『34番、を、倒せませんでした。正解番号が更新されます。Bチームのプレイヤーは、再度パズルを解き直してください。』
「あー、くそ!駄目だったか・・・!」
丸井は思わず頭を抱えた。
相手側に幸村が居るから、まあこうなってもおかしくはない。
ただ、駄目だった時に巻き返ししろと言うのが異様にきついのだ。
自分はパズルが遅いから。
しかも。
「げ、マジかよ。」
6×6。
難易度が上がってしまった。
更に更に。
『Aチーム、正解です。番号は、21番、です。』
「おい・・・!」
早い。
冗談だろ。
「いや待て、早過ぎねえ?さっきこっち側が失敗判定出たばっかりだろい?」
「それなんですけど、分かった事がありまして・・・」
「?」
「このパズル、2人同時に正解は出来ないみたいです。」
実は紫希は、丸井がクリアして番号告知されて間もなく、3回目のパズルクリアを成し遂げていた。でも、アナウンスは別に鳴らなかった。
これは仕方のない事なのだが、GM足る人間は棗しか居ない。
今棗は、監視カメラとPCで温室を見つつ、起こった事に対して適宜アナウンスを流しているわけだが、A・B両チームが同時に正解し各々が缶を狙いだすと、見なければならないポイントが2箇所になってしまって即時の判断が出来ないのだ。
誤判断を防ぐ為に、一方のチームが回答し終わるまでもう一方のチームは動けない。そういうシステムにせざるを得なかったのである。
「って事は、片方がパズルをクリアして、外で缶狙ってる間は・・・」
「もう片方のチームは、待たなくちゃいけません。」
「ふうん。つっても俺達には関係ねえよな、あんまり。」
「ええ、まあ・・・私達外の様子が分かりませんし、出来る事といえばなるべく早く目の前のパズルを解く事だけですので。」
その「なるべく早く」が辛いポイントなのだが。
「どうすんだよこれ。押しちまうかな・・・」
さっき5×5でも十二分に時間を取られていたので、6×6になると輪をかけて辛い事が予想される。
それならパスボタンを押して、難易度が下がるのを期待するか。
しかし、2分のロスになる。
『21番、を、倒せませんでした。正解番号が更新されます。Aチームのプレイヤーは、再度パズルを解き直してください。』
「あああ・・・」
「あーあ。」
こっちもこっちで難航しているようだ。
敵とはいえ、ある意味では丸井は紫希に同情する。
3回チャンスを作って居るのに、3回不意にされているわけだ。
「まあ、そんな落ち込むなよ。な?」
「ええ・・・何にせよ次ですね、次・・・」
「春日!」
真田の声が、突如木霊した。
流石の大声は、自然の壁を突き抜けて紫希と丸井の耳にはっきり届く。
「春日!聞こえるか!其処に居るな!」
「は、はい!居ます!なんでしょうか!」
なんらかの指示だろうな、とは紫希も丸井も予想はついた。
が。
「丸井だ!丸井にパズルを教えろ!」
これは予想外。
「え・・・・ええええ!?」
「マジ?なんで?」
「わ、私にも理由が・・・どうしてですか!?」
「俺にも事の次第は良く分からん!だが、幸村と仁王がそうしろと言っているのだ!」
なら、やらない理由は無いな。
と、紫希はおろか敵チームの丸井でさえも思った。
なんだかよく分からないが、あの2人がそうせよと言うのなら、何処かに何らかの必要性があるのだ。
「分かりました!」
「頼んだぞ!それから、お前はお前で自分も解いていろ!教えつつ、相手にばかり正解させるな!」
「は、はい!」
なんだかアクロバティックな注文である。
紫希はほんの数秒考えた。
(丸井君に教えなくてはいけなくて・・・でも、丸井君にばかり解答権を与えるんではなくて、自分もちゃんと正解して、ターンを貰いつつ・・・という事は、教える傍ら私もパズルを解かなくてはいけなくて・・・)
となると。
「ま、丸井君!教えます!」
「おう。俺は何にせよ有難いけ、どーーー」
自分の左側に寄り添う紫希の体温に、丸井は瞬間言葉を失った。
2人が解答してるのはタブレット。
つまり今迄必要が無いからしていなかっただけで、持って傍に行こうと思えば出来るのだ。
「今から目の前で解きますから。」
「ああ、」
「何マスでも手順は同じですから・・・私がやるのを見ていて下さい。」
「うん、」
紫希は今、とても必死である。
運動音痴故に、今迄のゲーム全体を通してチームメイトの足を引っ張り通しだった自分が、漸く役に立てる時が来たのだ。
人に教えながら正解しろという注文はなかなか無茶だが、やらねばならない。
必ずやってみせる!という使命感に燃えているのだ。
だから気づかない。
タブレットを見せようとして、自分が丸井にぴったり寄り添っている事に、全然気が付かない。
「まず最初に、こんな風に上を行で詰めていきます。」
「・・・こう?」
「はい。基本の考えは奥詰めです。奥から順番にこうして1行目を揃えて・・・・この最後のパネルだけは、この部分をそっくりこうしてスライドさせて、こう・・・」
(あ、吃驚した。)
性格上自分から寄って行くのはもう慣れた物だけど、紫希からこんな風にぐい、と寄って来られる事は無い。
(近・・・)
「それで、此処まで来たら・・・丸井君?」
「え?」
「分かりますか?何処か、ピンと来なかった所は・・・」
「ああ、大丈夫。んで?此処まで詰めて、でも此処から下が難しいんだよなー。上はもう動かせねえし。」
「はい。なので此処からは、左詰めです。こうして、こうして、」
「・・・おお!成程な、縦でやんのか!そうすっと、こうして、こうで、」