「む。」
「お。」
「おや。」
「うーわ。」
一方、千百合達も千百合達で今、完全に偶然ではあるが鉢合わせという形で合流していた。
「なんだそのあからさまに嫌そうな顔は。」
「嫌だからに決まってんじゃん、察しろよ。」
「この状況で人間との合流が好ましくないと言う気か。」
「お前との合流が好ましくない。」
「俺は味方だろうが!」
「あーうるせ、もう。」
「丸井君は、真田君とずっとご一緒で?」
「おう。ライト持ってないから付いてって良いかって。どっちみち振りきれねえし、ルートに文句は言わないって約束したから、まあしょうがねえかなと思ったんだけどよ。」
「そうでしたか。私は黒崎さんと同行していましたが、成り行きは大凡同じですね。」
となると、やっぱりこれはBチームの、チームとしての策略である可能性が高い。
「・・・って事は、此奴ら置いてった方が良かったり?」
「無論、ついて来られるよりは来られない方が良いです。こちらが不利になる事こそあれ、有利になるとは思えません。」
とはいうものの。
実際問題、此処から振り切れるかと言うと。
「「・・・・・」」
「何だ?」
「何よ。」
如何にも危ない。
この2人を一緒にしておくのも危ないし、放置して逃げると事故を起こしそう。
敵なんだからそんな心配してやらなくても、という念を超えて心配が出て来るのがこのコンビである。
「逆に考えますか。」
「逆?」
「ええ。開き直って4人で進みましょう。」
兎に角、Aチームにとって最善なのは今のまま1対1行動する事だ。
だから纏まる事によって状況を動かす。
こっちの効率は落ちるが、代わりにあっちの効率も落ちる、一連托生作戦だ。
(それで良いのかよ?)
(幸いな事に、柳君は此処には居ません。と言う事は彼は彼で行動している筈です。柳君なら、フリーで行動出来ていれば状況をいずれ動かしてくれるでしょう。)
唯一柳を本格的に足止め出来るとすれば幸村だろうが、Aチームとしても幸村は主軸にして使いたい筈だ。あの神の子を相手チームの背後霊にしておくなんて、そんな非効率的な事はやるまい。
「え、4人で行くの?」
「ええ。断っておきますが、此方の意向には従って頂きますよ。ライトを持っているのは我々のチームですから。」
「従おう。そういう約束だからな。」
このコバンザメ戦法の唯一の欠点はそれ。
行き先は決して自分の自由にならない事だ。
「私あっち行きたいんだけど。」
「おい、今しがた従うと言ったばかりだろうが!」
「それは最終的に決めるのが柳生とか丸井って事でしょ、行きたいって希望を言うのまで制限された覚え無いわよ。」
「実質制限されているようなものだろう!」
「はあ?お前の思い込みで話進めてんじゃねえよ。」
「思い込みではないから言ってるんだ!」
「だからそれが、」
「なあ、そろそろ進みたいんだけど?」
別に喧嘩したいなら止めやしないが、歩きながらにしてくれないだろうか。
こっちもこっちで時間が惜しいのだ。
「・・・・すまん。」
「わり。」
「では、ひと段落したところで参りましょうか。」
(こいつらこういう時は比較的素直なんだけどなー。)
マシになってるとはいえ、寄ると触ると喧嘩になるのは相変わらずである。
もしかしたら、今更他の絡み方がお互い思いつかないのかもしれない。
「しっかし、いつまでこうしてふらふら迷ってたら良いんだろうなー。腹減ってきちまった・・・」
「あんたマジでその燃費の悪さどうにかなんないの?」
紀伊梨も大概燃費が悪いので、腹減った腹減ったと喚く人種には慣れていたつもりだったのだが、丸井はつくづく紀伊梨を越えた脅威的な燃費の悪さである。
「出来るんならしてるって。なあ、何かくれよ。」
「持ってるわけあるか、紫希じゃあるまいし。」
「あれ、持ってねえの?」
「何で持ってる前提で話すんのよ。」
「幸村君は持ってっから。」
その言葉に、千百合はピタリと止まる。
「おや?それは初耳ですね、そうなのですか?」
