの言う通り、繋げればヒントは分かるしのう。」
「本当?やったー!ニオニオやさしー!」
此処で交換条件でも出されたら紀伊梨はえらい目に遭ったに違いないが、仁王はそれは言わない事にした。
紀伊梨みたいな行間を読めない、裏表のない人間に駆け引きは通じない。
「じゃあ、残りのまだ張りついとるあれは俺が取るき。」
「うん!」
「お前さんはお父さん達にきっちり叱って貰いんしゃい。」
そう言ってポン、と肩を叩く仁王の手つきは。
そう、まるでリストラを宣言する会社の重役のよう。
「んにゃ?おとーさん達・・・?」
「俺達の事だよ。」
背筋に氷が当てられたような心地がした。
本当の親より怖いこの声は。
「ゆ、ゆっきーさん・・・それに真田っち・・・」
「五十嵐、危ない遊びはしないようにってさっき言ったよね?」
「ど、どこから見て・・・」
「貴様が梯子で滑っていた所から見ていたわ、このたわけが!」
「ひいいいん、ごめんなさあああい!ニオニオ助けて!ニオニオ・・・」
「ポチッ。」
「なあにそれえええ!やっぱり怒ってるっしょ!ニオニオ怒ってるっしょ!」
別に怒ってないけど、二度三度こんな事になるのは勘弁願いたい。
自分より良く言い聞かせられる人が、自分の代わりに怒ってくれると言うのなら、こんな有難い事は無い。
「おい、仁王に話を振るな!俺達はお前の話をしとるのだ、お前の!」
「あううう!」
「さ、五十嵐。取り敢えずあっちの椅子に座って、話をしようか。ゆっくりとね。」
「遠慮しますううう!」