Solicitation:4th game 11 - 2/5


あ、やばい。
あかん。

仁王は内心そう思いはしたが、もうどうしようもない。

「何これ。」
「プリッ。」
「誤魔化してんじゃねえよ。」

千百合と丸井は、思っていたより早く現場に着いた。
角を2、3回曲がった先に、立っている仁王と。

後、へたり込んで顔を覆って泣いている紫希。

「おい、大丈夫かよ!?」
「紫希、どうしたの。」
「ああ、丸井君・・・千百合ちゃん・・・・!?」

両手を外して照らされた頬にはがっちり涙の跡がある。
潤んだ瞳が2人を見上げるが、千百合を見るや、紫希はハッと千百合に抱き着いた。

「千百合ちゃん!駄目です、仁王君に近づいちゃ駄目です、絶対駄目ですよ!」
「え、何?何が何?」

「おい、お前何したんだよ。」
「何っちゅう程の事でもないぜよ。」
「泣いてんだろい!」
「これで泣くとは思わんかったき。」

そう言って仁王はポケットからふいっと。

2匹の。
ムカデを。

「・・・・!」
「おもちゃじゃ。」
「いや動いてるじゃねえかよ!・・・いや、え?」
「ようく見んしゃい。ほれ、此処の所じゃ。」

言われた通り良く見ると、確かに。
かなり見づらいが、背中の部分に何か、ワイヤーの様なテグスのような物が。

「これで、此処を持ってこういう動きをするんじゃ。見てみんしゃい、まるで本物じゃろう?」
「おう。マジでキモいな。マジで。」

おもちゃとは思えない、本物そっくりすぎる動き。
又この、足の素材が憎らしい。なにこのぞろぞろした動き。本当に本物さながら。

「ちょっと、きゃあっと言ってくれるだけで良かったんじゃがのう。叫んではくれたが、泣くとは思わんかったダニ、ちょいと弱ったぜよ。」
「いや、泣いてもおかしくないだろい。」

不意と手の上にムカデ落とされて、しかもそれを本物と思い込んでいたのだったら、泣くほどの事ではないとはちょっと言えまい。まして女子なのに。

「千百合ちゃん、いけませんよあっちを見ては・・・」
「大丈夫、察した。」

何も見てないけど、動いてるとかキモいとか見てはいけないとか。
まあ想像はつく。

「うう・・・ごめんなさい仁王君、取り乱してしまいまして・・・」
「いや、お前が謝る場面じゃないだろい。」
「っていうか、お前が謝れよ。」
「すまん。」
「いえ、良いんです。作戦ですから・・・」
「作戦?」
「こうしたら、誰かは来てくれるんじゃないかと思ってのう。ライトが無い状態じゃ、動けんダニ。」
「・・・つまり、」
「事の次第は知らんが、兎も角お前さんが来てくれて助かった。礼を言うぜよ、丸井。」

やられたわけだ。
まんまと手口に嵌ってしまった。

「ちょっと、約束よ。どっか行かないで。」
「分かってるよ、行かねえって。」
「約束・・・?ですか?」
「そ、約束してきたの。真田と柳生と4人で行動してて、ボールが見つかったんだけど、紫希が叫んだから。」
「んで、ボールをこっちに譲る代わりに、ライト係1人くれって事で。」
「ほう。合流してから逃げない所まで確約させてきたか、お前さんなかなか隙が無いのう。」
「今日一日で嫌って程学んだわ。」

棗にも散々言われていた事だが、殊仁王と柳生を相手にして、「約束」「取り決め」「ルール」「交渉」、これらの細部をなあなあにする事がどれ程危険か。ああ疲れる、頭使う。

「ま、それならこっちとしては、結果的に万事解決じゃな。」
「万事?」
「ほれ。」

そう言って、仁王が手に取ったのは、ボール。
あの、さっき柳生に千百合が譲ったボールだ。

「マジ?お前らも見つけてたのかよ。」
「というか、見付けたからライトが欲しかったんじゃ。」
「やり方考えろや。」

仁王の事だから、考えた末にこれが一番という結論が出たのだろうとも思うが。
ただ、それを差し引いてもこれはどうか。

「あんたが叫べば良かったじゃん。」
「俺が叫んで誰が助けに来ててくれるんじゃ。」
「そりゃ男子よりは女子のが誰か来てくれるかもだけどさ。」
「女子のがっちゅうのもあるが、春日が叫ぶと丸井が来るじゃろ。」
「え、俺?」

急に名前を出されて、丸井は目を真ん丸にする。

「現に来たじゃろ。」
「まあ来たけどよ。」
「いや、今回のは完全に成り行きよ。一緒に居たのが桑原とかだったら、桑原が来たわよ。」
「・・・それはそれで何か引っかかんな。」
「あのね。あんたね。いい加減にしなさいよ。」

他意は無い他意は無いとお守り役の桑原は言ってるし、本人も無意識的な所があるのは分かるが、それを差し引いても物には限度ってものがあるんですよ、と千百合は声を大にして言いたい。
もういっそ他意有ると言ってくれた方が話が早いレベル。

「・・・あ、あの、何にせよ、お2人とも作戦とは言えありが・・・ええと違う、すみませんでした。呼び寄せてしまって。」
「おう。有難うで良いよ。」
「だからなんでそれをあんたが言うんだって言ってんの!敵でしょ、呼んじゃってごめんねが当然でしょ!」
「お前、何怒ってんだよいきなり?」
「~~~~~!」

千百合はせっかちではないけれど、基本的に話の遅いのは嫌いである。
ああ、イライラする。このイライラは新種のイライラだ。

「まあ、落ち着きんしゃい。こういう事は面白がってるくらいで丁度ええんじゃ。」
「紫希が絡んでないなら面白がるわよ。」

「???変な奴。」
「分からないですけど・・・千百合ちゃんは意味も無く怒ったりしませんから、何か虫の居所が悪くなってしまったんですよ。後で聞いておきます。」
「そお?」

などと、暫し談笑する4人の耳を突き抜ける声。






「ゴールはこっちだぞおおおおおお!」