「・・・・・」
「・・・・・」
(・・・・何これ。)
千百合は手持ち豚さん・・・もとい、手持無沙汰だった。
妨害と言っても具体的にどうすべきかよく分からない。
だから幸村がどう動くかを見て、それに追従するなり手伝いするなりしようと思っていた。
しかし、幸村は動かない。
柳も動かない。
双方、動こうと言う素振りすら見せない。
厳密に言うと、分からないでもない。
柳からすると自分が行動を起こす事で幸村が動くのだから、逆に自分が動かなければ幸村は動かない。幸村にも同じ事が言える。何もしていない柳に、一方的に攻撃は出来ない。此方が出来るのは妨害なのだから。
だが、それが千百合的には逆に不自然なのだ。
幸村と柳の性格からして、他にやりようもないからね仕方がないね、なんてノリでただただ相手が動くのを待ってるだけなんて。
それにもう1つ。
(・・・何か柳、さっきから変。)
ただ、立っているだけ。
それなのに、何か纏う空気が変わってきている気がする。
何か焦っているような、畏れているような。
「・・・幸村。」
「うん?」
「動かないのか?俺は桑原を行かせたぞ。」
「まだ、動く意味は無いかな。」
幸村はニッコリ笑った。
「心配しないで。さっきも言ったけど、俺はただ座して見逃したりなんて事は、絶対にしないから。」
「・・・・」
(柳、かわいそ)
笑顔でそのセリフは、普通敵に向かって言うものじゃないと思う。
気の毒に、柳の額からは冷や汗が一滴。
(でも、まだって言っても、じゃあ何時?)
向こうの方で、桑原が34番を探して居るのであろう物音が聞こえる。
微かに声も聞こえる。
これは多分、仁王や紀伊梨等さっき向こうへ行った組だろう。
幸村がどうするつもりか知らないが、流石にそろそろ動かないとまずいんじゃ・・・と千百合が思い始めた時だった。
(千百合。)
幸村が小声で言った。
(何?)
(頼みがあるんだ。)
(はあ。)
(1球で良い。柳が俺を妨害してくるだろうから、俺の代わりに返球して欲しい。何処へ飛ばしても良い、返してさえくれればそれで構わないから。)
(は?)
待ってくれ。何かおかしいぞ。
妨害はこっちがする事だろう。なんで柳にこっちが妨害されなくちゃならないんだ。
(・・・来た!今だ!)
「ちょっと、」
「!させるか!」
幸村がトスを上げたとほぼ同時に、柳もトスを上げた。
その光景に、千百合はなんだかよく分からないが、幸村の言う事はやはり正しいのだという事を感じた。
兎に角今、幸村は何かをしようとしている。
そして柳は、その邪魔をしようとしている。
なら、自分のやる事は決まっていよう。
「・・・来い、柳!」