Solicitation:4th game 11 - 1/5



さて。
全員に聞こえていた紫希の悲鳴。

勿論紀伊梨にも聞こえていた。

「・・・・!・・・・!・・・、・・・、」

両手で口を塞いで、必死に声を上げないように頑張る紀伊梨。

でも耳の良い紀伊梨には分かる。
今のは紫希の声だ。
間違いなく。

(どどどどどどどーしよ、どーしよ!)

怖い。
超怖い。
ライトは幸村に持って行かれてしまったので、今本当に真っ暗なのだ。

ああ、でも早く行かないと。
早く助けに行かないと、紫希が・・・


「五十嵐?」


一筋の光が曲がり角の向こうから現れる。

柳である。

「何故此処に。入口に居たんじゃなかったのか?それにライトは・・・いや、それ以前になんだ、その口に当てた手は。」
「~~~~!~~~、~~~、」
「外して良いから、きちんと話せ。」

さっきから視界に入っている、スイッチだの壁の文章だのも気になるが、今敵も周りには居ないので柳は紀伊梨を優先した。
紀伊梨の手に手をかけて外す方向に促すと、ゆっくりゆっくり、紀伊梨の両手は顔から離れた。

「やなぎー、やなぎー、大変だよう紫希ぴょんが!」
「落ち着け。先ずはお前の事だ。どうやってここに来た?お前のライトは何処だ?」
「えーと、えーと、あのね・・・」

紀伊梨は順に話した。

幸村と出会った事。
ライトを譲る代わりに連れてきて貰った事。
此処で自分は残る選択をして、その結果ライト無しで此処に待機状態になった事。

「そいでゆっきーが、大声出しちゃいけないよって・・・」
「大声を?」
「そー!ゆっきーが教えてくれたの!此処にはゆーれーが居るんだよやなぎー!大声出しちゃう行儀の悪い子供を襲う、ガミガミママの霊が住んでるから、絶対絶対助けてとか叫んじゃいけないんだよ!」
「・・・そうきたか。」

柳は持ち前の頭の良さで全てを悟った。

このスイッチ。
柵に文章。

これを見て、幸村は引き返す必要があると考えた。

が、紀伊梨は何と自分について来ない事を選んだ。
此処で紀伊梨がスピーカーを発揮し、ゴールが此処だと一度叫べば、全員が此処に集まる。
もしかしたら、敵チームがボールを持った状態で。

それを防ぐ為に、幸村は作り話で紀伊梨の口封じをしていたのである。
紀伊梨を熟知している幸村だから出来る事と言えよう。

「やなぎー、紫希ぴょんのとこ行こうよー!紫希ぴょんがガミガミおばさんのゆーれーに酷い事されちゃうよー!」
「そんなものは居ない。」
「・・・へ?」
「作り話だ。お前にゴールの方向を放送させない為の布石だ。」
「どしてそんな事分かるの?」
「逆に聞くが、行儀の悪い子供を叱る母親が、何故ワインセラーに取り憑くと思うんだ?」

よしんば居たとして、そういう霊が居るのって子供部屋か、若しくはあるかないかも分からないけど、お仕置き部屋とか。
間違ってもワインセラーではあるまい。

「じゃー、大声出しても良いの?」
「少なくとも幽霊に襲われたりはしないな。」
「なんだーーー!もー、紀伊梨ちゃんすんごく頑張って我慢してたのにー!」

何度も助けてと人を呼びそうになって、でも呼んだらもっと怖いのがやってくると思ったから、超超頑張ってぐっと堪えていたのに、そんな事しなくて良かったなんて。
文句を言いつつも、紀伊梨は心底ホッとしていた。
この世に幽霊が居る事より怖い事など多分ない。

「・・・あ!でもでも、紫希ぴょんがきゃーって言ったのは本当だよね!?」
「ああ、その点に関しては事実だな。」
「おおう!紫希ぴょんだいじょぶかなー・・・」

取り敢えず、お化けが襲い掛かる事は無くなったぽいので、其処は安心だが。

「・・・俺は少し前春日を見たが、仁王と動いていた。何かあったとしても、助けて貰ってるのではないか?」
「あ、そーなの?良かったー!1人じゃないなら安心ですなっ!」
「・・・・・」

一緒に居るのが「あの」仁王という点を鑑みると、そんなに安心も出来ないような気もするが。
まあ多分大丈夫だろうし、今敵チームを助けに行く!と言い張られても困るから、まあ上手く誤魔化されてくれて素直に感謝しとこう。

「さて・・・問題はこれからどうするかだな。」

今、柳は手ぶらである。
そして、ボールを取りに行かねばならないわけだが。

(幸村が先に行動を始めていると言うのが痛い。今から同じ行動を取ったとして、恐らく追いつけまい。)

つまり、今から自分が引き返してボールを取りに行った所で、幸村に遅れを取るだろう。
なら。

「五十嵐、頼めるか?」
「んお?」