Solicitation:4th game 10 - 6/6


「今のは・・・」
「紫希だ。絶対紫希。」

千百合と真田、それに丸井と柳生の混合4人組は、ボールを拾った場から動いていなかった。
キーアイテムに違いないこのボールだが、今この場には両チーム居る。どちらが所持するかで当然ぶつかり、もうじゃんけんで決めないか、という話まで出だしたところに、紫希の悲鳴が割って入ったのだ。

「向こうから聞こえたな。」
「良し、行こ。」

「お待ちください。」

迷わず向かおうとする千百合と真田だが、ストップをかけるのは柳生の一声。

「お忘れですか?今何処へ向かうかの選択権を持っているのは我々ですよ。」
「おい柳生、」
「丸井君。お気持ちは分かりますし、私とて春日さんがトラブルに見舞われたのであれば、助けたいとは思いますよ。ただ、冷静に考えて下さい。今、暗闇が解除されずアナウンスも流れないこの現状。これは即ち、春日さんが忽ちどうにもならないような大事故に巻き込まれた、というわけではない。という事の裏付けになります。アクシデントが起これば、流石にゲームは続行出来ないでしょうから。」
「・・・まあ、そりゃそうかもだけどよ。」
「とは言っても、実際それは辛いと思う気持ちは分かります。ので・・・」
「ので、何よ。」
「交換条件と行きましょう。」
「交換条件だと?」

「私にボールを下さい。その代わり、丸井君と黒崎さんと真田君は、3人で春日さんの元へ向かうのを許可しましょう。」

千百合はぎょっとした。
真田もぎょっとした。

同チームの丸井さえもぎょっとした。

「・・・マジ?」
「お嫌ですか?私が春日さん側に回って、丸井君にボールを預けても構いませんが。」
「いや、其処じゃねえよ。」

「・・・・・・弱ったな。」
「それよ。」

柳生は基本的に性根は穏やかで紳士である。
だが同時に頭の回転が早く、駆け引き上手でゲーム上手でもある。

だからこういう時、最も優先すべきは何か、がくっきり分かるのである。

勿論、紫希は気にかかる。
が、実際問題GMからストップがかからない以上、ゲームは続行される。

というか。
これはゲームを続行して良い、というサイレント・アナウンスであるという事を、柳生は一瞬で掴んでいた。

ただ、これにより敵チームは浮き足立っている。
加えて、GMが棗であるという事を鑑みると、棗的にはOKでも紫希には大問題な事が起こってる可能性もある。その場合は友人として助けてやりたい。

この方法は、柳生にとって一石二鳥なのである。

「如何致しますか?此方としてはどちらでも構いませんよ。あくまでボールを争うと仰るなら、ライト無しで春日さんの下へ向かわれると良いでしょう。私は止めません。」
「・・・その条件で、俺と黒崎千百合が別れ、1人、お前に着いた場合は、」
「構いませんが、いずれにしろボールは此方側です。あまり着いて来る意味も無いと思われますが。」

仁王の考えたこのコバンザメ作戦は、探索ーーー即ち迷路で何かを見つける確率を上げる物。
そしてボールを見つけてしまった今、言うなれば探索がもう半分終わってしまったのである。
ここから更に探索の効率を上げた所で何になろうよ、という話だ。

(柳生と仁王がダブルス組んで仲間になるっての、ちょっとやばくねえ?部活の風紀的に。)
(珍しく意見が合うな。)

此奴らが組んだら、一体どんな事が起こるのか、いや起きてしまうのか。
丸井と真田は揃ってちょっと寒気を感じた。

「・・・・・・」

千百合は今、全力で考えている。

どうしたら良い。
どうすべき。

「・・・ボールは譲らない、って言ったらジャンケンで持ち主が決まるのよね。」
「ええ。ただ、いずれにしろ行き先は此方に従って貰いますが。」

この暗がりでは、ライトを持っているのが絶対強者。
襲うのはペナルティ故、無理に奪う事は出来ない。

「紫希の元に着いたと同時に、走って引き返すとかする?」
「いえ。それはしません。」
「しねえの?」
「此処に来て蹴落とす真似をしたいのなら、最初からこんな交渉を持ち掛けない方が良いでしょう。其処までするメリットは然程ありませんよ。」

「・・・おし。譲る。」

千百合は決めた。

「では、交渉成立ですね。」
「良いのかよ?」
「良いよ。しょうがない。真田、私丸井と行くから、あんた柳生と行って。」
「そうだな、逆よりはその方が良かろう。」

ボールを所持したとて、思うように動けないのではどの道こっちの思う様には行動できないだろう。
結局不自由な道しか選べないなら、紫希の下へ向かう方が幾らかマシだと千百合は思ったのだった。

それに、真田なら隙を見てボールを取れるかもしれない。

「それでは、決まった事ですし参りましょう真田君。」
「ああ。」

「ほら、こっちも行こ。」
「おう。」

こうして、4人は再び2人づつに分かれたのだった。