「これは・・・」
「蛍光塗料が塗ってあるんじゃろう。」
「キーアイテム、ですよね?」
「その可能性は高いな。失くさんようにせんといかん。」
紫希と仁王は、発光するテニスボールを所持したまま相変わらず暗闇に佇んでいた。
「じゃあ、これを持って何処か・・・ゴール的な所を目指しませんと。」
「ああ。じゃが、光っとるとはいえ、ライトの代わりにはならんな。」
依然、進むのは難しい。
紫希も仁王もライトを所持していないばかりか、周りから明かりが近づいてくる気配も無い。
「かといって、じっとしてると先手を取られる場合もあるな。」
「で、では進みませんと・・・」
「それも不細工じゃ。こうなると、一刻も早くゴールを目指す必要が出て来るぜよ。」
そう、早く行きたい。
こうなると、遅れを取りたくないという思考が働いてくる。
相手より早く。
その為には。
「やるだけはやってみるか。」
「?」
「春日、両手を出しんしゃい。」
「はい、」
「きゃあああああああっ!!」
「!」
柳は立ち止った。
今の悲鳴。
「春日か・・・」
どうした。
何があった。
いや。
(罠かどうか微妙な所だが・・・罠の可能性が幾分高いな。)
柳は、先程紫希と別れた。
あの時桑原と仁王が一緒に居たが、もし桑原が手筈通り2人を撒けたとすると、紫希は仁王と一緒に居る事になる。
となると出る結論としては自然、仁王が何がしかの狙いを踏まえて紫希を叫ばせたのだろう、という事。
(俺はライトを持っている。みすみす光源を持って行く事も無い。)
勿論、本当に事故など起きた可能性も十分ある。
あるがその場合、GMが黙っては居まい。ゲームの中断は免れないだろう。
「・・・・・・」
ちょっと足を止めて、静止してみる。
電気は点かない。
アナウンスは流れない。
アクシデント、無し。
「行くか。」
極めてメタでロジカルな推測を経て、柳は再び歩き出した。
「春日?」
幸村もまた、足を止めた。
今のは紫希の悲鳴。何かあったのだろうか。
いや。だとしても。
(結構距離がある聞こえ方だった。もし何かトラブルだったのだとしても、俺が向かってもそれ程役には立たない。)
となると、どうすべきか。
「・・・すまない、春日。」
駆けだす幸村。
ゴールの位置は覚えている。
自分が辿って来た道を引き返せば、きっと道中のどこかにボールはある。
やる事がわかっているなら、自分が宝まで辿りつく。
一刻も早く。
きっと、ゲームを終わらせる方が向かうより早いと幸村は信じて、迷路を引き返し続けるのだった。