Solicitation:4th game 7 - 2/6


「14!14は何処だ!」
「この辺で20じゃ。19、18、」

「待てー!」
「追いつきましたよ!」

「何!もう追いつかれただと・・・不覚!」
「しょうがない、この足場じゃき。」

グラウンドでやるよーい、ドン!なら兎も角、此処は荒れ放題の温室なのである。
そこいらじゅうに土や石や木の根や木の葉が散乱している状態では、スピードの差は縮まりがちになってしまう。

「しょうがないなどと簡単に言うものではない!己への叱咤が足りんのだ、この程度でーーー」
「分かった分かった。分かったダニ、早う行かんと。」

「しかし、この足場でもこの位しか詰められないとは・・・流石に、真田君たちは足もお早いですね。」
「うにゅー!まだ遠いー!待てー!」

真田側は焦っているが、紀伊梨側も焦っていた。
思っていたより距離が詰められない。このままでは遅れる。

「・・・!五十嵐さん、それを!」
「お?」
「それを使って下さい!」

「真田、あそこじゃ!」
「良し!背中は任せたぞ、仁王!」

仁王はくるりと後ろを振り返った。

少し離れた所で、柳生と紀伊梨が振りかぶっているのが見える。

(2対1か、)

柳生も紀伊梨もテニス部ではないが、センスは十分。
そしてあっちは2人。
ちょっと厳しいと言えば厳しいが。

(じゃが、2人共狙っとるのは真田じゃ。狙いが集中してるなら返しやすい筈・・・)

要は真田を守ればよろしい。
ボール2球なら、最悪体を張って止めれば良いのだ。

そう考え、ラケットを構える仁王。
さあ、来るぞ来るぞあの黄色いボールがーーー

「・・・・!?ぶ・・・!」
「!?おい、仁王どうした、」
「真田、振り向くんじゃなか!」
「何、ぐはっ!」

視界が急に赤くなった。
それと同時に何か湿ったものが顔に当たった。
後何か甘い。甘い味がする。

それから、紀伊梨がやったー!とはしゃいでいる声が聞こえる。
何だかよく分からないが、やられた事は分かった。

「げほ、ごほ!何だこれは!」
「それは俺も聞きたいナリ。何じゃこの赤オレンジのべとべとは・・・」

「それは柿です。」

柳生のとても涼しい声が聞こえる。

「柿だと!?」
「ええ。ここは温室と言う環境柄、世間とは微妙に果物の時期にズレがあるようでして。完熟した物が落ちていましたので、それを使用しました。」

完熟した柿というのは、吃驚するほど甘い。
そして柔らかい。ぐにゃぐにゃである。
その為返そうとした仁王のラケットは、ガットの間をすり抜けてきた柿を捉えきれなかったのだ。

「えっへん!って、紀伊梨ちゃんの手もべとべとになっちったけどー。」
「ウエットティッシュがありますよ、どうぞ。」
「おー!やーぎゅ用意良いー!」
「こっちにもくれんか。」
「おい!敵に頼るな!」
「これこそしょうがないぜよ。こんな全身砂糖塗れの状態じゃ、まともに動けん。」

ちょっと身じろぎしただけで、糖分がべたつく。
服なら兎も角、顔に受けたのは痛すぎた。

「・・・・・・」
「五十嵐さん?どうかなさいましたか?」
「ええっ!?い、いやいや、別に何も!甘くて美味しそうだなーとか、ちょっと食べちゃ駄目かなーとか、そんな事全然思ってないですお!」
「思うとるんじゃな。」
「他所の物を食うなとさっきも言っただろう!人の話を聞かんか!」
「落ちてるじゃーん!」
「よしんば許可が出ていたとしても、落ちていた物を拾うのは拾い食いですよ五十嵐さん。」

暗に人としてそれはどうなのと言ってるのである。
別にそうまでせねばならない、切羽詰まった事情があるわけでもなんでもないのに、ただ腹が減ったと言うだけの理由で。

だが紀伊梨はおそらく其処まで察してはいまい。

(此奴に上手い事妨害されたのかと思うと、逆にちょっと情けのうなってくるの。)


『14番、を、倒せませんでした。正解番号が更新されます。Aチームのプレイヤーは、再度パズルを解き直してください。』


うるせえ、完熟柿ぶつけんぞ。