「さて。あちらは春日が出る確率、89.65%だが。」
「此方は誰に致しましょうか?」
Bチームは林檎を踏み越えて・・・つまり林檎を上って行くわけだが、こっちはこっちで制限がかかっている。
木が細いのだ。
これはみだりに重い人間を選ぶと折れるかもしれない。
「そりゃあ、まあ・・・」
「越えるだけなら、五十嵐が一番だろうけどなー。」
「およ?私?」
「だってお前、一番小せえじゃん。身も軽いし。」
そう、この中で一番体重が軽いのは紀伊梨。身のこなしも申し分なかろう。
紀伊梨自身もそれは分かっている。分かっているが。
「うーん、でも紀伊梨ちゃんじゃ、紫希ぴょんにパズルでなんて勝てないよ?」
「だろうな。」
行った先でやるのがパズルゲーム。
そう分かっている以上、紀伊梨を行かせるのは悪手である。
しかしさりとて、じゃあ柳や柳生辺りを・・・というのも苦しい。体躯的な意味で。この2人は身長が高めなのだ。
結果。
「俺ね。オッケー、行って来んだろい。」
「おう!ブンブン頑張れー!」
「焦らなくて良い。焦ると余計にパズルは解きにくくなる。」
「まあ、それを想定して焦らせる為に一纏めにしているのでしょう。先程から会場がいちいち同じなのと同様に。」
そういう意味ではマイペースな丸井はなかなか良い人選であろう。結果的にだが。
「ジャッカル、ラケット頼む。」
「ああ。気を付けろよ。」
「落ちないよーにねー!」
林檎の木を伝って上る丸井。
落ちないようにとか気を付けろとか言われるが、そんなに言う程高くは無いし、手をかける所も多い。割と簡単に、丸井は林檎を越えてPCの前まで辿りついた。
「よっ、と。で?タブレットが・・・あれか!」
あった。
タブレットが2つ、スリープモードでプレイヤーを待って居る。
その傍ら。
「よ。」
「あ、丸井君・・・」
紫希は腹ばい状態で茨を潜って、スペースまで来ていた。
ただ中が狭い上、服がいちいち茨に引っかかるので、なかなか出られない。
「ん。」
「え?」
「ん?」
ごくごくナチュラルに手を差し出してくる丸井。
「どうした?」
「いえ・・・有難いですけれど、敵チームを助けて良いんですか?」
「ま、良いって良いって!言わなきゃバレねえよ、よっと!」
「あ、う、」
丸井に手を引いて貰って、紫希は漸くちゃんと立つ事が出来た。
「有難う御座います・・・」
「どういたしまして。でも内緒な、内緒。秘密って事で♪」
「は、はい!」
とかいう丸井だが。
「結構聞こえとるんじゃがのう。」
「へえ、丸井はああやって「内緒の話」とやらを増やしてるんだね。」
第1ゲームにて紀伊梨は、2人で内緒の話とかいっぱいでずるい!と言っていた。
内緒の話なんてものがあの2人の間にあるのかと思っていたが、成程。
こんな事をしょっちゅうしてるのなら、そりゃあ内緒の話も多くなろう。
「彼奴、誰にでもあんな事してんのかしら・・・」
「?それはしているのではないか?敵でも友人なら手を貸すというのが、丸井のスタンスなのだろう。俺には理解出来んが。」
「そうじゃねえよ。」
「なら何だ。」
「いや、もう良い。何かもう、良いわ。説明疲れるし。」
「おい、言いかけておいて止めるな!」
「ブンブンじゅるい・・・」
「まあまあ、そうぶすくれるなよ。な?」
「だってー!」
「しかし、あの程度の「内緒」で良いのなら、五十嵐さんも沢山作られたら良いのではないですか?」
「というより、そもそもお前は性格的に、大凡「内緒」「秘密」といった類に向いていない確率98.21%だが。」
「う!」
そう、極めて素直な紀伊梨はこの手の隠し事が苦手である。
内緒ね、と言いつつ内緒に出来てない事が多々ある為、こういう交流の仕方は真似出来ないと言うのが正直な所。
「確かに。問い詰められると口には出なくとも、態度にはおおいに出そうですね。」
「桑原もそうだが、2人共もう少し、突っ込まれてもサッと流す練習をした方が良い。」
「それは自分でも思う・・・」
「むつかしいんだもーん!」