「そう言われれば確かに、多少は持っているな。自分で食べるというよりも、五十嵐の口に放り込むためのようだが。」
「ああ、成程。その為のものですか。」
そう、大概紫希が誰より先に相手をしてしまうのであまり出番は無いが、幸村も紀伊梨用のお菓子は持っている。
というより、紫希と出会ってからお菓子与え係が移行しただけで、それより前は幸村が紀伊梨のおやつ係を勤めていたのだ。
「だからお前らもしかして全員持ってねえかなと思って。」
「おい、持っていたとしても強請る物ではないだろう!」
「えー、あげる用に持ってんだから別に良くねえ?」
「そうだとしても「丸井君に」差し上げるようではないでしょう。」
柳生は苦笑い気味に言った。
「・・・持ってない。」
「そっか。あーあ、春日か幸村君に会わねえかなー。」
「と言いますか、競技中ですから今この場では持っていないのでは?」
「あ、そっか。」
「そもそも、勝負事の最中に食い気を出すな!集中の邪魔だ!」
「いや、それは聞き捨てならねえだろい!腹減ってる方が気になって、目の前に集中できねえよ!」
「待って下さい、それでは部活の間などどうなさっているのです?」
「・・・・・・」
わいわいと談笑している3人のちょっと後ろを、千百合は無言で歩く。
ああ、嫌。
何がって、もう何もかも。
こういう時、千百合はどう振る舞って居れば良いのか分からない。
「おい。」
「・・・・・・・」
「おい、黒崎千百合。」
「・・・え?何?」
「此方の台詞だ。・・・どうした。」
千百合は元々口数が多い方じゃないが、
今の千百合はそういう黙り方じゃない。
それくらいは分かる、伊達に毎日同じクラスで喧嘩してるわけじゃない。
「別にどうも。」
「嘘を吐くな。」
「吐いてないわ。」
「吐いているだろう。」
「吐いてないっつってんだろ、しつけえな。」
ほら、もうそうやって言い返してくる態度がもう、覇気がない。
「・・・俺に嘘を吐くのは、まあ百歩譲って見逃してやらんこともない。」
「くそ偉そうか。」
「当たり前だろう。どのような事情があるにせよ、人を偽るのは良い事ではない。まあ、それはこの際許してやる。
ただ、幸村やビードロズと合流した暁には、ちゃんと言え。包み隠さずな。」
千百合は少し目を見開いた。
「・・・何だ、その顔は。」
「いや、お前がそれ言うのかよと思って。」
「どういう意味だ!」
「だって、あんたがそもそも何か考えてても人に相談しないタイプじゃん。」
「・・・・・」
図星。
そうだ、その通り。
いや。
「・・・そうだった、が正しい。」
「今違うの?」
「ああ。今はな。」
そう、今は違う。
スクールメイトだった幸村は、今は同じ学校、
同じ部活で高みを目指す事の出来るチームメイトになったし。
それに、柳という頼りになる友達も新たに出来た。
そうなって真田は、初めて知った。
何とはなく相談事が出来る友達が傍に居てくれることが、どんなに楽な事か。
「だからお前もそうしろ。」
自分に言え、と言えないことくらいは真田にもわかる。
何か悩んでる事があったとして、千百合がそれを自分に言うとは思えない。
自分だって逆の立場なら、千百合にはなかなか言いにくいし。
でも、千百合はもう幸村とビードロズが。
どんな事でも話せる親友が今、もう傍に居るじゃないか。
「その、そう「しろ」って言うのがうざいんだってば。」
「言葉尻を取るんじゃない!今そういう話をしているのではないだろう!」
「おーい、お前ら何してんだよ?」
「何か、トラブルでも?」
前を向くと、いつの間にかちょっと離れた所に居る柳生と丸井。
いけない。離されていたらしい。
「む、すまん!何でもない、直ぐ行こう。」
「ごめん。」
有難う。
「何か言ったか?」
「何も。気の所為じゃない。」
「そうか・・・黒崎千百合。」
「あ?」
「その足元の物はなんだ?」
「足元?」
そう言われて視線を下げると、千百合の足元、
壁際の所で黄緑色にぼうっと光る物が。
(何これ。丸い・・・)
「・・・ボールだ。」